血液検査で免疫療法薬の効果を早期予測
ジョンズホプキンス大学による前向き「バイオバンキング・プログラム」が、早期の治療方針決定の指針となり得る実用的な液体生検アプローチの有用性を確認
循環腫瘍DNA(ctDNA)を検出する血液検査である「液体生検」により、進行非小細胞肺がん患者が免疫療法薬から利益を得ているかどうかを数週間以内に予測できることが、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターと同センター傘下のブルームバーグ・キンメルがん免疫療法研究所の研究者らにより明らかにされた。この発見により、早期の治療方針決定が可能となり、医師は、標準的な画像診断で現在可能であるよりも数カ月早く、患者に効果が期待できない治療法を変更できるようになる可能性がある。
この研究では、抗PD-(L)1免疫療法薬の開始後、あらかじめ定められた3~9週間の期間内に1回の採血を行うことで、ctDNAの存在を正確に検出でき、無増悪生存期間および全生存期間の強力な予測因子となることが明らかになった。さらに、免疫療法薬開始3~9週間後の1回の採血は、治療に対する反応の予測において繰り返し採血と同程度に正確であり、日常的ながんケアにおいて実用的なアプローチとなることが示された。
この研究結果は、7月23日付のClinical Cancer Research誌で報告された。
この研究では、ジョンズホプキンス免疫生物学血液・組織収集プロトコル(NCT05995821)を通じて登録された進行非小細胞肺がん患者109人が対象となった。研究者らは、治療期間中に採取した328の血漿検体と、治療開始前に採取した対応する白血球検体を併せて分析した。ランドマークの3~9週間の間に循環腫瘍DNA(ctDNA)が検出不能となった患者は、中央値で26.6カ月間病勢進行が見られなかったのに対し、ctDNAが検出可能なままだった患者では3.4カ月間であった。また、生存期間も大幅に長く、全生存期間の中央値は46.9カ月に対し、11.4カ月であった。
「われわれの研究結果は、ランドマーク時点におけるctDNA分子応答が免疫療法薬の有用性の早期予測因子であることを確立し、実用的で腫瘍組織情報を利用しない、1時点の液体生検アプローチにより、従来の画像診断よりも数週間早く臨床的に意味のある情報を提供できることを示しています。これは、日常的な患者ケアや今後の臨床試験において、この戦略をさらに評価する根拠となります」と、統括著者のValsamo “Elsa” Anagnostou医学博士(上気道・消化管悪性腫瘍およびがん遺伝学・エピジェネティクスプログラム、ならびに肺がん精密医療センター・オブ・エクセレンスの共同責任者)は述べている。
「腫瘍組織情報を利用としない、1時点での検査形式であることは、実臨床での導入において重要です」とAnagnostou氏は説明する。「これにより、腫瘍組織の採取が不要となり、コストと運用上の負担が軽減されるため、専門施設だけでなく、日常的な腫瘍診療の現場でもこの検査が実施しやすくなります」。
化学療法とは異なり、免疫療法薬では初期の画像検査結果が分かりにくい場合がある。腫瘍は縮小する前に大きく見えることがあり、偽増悪と呼ばれる。また、患者によっては病変ごとに縮小・増大などが混在する反応がみられるため、治療方針の決定が困難になる場合がある。研究者らは、血液検体を用いた早期の分子評価が、時に曖昧な画像所見をより深く理解し、治療が効いているかどうかを判断するための追加のツールを医師に提供できると述べる。これにより、患者は効果がなく、毒性を伴い、費用のかかる治療を何カ月も受けることを回避でき、腫瘍専門医は迅速に別の治療法へ切り替えられるようになる可能性がある。また、現在の治療法が有効であることを早期に臨床医や患者に提供することで安心にもつながる。
「免疫療法薬による治療の最大の課題の1つは、治療が効いているかどうかを画像検査で明確に確認できるまでに数カ月かかる場合があることです」とAnagnostou氏は述べる。「われわれの研究は、治療開始の非常に早い段階に1回採血を行うだけで、免疫療法薬から利益を得ている患者を特定できることを示しています。そして同様に重要なのは、異なる治療戦略を必要とする可能性のある患者も特定できるという点です」。
この研究で、研究者らは、腫瘍組織情報を利用しないアプローチを用いることで、液体生検検査の大きな課題を克服した。その代わりに、患者の白血球由来のDNAを同時に解析し、真の腫瘍DNAと、血液細胞に蓄積する加齢に伴う遺伝的変化(クローン性造血として知られる)とを区別した。このアプローチは、転移性疾患の場合は実施が困難なことが多い腫瘍組織分析に依存する手法と同等の予後情報を提供すると同時に、液体生検を日常的な臨床現場で使用するより実用的な検査にする。
「血球由来の変異を除外しなかった場合、検査の予後予測価値は失われてしまいました」と、Anagnostou研究室の研究員であり、本研究の筆頭著者であるNoushin Niknafs博士は述べる。「対応する白血球のシーケンシングを取り入れることで、治療に対する反応を真に反映する腫瘍由来のDNAを正確に特定することができました」。
本研究はジョンズホプキンス免疫生物学血液・組織収集プロトコルに基づいて行われた。これは、胸部がん患者を登録し、治療期間を通して標準化された時点で血液検体、組織標本および臨床データを収集することを目的として特別に設計された前向き臨床バイオバンキングプログラムである。
過去に収集・保存された検体を分析する後ろ向き研究とは異なり、本研究は当初から液体生検アプローチを評価することを目的として設計された。患者を前向きに登録し、治療期間を通して標準化されたスケジュールに従って血液検体を採取し、対応する正常DNAおよび臨床データも統一された手順で収集した。これらの対策により、研究結果の再現性が確保され、将来の臨床応用に向けて独立して検証することが可能となった。
「このバイオマーカーの検証が実現したのは、適切な臨床研究インフラの構築に何年も費やしてきたからこそです。ジョンズホプキンス大学胸部腫瘍学臨床バイオバンキングプログラムの臨床研究コーディネーターやスタッフの尽力こそが、本研究を可能にした基盤を築きました。彼らは患者の登録、スケジュールに沿った採血の調整、対応する生体試料の確保、臨床情報の収集、そして一貫した検体処理の徹底を行いました。この取り組みに必要な計画と調整は並外れたものでした」と、生体試料の調達活動を主導した上級ラボマネージャーのGavin Pereira氏は述べ、さらに「このような前向き臨床バイオバンキングプログラムは、有望な液体生検技術を研究の段階から日常的な患者ケアへと移行させるために不可欠です」と付け加えた。
「われわれの臨床研究プログラムは、最先端の研究と臨床現場を結びつけることで、患者ケアの向上に貢献することを目的としています」と、上級臨床コーディネーターのIiasha Beadles氏は述べる。同氏は、スケジュールを厳守した複数年にわたる前向きな患者登録と、治療中の連続的なフォローアップを通じて、運営の中核を担ってきた。「このような研究は、実験室だけで行われるものではありません。病床のそばで、診察のたびに、適切なタイミングで適切な検体が採取されるよう確認しながら進められ、患者さんと私たちとの間の信頼の上に成り立っているのです」。
研究者らは、ランドマーク時点におけるctDNA分子応答が、免疫療法薬に対する反応を示す早期の代替エンドポイントとしても機能し、将来の免疫療法薬の開発と評価を加速させる可能性があると指摘している。臨床試験では、実験的治療が生存を延長させるかどうかを研究者が把握するまでに、数年間の追跡調査が必要となることが多い。わずか数週間で測定可能な分子レベルの結果があれば、臨床試験を継続するか中止するか判断をより迅速に行い、より適応性の高い臨床試験デザインを支援し、新しい治療法の評価に必要な時間を短縮することが可能になるだろう。
本研究に参加した他の研究者、研究に対する支援、研究者らの開示情報については原文を参照のこと。
- 記事担当 坂下美保子
- 監修 稲尾 崇(呼吸器内科/神鋼記念病院)
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- 原文掲載日 2026/08/03
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