副作用で免疫療法薬中止後も、一部の患者で病勢コントロール持続の可能性
免疫関連有害事象(irAE)のため免疫チェックポイント阻害薬(ICI)療法を中止した非小細胞肺がん(NSCLC)患者の一部は長期にわたる病勢コントロールを継続していたとの研究結果が米国がん学会(AACR)機関誌Clinical Cancer Research誌に掲載された。
免疫チェックポイント阻害薬は、非小細胞肺がん(NSCLC)の治療展望に革命をもたらし、早期及び進行期のいずれにおいても、生存期間を大幅に改善した。しかし、免疫系を刺激することで、肺臓炎、大腸炎、肝炎などの免疫関連有害事象(irAE)を引き起こし、治療の永続的中止につながることもある。
「免疫療法薬が免疫系を活性化する際、その目的はがん細胞を選択的に標的とすることです。しかし、この活性化は他の臓器に炎症を引き起こす可能性もあります」と、本研究の筆頭著者であり、スローンケタリング記念がんセンター胸部腫瘍科部長のMark Awad医学博士は言う。「こうした副作用がみられるたびに、免疫療法を継続すべきか、それとも一時的あるいは永久的に治療を中止する必要があるのか、私たちは考えます」。
Awad博士によると、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤療法を受けた患者の3~12%、および2種のICI併用療法を受けた患者の最大25%が、免疫関連有害事象(irAE)のために治療を中止せざるを得なくなる可能性があるという。これらの患者の多くは、治療を中止した場合、がんが進行したり再発したりするのではないかと心配になる。
Awad博士らは、ICIを中止した非小細胞肺がん(NSCLC)患者の転帰の特徴をつかもうとした。ICI単剤療法または他の治療法との併用療法を受けた患者2,794人からなる多施設コホート研究において、約10%がirAEのために治療を中止した。これらの患者における投与中止後の無増悪生存期間(PFS)の中央値は12.7カ月、全生存期間(OS)の中央値は43.7カ月であった。
「これらの結果は、毒性のため、あるいは副作用が生活の質に影響を及ぼすとして治療を中止した後でも、患者の病勢コントロールと生存が持続する可能性を示唆している」と、ダナファーバーがんセンターの研究員であり、本研究の筆頭著者であるFederica Pecci医師は述べた。
次に、研究者らは、治療中止後の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の延長に関連する臨床的および病理学的特徴を評価した。治療中止までの治療期間が3カ月未満、3カ月から6カ月、6カ月超えの患者では、治療中止後のPFSの中央値はそれぞれ6.2カ月、13.9カ月、25.8カ月であった。また、治療中止後のOSの中央値はそれぞれ21.7カ月、42.7カ月、86.9カ月であった。
多変量解析において、治療中止後のPFS延長の予測因子として、PD-L1高発現、治療に対する完全奏効または部分奏効(CR/PR)、治療中止前の治療期間が3~6カ月または6カ月超えであることなどが挙げられた。さらに、治療中止後のOS延長に関連する因子として、非扁平上皮がんであること、治療効果がCR/PRであること、および6カ月を超える治療期間が挙げられた。
免疫関連有害事象の治療としてのステロイドや他の免疫抑制剤の使用は、免疫チェックポイント阻害薬療法中止後のPFSまたはOSにおける差との関連はみられず、こうした治療によって抗がん反応が損なわれない可能性があることが示唆された。
「毒性のために治療を中止した後、なんの治療を追加することなく治療効果が長続きする患者を医師が見極められるような臨床的および病理学的特徴を特定しました」とPecci医師は述べた。「本研究は、免疫関連有害事象による治療中止に関する複雑な検討において、臨床医を支援する貴重な資料となるでしょう」。
重度の免疫関連有害事象(irAE)の場合、治療中止は明らかに必要であるが、グレード2のirAEの管理は、臨床医にとってより複雑な課題となることがしばしばである。今回の知見は、中止までの治療期間、治療への反応、その他の臨床病理学的特徴などの因子を考慮しつつ、医師が患者に対し、より明確かつ各患者に応じた疾患進行リスク評価を提供するのに役立つ可能性があると、Pecci医師は述べる。
本研究の限界として挙げられるのは、後方視的デザインであることから、データ注釈の欠落や、不正確性が障害となる可能性がある点である。さらに、中止までの治療期間に基づく比較は、長期治療群に長期奏効例が過剰に含まれることで交絡が生じる可能性があることも挙げられる。この問題を軽減するため、ランドマーク解析と多変量Cox回帰モデルを用いることで、潜在的なバイアスを低減し、結果の信頼性を高めた。
研究資金提供元の詳細については、原文を参照のこと。
- 監修 田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 呼吸器内科学分野)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2025/04/18
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