低悪性度濾胞性リンパ腫に対するCAR‐T細胞療法、承認後初めてダナファーバーが提供を開始

  • axi-celが進行の遅いリンパ腫患者に長期的な寛解をもたらすことが示された。

米国食品医薬品局(FDA)が低悪性度濾胞性リンパ腫(進行の遅い非ホジキンリンパ腫)に初のCAR-T細胞療法を承認したことは、再発または難治性の患者にとって重要な前進である。そして、ダナファーバーのブリガム&ウィメンズがんセンター(DF/BWCC)が、本治療法の認定治療センターとなる。

本治療法、アキシカブタゲン  シロルユーセル(販売名:axi-celまたはイエスカルタ)は、他の治療後に再発したか、他の治療に抵抗性を持つ濾胞性リンパ腫患者の標準治療として承認された。濾胞性リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫の中で2番目に多いタイプで、身体のリンパ節にB細胞の塊ができることが特徴である。

axi-celの承認は、ダナファーバーの研究者が主導した第2相試験であるZUMA-5試験の結果に基づいている。本試験では、濾胞性リンパ腫患者124人と辺縁帯リンパ腫患者22人の計146人が登録された。参加者全員が、過去に複数の治療を受けたにもかかわらず、活動性のリンパ腫であった。

試験に参加した濾胞性リンパ腫患者の91%が客観的奏効(がんの検出可能な縮小)を示し、そのうち74%の患者が18カ月後に寛解を継続していた。

本試験では、ほぼすべての患者に副作用が認められたが、全体的な毒性は、侵攻性大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象としたaxi-celの試験で認められたものよりも低かった。

axi-celは、患者の病気と闘うT細胞の一部を採取し、その表面に特殊な受容体を発現するように遺伝子を改変することで作られる。この受容体により、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞と呼ばれる改変T細胞は、がん細胞に結合してそれらを破壊することができる。このCAR-T細胞を患者に輸注する。axi-celを含むいくつかのCAR‐T細胞療法は、侵攻性リンパ腫の治療法としてFDAの承認を得ているが、低悪性度リンパ腫の治療法として承認されたのはaxi-celが初である。

「低悪性度非ホジキンリンパ腫に対する治療法はいくつかありますが、寛解期間が短く、患者は何度も再発する傾向があります」と、ZUMA-5試験を主導したダナファーバーのCaron Jacobson医師は述べた。「axi-celは、寛解期間を延長させるので、患者さんにとって特に素晴らしい治療法と言えます。そして、私たちはこの寛解が永遠に続くことを期待しています」。

DF/BWCCでは、FDAに承認されたすべてのCAR‐T細胞療法を提供している。その中には、axi-cel、チサゲンレクルユーセル(販売名:キムリア)および侵攻性の再発/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔型B細胞リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫を対象とするリソカブタゲン  マラルユーセル(販売名:ブレヤンジ)、再発/難治性のマントル細胞リンパ腫を対象とするbrexucabtagene autoleucel(販売名:Tecartus[テカルタス])が含まれている。DF/BWCCでは、他のリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病などの血液腫瘍を対象とするCAR‐T細胞療法の臨床試験が進行中で、治療の早期化、他の免疫療法との併用などの試験が行われている。

翻訳担当者 会津麻美

監修 吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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