癌手術後1カ月以内の死亡は社会的および人口統計学的要因の影響を受けている

*この要約には抄録にはない最新データが記載されています

最もよくみられる癌または死亡率の高い癌の手術を受けた全国110万人以上の患者を対象とした新たな研究では、およそ20人に1人(4.8%)が術後1カ月以内に死亡した。死亡リスクは、独身、無保険、非白人、男性、高齢、低学歴、低所得、またはステージの高い癌を有する患者で最も高かった。本研究結果から、術後1カ月以内の死亡率の社会人口学的差異を縮小するための努力が、癌患者の生存率を大幅に改善する可能性が示唆された。

術後1カ月以内の死亡率は医療の質を測る重要な評価基準であるが、なぜこのような転帰の差異が存在するのかについての一致した見解はない。これまでの研究では、術後1カ月以内の死亡率は病院と外科医の手術症例数が密接に関係し、少数民族、無保険、および低所得の患者は、手術症例数が少ない、採算性の悪い病院で治療を受ける傾向が過度に高いことが示されている。

ハーバード医学部4年生で現在はボストンのダナファーバー癌研究所主任研究員である主著者のBrandon A. Mahal氏は次のように述べた。「手術にはさまざまなリスクを伴うことがわかっている。われわれの研究結果は、特定の社会的および人口統計学的要因が癌手術の転帰に実際どれほど影響を与えるかについて新たな指針を示している。この研究結果を考慮すると、あらゆる患者の転帰を改善するためにわれわれにできることはたくさんあることが明らかである。多くの要因がこのような差異に影響しているが、転帰不良のリスクを有する患者により積極的に社会的支援を提供することはもちろん、採算性の悪い病院に対して改善点を特定し改善を支援することから始めることができる」。

研究者らは、癌手術を受けた110万人以上の米国の患者の癌登録(SEER)のデータを解析した。患者は、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、甲状腺癌、食道癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、頭頸部癌、肝臓癌、膀胱癌、黒色腫(メラノーマ)、腎臓癌、非ホジキンリンパ腫を含む最もよくみられる癌または最も死亡率の高い癌の一つと診断された。

全体で53,498人(4.8%)が癌手術後1カ月以内に死亡し、これは主に大学病院に焦点を絞ったこれまでの小規模な研究で示唆されたよりも高い死亡率であった。癌手術後1カ月以内の死亡率は、既婚の患者で20%、被保険者の患者で12%、収入が上位50%の患者で5%、学歴が上位50%の患者で2%低かった。さらに、非白人の少数民族の患者で13%、男性患者で11%、高齢患者で2%、ステージIVの患者で89%高かった。この結果は、メディケア患者の術後の転帰に関するこれまでの研究結果と一致しているが、このような差異が若年層にも非常に多くみられることを示したのは本研究が初めてである(本研究で評価した38.9%の患者が65歳未満であり、メディケア受給資格がなかった)。

翻訳担当者 上田 梨佳

監修 石井一夫(ゲノム科学/東京農工大学)

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