axi-celが早期再発/難治性大細胞型B細胞リンパ腫の生存期間を有意に改善-ASCO2023

MDアンダーソンがんセンター(MDA)

第3相ZUMA-7試験で、CAR-T細胞療法は標準治療と比較して死亡リスクを27.4%低下させることが判明

早期再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫患者に対してキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるアキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)を投与した場合、現在の標準治療である化学免疫療法と比較して全生存期間が有意に改善したことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らにより報告された第3相ZUMA-7試験の結果より明らかになった。

本試験のデータは、6月5日、米国臨床腫瘍学会年次総会2023(ASCO2023)において、リンパ腫・骨髄腫科臨床研究部長のJason Westin医師により発表され、同時にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

追跡期間中央値47.2カ月の時点で、axi-celは標準治療と比較して、全生存期間(OS)の統計学的に有意な改善を示した。全生存期間中央値はaxi-celでは未到達であり、本解析時点で半数以上の患者が生存していることを意味する。それに対し、対照群の全生存期間中央値は31.1カ月であった。推定4年生存率はaxi-cel群で54.6%、標準治療群で46%であり、細胞治療により死亡リスクが27.4%減少した。

「本試験は、高悪性度のリンパ腫患者に対する治癒を目指した二次治療で全生存期間を改善した約30年ぶりのランダム化第3相試験である。旧来の標準治療である大量化学療法と幹細胞移植は、一部の患者を治癒させたが、すべての患者で副作用が発生していた」と、Westin医師は述べた。「axi-celを投与された患者のQOLは化学療法を受けた患者よりも早く改善し、このような結果はaxi-celを本疾患の患者の二次治療として支持するものである」

B細胞リンパ腫は、B細胞から発生する非ホジキンリンパ腫の一種である。米国がん協会によると、B細胞リンパ腫は米国における全リンパ腫の約85%を占めており、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が最も一般的で、全米で毎年3万人近くが新たに診断されている。axi-celは、特定のB細胞リンパ腫患者の治療薬として2017年に米国食品医薬品局(FDA)により承認されており、現在進行中の試験では、現在の標準的なアプローチと比較したaxi-celによる治療の利点が評価され続けている。

国際共同ZUMA-7試験には、一次治療終了後1年以内の難治性または再発患者359人が組み入れられた。患者は、自家抗CD19のCAR-T細胞療法であるaxi-celを受ける群と、化学免疫療法を2~3サイクル行った後、高用量化学療法を行い、奏効例には自家幹細胞移植を行う標準治療群にランダムに割り付けられた。

axi-celを投与された患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は14.7カ月であったのに対し、標準治療では3.7カ月であった。推定4年PFS率はaxi-cel群で41.8%で、標準治療群で24.4%であった。OSとPFSにおけるaxi-celの有効性は、すべての主要な患者サブグループで一貫していた。

axi-celの安全性は管理可能であり、過去の試験と一致していた。axi-celによる治療を受けた患者において、グレード3のサイトカイン放出症候群が6%、グレード3以上の神経学的イベントが21%に発生したことが、無イベント生存期間解析で報告された。未知のサイトカイン放出症候群イベントは報告されなかった。

「この画期的な臨床試験では、標準治療と比較して、axi-celを使用した方がより多くの患者が長く生存した。これは、すべてのがん種を含めても、CAR-T細胞療法が従来の化学療法と比較して生存期間を改善した初めての試験である。これは信じられないような画期的なことであるが、リスクの高いB細胞リンパ腫患者の治療において、CAR-T細胞療法が他にどのような点で優れているのかを証明できるよう、われわれは引き続き研究していく」と、Westin医師は述べた。「われわれは現在、初回治療としてのaxi-celを化学療法と比較して評価するため、ZUMA-23試験に患者を登録している」

本試験はギリアド社のKite Pharma社から資金提供を受けた。Westin医師はKite Pharma社から研究支援を受け、諮問委員会およびコンサルタントを務めた。共同著者の全リストとその開示情報はこちらを参照。

  • 監訳 北尾章人(腫瘍・血液内科/兵庫県立はりま姫路総合医療センター)
  • 翻訳担当者 河合加奈
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  • 原文掲載日 2023/06/05

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