肺がんの術前ニボルマブ免疫療法+化学療法は長期生存を有意に改善
世界のがん死亡原因の第1位である手術可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、術前化学療法に免疫療法薬を追加することで、化学療法単独と比較して長期生存が全体的に改善するという画期的研究の結果が、6月2日付のNew England Journal of Medicine誌に公表された。がん患者をケアする医師および腫瘍専門家の世界的な専門組織である米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で発表された。
この研究は、術後に免疫療法薬を追加するのではなく、術前に化学療法と免疫療法薬を併用することが延命効果を有することを示した最初で唯一の第3相臨床試験である。本試験はジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターで実施され、ブルームバーグ・キンメルがん免疫療法研究所の臨床医と国際的パートナーが主導した。
「たった3回の免疫療法薬+化学療法が延命効果を有すると示されたことは、患者さんにとって大きな前進です」と、キメルがんセンターの胸部腫瘍学部長であり、ブルームバーグ・キンメルがん免疫療法研究所の上部気道・消化管プログラム共同責任者であるJulie Brahmer医師は語る。
CheckMate-816試験では、ステージ1Bから3Aの切除可能な非小細胞肺がん患者358人が、標準化学療法と抗PD-1免疫療法薬ニボルマブ(販売名:オプジーボ)を併用する群または標準化学療法のみの群に無作為に割り付けられ、3サイクルの投与を受けた後に手術を受けた。この試験の初期の結果は2022年にNew England Journal of Medicine誌に掲載され、その結果、手術可能な非小細胞肺がん患者に対する初の免疫療法薬と化学療法の併用療法が食品医薬品局(FDA)に承認され、現在では標準治療となっている。
キンメルがんセンター在籍中に研究を行ったトリニティ・カレッジ・ダブリンの主任研究者Patrick Forde氏(M.B.B.Ch.)がASCO総会で発表したデータの最終解析は、術後5年間追跡した患者のデータを用いて試験結果をさらに詳しく述べたものである。
免疫療法薬+化学療法群では、24%の患者が完全寛解を達成した。これは、切除された肺やリンパ節に残存腫瘍が検出されなかったことを意味する。手術時にがんが完全に消失した患者の5年生存率は95%であった。
本研究は、Bristol Myers Squibb社と小野薬品工業から助成を受けた。
ASCOでの口頭発表の抄録タイトルは、「CheckMate 816試験で切除可能なNSCLC患者において、術前ニボルマブ(NIVO)+化学療法(chemo)を施行したときの全生存期間[Overall survival with neoadjuvant nivolumab (NIVO) + chemotherapy (chemo) in patients with resectable NSCLC in CheckMate 816] 」である。
- 監修 田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 呼吸器内科学分野)
- 記事担当者 坂下美保子
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- 原文掲載日 2025/06/03
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