OncoLog 2015年2月号◆In Brief「Sleeping Beauty(眠れる森の美女)遺伝子治療がB細胞性腫瘍に有望」

2015年2月号(Volume 60 / Number 2)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

In Brief「Sleeping Beauty(眠れる森の美女)遺伝子治療がB細胞性腫瘍に有望」

キメラ抗原受容体(CAR)を用いて遺伝的に改変したT細胞を使用し、CD19を標的にする治療法が、特に幹細胞移植後の補助療法として進行性血液悪性腫瘍に有望であることが、4件の臨床試験の予備的な結果から明らかになった。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターで進行中の4件の臨床試験では、新規のSleeping Beauty遺伝子導入システムによって改変されたT細胞がB細胞性悪性腫瘍患者に投与される。このSleeping Beautyシステムでは、B細胞に特異的なタンパク質であるCD19を認識して結合するCARをT細胞上に構築する。このようなCARによって、T細胞はCD19を発現するがん細胞を能動的に標的し、死滅させることができるようになる。

CAR T細胞臨床試験のうち、2件の試験責任医師であるPartow Kebriaei幹細胞移植・細胞療法科准教授は、「われわれは、CAR T細胞を従来の血液幹細胞移植と併用し、進行性CD19陽性血液悪性腫瘍の患者を治療しています。このほか、活動性疾患があるものの、血液幹細胞移植を受けたことのない患者も治療しています」と話す。

臨床試験では、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)または非ホジキンリンパ腫(NHL)の患者が、造血幹細胞移植後、あるいは積極的治療の施行中に、患者由来またはドナー由来のCAR T細胞の投与を受ける。

Kebriaei医師らは、自家幹細胞移植後に患者由来のCAR T細胞を投与されたNHL患者5人のうち4人が、T細胞輸注後中央値12カ月の時点で完全寛解を維持していたことを報告した。同種幹細胞移植後にドナー由来のCAR T細胞を投与されたALL患者10人およびNHL患者3人のうち6人が、T細胞輸注後中央値7.5カ月の時点で完全寛解を維持していた。さらに、ドナーまたは患者由来のCAR T細胞による治療を受けたALLの8人、CLLの4人およびNHLの2人の活動性疾患患者では、T細胞輸注後中央値6カ月の時点で、5人に疾患の退縮が認められた。CAR T細胞治療による毒性作用は観察されなかった。

Kebriaei医師らは、2014年12月にサンフランシスコで開催された第56回米国血液学会年次総会で、試験の予備的な結果を発表した。

— Markeda Wade

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

翻訳担当者 中村幸子

監修 下村昭彦(腫瘍内科、乳癌、早期開発/国立がん研究センター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

リンパ腫に関連する記事

FDAが造血器腫瘍における好中球回復期間の短縮と感染症の低減にomidubicelを承認の画像

FDAが造血器腫瘍における好中球回復期間の短縮と感染症の低減にomidubicelを承認

米国食品医薬品局(FDA)2023年4月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、骨髄破壊的前処置後に臍帯血移植が予定されている造血器腫瘍の成人および小児患者(12歳以上)に対して、好中球...
インターフェロンα-2bでリンパ腫様肉芽腫症の生存期間が大幅に延長の画像

インターフェロンα-2bでリンパ腫様肉芽腫症の生存期間が大幅に延長

NCI(米国国立がん研究所)ニュースリリース米国国立衛生研究所(NIH)が実施した臨床試験の結果から、悪性度が低いリンパ腫様肉芽腫症患者が免疫療法の一種であるインターフェロンα-2bに...
遠隔食事介入がリンパ腫サバイバーの慢性疲労を軽減する可能性の画像

遠隔食事介入がリンパ腫サバイバーの慢性疲労を軽減する可能性

オハイオ州立大学総合がんセンター

がん関連の慢性疲労を軽減する戦略として、意図的な食事の改善が検討されている。この知見は、オハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームズがん病...
FDAが再発/難治性濾胞性リンパ腫にmosunetuzumabを迅速承認の画像

FDAが再発/難治性濾胞性リンパ腫にmosunetuzumabを迅速承認

2022年12月22日、米国食品医薬品局(FDA)は、CD20とCD3への二重特異性をもつT細胞エンゲージャーであるmosunetuzumab-axgb[モスネツズマブ](販売名:Lunsum...