FDAが大細胞型B細胞リンパ腫の二次治療にリソカブタゲン マラルユーセルを承認

2022624日、米国食品医薬品局(FDA)は、lisocabtagene maraleucel[リソカブタゲンマラルユーセル](販売名:Breyanzi[ブレヤンジ]、 Juno Therapeutics )を、一次化学免疫療法に不応であるかもしくは一次化学免疫療法後12カ月以内に再発した大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の成人患者、または一次化学免疫療法に不応であるかもしくは一次化学免疫療法後に再発し、合併症や年齢により造血幹細胞移植(HSCT)に適さない患者に適用することを承認した。原発性中枢神経系リンパ腫の治療には適応されない。

有効性は、一次治療で完全奏効(CR)を得てから12カ月以内に再発した原発性難治性大細胞型B細胞リンパ腫の成人患者を対象とした多施設共同ランダム化非盲検試験(TRANSFORM試験、NCT035751で評価された。患者は、再発・難治性リンパ腫の治療をまだ受けていない自家造血幹細胞移植の候補者であった。合計184人の患者を、フルダラビンおよびシクロホスファミドのリンパ球球除去化学療法後にリソカブタゲンマラルユーセルの単回注入を受ける群と、化学免疫療法を3サイクル行った後に高用量療法を行い完全奏効または部分奏効(PR)に達した患者に対し自家造血幹細胞移植を行うという標準二次治療を受ける群に1対1の比率で無作為に割り付けた。

主要評価項目は、独立審査委員会(IRC)により決定された無イベント生存期間(EFS)であった。無イベント生存期間はリソカブタゲンマラルユーセル群で有意に長く、ハザード比(HR)は0.3495% CI:0.22, 0.52p<0.0001)であった。推定1年無イベント生存期間は、リソカブタゲンマラルユーセル群で45%(95CI2959)、標準療法群で24%(95CI14, 35)であった。推定無イベント生存期間中央値はそれぞれ10.1カ月(95CI6.1, 評価不能)および2.3カ月(95CI2.2, 4.3)であった。標準療法を受けるよう無作為化された患者のうち、47%が予定通り自家造血幹細胞移植を受けており、造血幹細胞移植を受けない最も一般的な理由は化学療法が無効であることであった。独立審査委員会が評価した無増悪生存期間もリソカブタゲンマラルユーセル群で有意に長く、HR0.4195% CI: 0.25, 0.66; p0.0001)であった。

また、化学免疫療法1ライン終了後の再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫で移植不適格患者を対象とした多施設共同単一群非盲検試験(PILOT試験、NCT03483103)でも有効性が評価された。本試験では、臓器機能や年齢により高用量療法や造血幹細胞移植には不適格であるが、CAR-T細胞療法には十分な臓器機能を有する患者が登録された。有効性は、独立審査委員会が決定した完全奏効率と奏効期間(DOR)をもとに評価した。白血球分離を受けた74人の患者(年齢中央値73歳)のうち、61人(82%)がリソカブタゲンマラルユーセルの投与を受け、そのうち54%(95CI41, 67)が完全奏効を達成した。奏効期間中央値は、完全奏効を達成した患者では未到達(95% CI: 11.2 カ月, 未到達)、部分奏効の最良反応を示した患者では 2.1カ月(95% CI: 1.4, 2.3 )であった。全白血球除去をした患者の完全奏効率は46%(95CI34, 58)であった。

FDAは、致死的または生命を脅かすサイトカイン放出症候群(CRS)および神経毒性のリスクがあるため、リスク評価および軽減戦略とともにリソカブタゲンマラルユーセルを承認した。大細胞型B細胞リンパ腫に対する二次治療としてのリソカブタゲンマラルユーセルの試験では、サイトカイン放出症候群が45%の患者(グレード3以上、1.3%)に発生し、神経毒は27%(グレード37%)に発生した。さらに、重篤な副作用は33%から38%の患者に発生した。

二次治療で推奨されるリソカブタゲンマラルユーセルの投与量は、CD4CD8成分の比率が11CAR陽性T細胞90から110×106個である。

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日本語訳監修 :北尾 章人(血液腫瘍/神戸大学大学院)

翻訳担当者 白鳥 理枝

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