術前術後の免疫療法薬は手術可能な肺がんの予後を改善

術前術後の免疫療法薬は手術可能な肺がんの予後を改善

MDアンダーソンがんセンター

周術期のニボルマブ(オプジーボ)と化学療法の併用は、化学療法単独と比較して、疾患の再発、進行、死亡の可能性を有意に低下させることが第3相試験で明らかになった

切除可能な早期非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、術前(ネオアジュバント)の化学療法単独と比較して、周術期(手術前および術後)の免疫療法薬を追加すると無イベント生存期間が有意に改善した。第3相CheckMate 77T試験の結果は、本日、2023年欧州腫瘍学会(ESMO)において、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによって発表された。

追跡期間中央値25.4カ月において、化学療法単独による無イベント生存期間中央値が18.4カ月であったのに対して、周術期にニボルマブ(販売名:オプジーボ)を投与された患者では中央値に達しておらず、対照群よりも無イベント生存期間が有意に延長したことになる。これらの結果は、周術期併用療法を受けた患者における病勢進行、再発、死亡のリスクの42%低下に相当する。

ニボルマブをベースとした周術期併用療法を受けた患者は、化学療法単独を受けた患者と比較して、病理学的完全奏効(手術時に腫瘍が残存していないこと)の割合も有意に高かった(25.3%対4.7%)。主要な病理学的奏効(手術時に残存する生存腫瘍細胞が10%以下)の割合も、周術期に免疫療法薬投与を受けた患者で高かった(35.4%対12.1%)。

「本試験は標準治療であるネオアジュバント療法を基礎とし、ニボルマブの周術期投与が肺がん再発リスク低下に有効なアプローチであることを支持するものです」と治験責任医師であるTina Cascone医師(胸部/頭頸部腫瘍内科准教授)は述べる。「今回の知見から、周術期の免疫療法薬投与は手術可能な肺がん患者にがんの再発なく長生きする可能性を提供するというエビデンスがさらに増えました」。

非小細胞肺がんと診断された患者のうち約30%は手術可能ながんであり、外科的手術によって腫瘍を摘出できる。これらの患者のうち、手術で治癒する可能性がある人も多くいる一方、半数以上はさらに治療を受けなければがんが再発する。手術前または手術後に化学療法を行ったとしても、わずかな生存利益しか得られない。

2019年に開始されたランダム化二重盲検CheckMate 77T試験には、世界中から18歳以上の非小細胞肺がん患者450人以上が参加した。参加者は、術前のニボルマブ投与と化学療法の後で手術を行い、術後にニボルマブを投与する群と、術前の化学療法とプラセボ投与の後で手術を行い、術後にプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。

本データから、周術期ニボルマブ投与レジメンに新たな安全性シグナルは認められず、各薬剤の既知の安全性プロファイルと一致している。グレード3-4の治療関連副作用は、周術期併用療法を受けた患者の32%、対照療法を受けた患者の25%に認められた。手術に関連した有害事象は両治療群とも12%に認められた。

これらの所見は、非小細胞肺がんにおける術前のニボルマブ+化学療法併用で認められた最近の成功に追加されるものである。2022年3月、第3相CheckMate 816試験に基づいて、ニボルマブとプラチナ製剤ベースの化学療法との併用がFDAに承認された。

Cascone医師は次のように話す。「本試験の初回結果に非常に満足しています。今後、術前免疫療法薬治療のみで治癒する可能性のある患者や、より強化された治療戦略で利益を得られる患者を特定できるように、患者や疾患の特徴を明らかにすることが重要になってきます」。

  • 監訳 吉松由貴(呼吸器内科/University of Greenwich, Queen Elizabeth Hospital)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2023/10/21

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