未治療ホジキンリンパ腫に、ニボルマブは病勢進行と死亡リスクを低減

米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)

ASCOの見解

「本試験は、進行期ホジキンリンパ腫の治癒率を向上させ、小児と成人の治療アプローチを調和させることを目的として、北米全土にわたる臨床試験共同グループが行った、今までにない取り組みです。成人グループと小児グループの協力によって、忍容性や持続的寛解が得られる割合が改善した新しい標準治療への道が開かれました」とASCO専門家のOreofe Odejide医師は述べている。

小児および成人の未治療の3または4期ホジキンリンパ腫において、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(販売名:オプジーボ)と化学療法の併用は、標準治療であるCD30標的薬ブレンツキシマブ(販売名:アドセトリス)と化学療法の併用に比較して、病勢進行および疾患関連死のリスクを大幅に低減した。連邦資金を受けたこの臨床試験は、米国臨床腫瘍学会年次総会2023(ASCO2023)で発表された。

試験要旨

目的進行したホジキンリンパ腫に対する併用療法に関する第3相試験
対象者治療歴のない12歳以上の976人
試験結果追跡期間中央値12.1カ月で:

 ブレンツキシマブとの比較で、ニボルマブでは疾患関連死のリスクが52%減少した。

 1年無増悪生存率(PFS)はニボルマブ94%に対し、ブレンツキシマブでは86%であった。

 死亡は、ブレンツキシマブで11例(有害事象によるもの7例)、ニボルマブで4例(同3例)であった。
重要性本試験は、米国国立がん研究所(NCI)が出資する臨床試験グループ史上、最大のホジキンリンパ腫試験であり、進行したホジキンリンパ腫の小児と成人に対する治療を調和させ、現在の標準治療よりも忍容性や持続的寛解を得られる割合が高い新しい標準治療につながる、重要な一歩である。

主な知見

追跡期間中央値12.1カ月で、ブレンツキシマブと比較して、ニボルマブでは疾患関連死のリスクが52%少なかった。1年無増悪生存率(PFS)はニボルマブで94%、ブレンツキシマブで86%であった。死亡は、ブレンツキシマブで11例(有害事象によるもの7例)、ニボルマブで4例(同3例)であった。

「米国では従来、成人および小児の進行ホジキンリンパ腫は異なる化学療法レジメンで治療されており、また小児では大多数が放射線治療も受けるのに対し、成人患者では放射線の使用はまれでした」と、筆頭著者でカリフォルニア州ドゥアーテにあるシティオブホープの血液腫瘍専門医、 Alex Francisco Herrera医師は述べる。「本試験のデザインと計画の一環で、成人および小児の協力グループが集まり、全年齢層のホジキンリンパ腫患者の治療を調和させるというまたとない成果を目指して、対照レジメンと実験レジメンの双方に合意しました」。

未治療ホジキンリンパ腫に対するオプジーボとブレンツキシマブの第3相試験について

SWOG S1826は、進行したホジキンリンパ腫を対象とした第3相ランダム化比較試験である。本試験では、本疾患に対する治療を受けていない12歳以上の976人が登録された。患者は、米国食品医薬品局(FDA)承認のPD-1免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ、またはFDA承認の、腫瘍壊死因子受容体CD30に対する抗体薬物複合体ブレンツキシマブベドチンのいずれかを投与する群にランダムに割り付けられた。

米国で2023年に新たに診断されるホジキンリンパ腫は推定8,830例(男性4,850例、女性3,980例)である。同年、推定900人(男性540人、女性360人)の死亡が予測される。現在、進行した疾患の5年生存率は83%である。

ホジキンリンパ腫の約4分の1には治療効果がない。新しい治療法の中には、大多数、特に60歳以上の患者にとってかなり攻撃的で毒性が強くなるものがある。 本試験のニボルマブによる治療では、この免疫療法薬に起因する有害事象は限られていた。特に多かった副作用は、血球数の減少や吐き気などの消化器系毒性等、併用化学療法でよく見られるものであった。免疫関連有害事象はほとんど見られなかった。

次のステップ

全生存期間やQOLなどの患者関連アウトカムを評価するために、より長期の追跡研究が必要である。

本試験は、米国国立衛生研究所(NIH)の 一部である国立がん研究所(NCI)から資金提供を受けている。

  • 監訳 花岡秀樹(遺伝子解析/イルミナ株式会社)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日 2023/06/04

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