【ASCO2024年次総会】進行肺がんの早期緩和治療で遠隔医療と対面ケアの有効性は同等

ASCOの見解(引用)

「進行非小細胞肺がん患者において、早期の緩和ケアは生存期間を含む患者の転帰を改善することが研究で示されています。この大規模ランダム化試験で、遠隔医療による緩和ケアは実行可能であり、対面ケアに匹敵する転帰をもたらすことが示されました。この知見は、患者の転帰を改善するために、緩和ケアへのアクセスを改善し、より広く普及させる大きな可能性を強調するものです」-Charu Aggarwal医師、公衆衛生学修士、ペンシルバニア大学がん医療イノベーションセンター肺がんエクセレンスLeslye M. Heisler准教授兼精密腫瘍学イノベーションディレクター

研究要旨

テーマ進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者とその介護者に対する遠隔医療による緩和ケアの有効性
対象者患者1,250人
主な結果遠隔医療は、進行した非小細胞肺がん患者に早期の緩和ケアを提供し、生活の質(QOL)とアクセス性を維持する上で、対面診療と同程度に有効である。
意義現行の標準治療では、進行がん患者の転帰を改善するために早期から緩和ケアとがん治療が統合されている。国が推奨しているにもかかわらず、早期緩和ケアは臨床医不足と地理的および資源的なアクセスの悪さのために十分に活用されていない。
これらの知見は将来の医療政策に影響を与え、緩和ケアの基準に遠隔医療をより広く統合することで、広範な物的医療資源の必要性を減らし、より幅広い層がケアにアクセスしやすくなる可能性がある。

新たな研究により、進行した肺がん患者にとって、遠隔医療による緩和ケアは、対面診療に代わる有効な選択肢であり、生活の質(QOL)においても同等の利益が得られることが裏付けられた。この研究は、5月31日から6月4日までイリノイ州シカゴで開催される2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。

研究について

「遠隔医療は、ケアの質を維持しながら患者、臨床医および医療資源の負担を大幅に軽減する可能性があります。この研究結果は、医療システムと政策立案者が、遠隔医療をエビデンスに基づく緩和ケアの基準にもっと広く取り入れる必要性を強調するものです」と、筆頭著者であるマサチューセッツ総合病院がんアウトカム研究・教育プログラム共同ディレクターのJoseph Greer博士は述べた。

このランダム化効果比較試験は、最近進行NSCLCと診断された1,250人を対象とした。患者は4週間ごとに緩和ケアセッションを受け、セッションは遠隔医療群に無作為に割り付けられた患者にはビデオ訪問で、従来ケア群に無作為に割り付けられた患者には対面で行われた。これらのセッションでは、身体的および心理的症状、対処、病気の理解、ケアの希望や治療方針の決定などについて話し合われた。患者の平均年齢は65.5歳で、54.0%が女性を自認し、66.7%が既婚またはパートナーがいた。人種および民族構成は、アフリカ系アメリカ人または黒人が10.4%、アジア系が5.2%、白人が82.7%、ヒスパニックまたはラテン系が4.8%であった。 

主な知見

  • 24週目に、患者のQOLスコアは遠隔医療群と対面群の間で統計学的に同等であった(0~136のスケールで99.67 vs 97.67)。
  • 遠隔医療群の介護者の参加率は、対面群に比べて有意に低かった(36.6% vs 49.7%)。
  • 2つの試験群では、患者が報告した抑うつ、不安、対処能力に有意差を認めなかった。

次のステップ

今後の研究では、特定の患者グループが遠隔医療と対面医療のどちらからより多くの利益を得るかを評価し、年齢やテクノロジーの習熟度に基づく評価も含める。また、緩和ケアの手順をさらに洗練し最適化するために、特にケアの希望に関する患者と医師の対話において、両方のケア提供方法がエンドオブライフ・ケアの質に及ぼす影響を検討する。

本研究は、Patient-Centered Outcomes Research Institute(PCORI)より、Phased Large Awards for Comparative Effectiveness Research(PLACER)の助成を受けた(助成金/受賞番号:PLC-1609-35995)。

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  • 監訳 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
  • 翻訳担当者 坂下美保子
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  • 原文掲載日 2024/06/02

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