再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるか

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCO専門家の見解

「多発性骨髄腫は 血液腫瘍の中では2 番目に多くみられ、再発と寛解を繰り返すのが特徴です。ダラツムマブ(販売名:ダラキューロ)、ボルテゾミブ(販売名:ベルケイド)、デキサメタゾン(DVd)の併用療法は FDA の承認を受けており、1回以上の治療後に再発した多発性骨髄腫患者に広く使用されています。DREAMM-7 試験で得られた知見は、臨床の現場を変えるものであり、BVd が再発・難治性多発性骨髄腫に対する新たな標準治療となる可能性があることを示唆しています」。
ー Oreofe O. Odejide医師、公衆衛生学修士、ASCO血液腫瘍専門医


belantamab mafodotin[belamaf、ベランタマブ マホドチン]とボルテゾミブ、デキサメタゾンの 3 剤併用療法(BVd)は、再発/難治性多発性骨髄腫患者において、現在の標準治療と比較して、無増悪生存期間を有意に改善することが、BVd療法とDVd療法の3剤併用療法同士を直接比較した試験で証明された。これらの結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズの 2024 年 2 月のセッションで発表される。

多発性骨髄腫の初回治療中または治療後に再発した患者に対する現在の治療選択肢には、ダ ラツムマブ、ボルテゾミブ、デキサメタゾンの 3 剤併用療法(DVd)がある。これまでの研究では、再発または難治性(がんが治療に反応しないことを意味する)の多発性骨髄腫患者の治療に、BCMA 標的抗体薬物複合体であるベランタマブ マホドチンを標準治療と併用することが支持されている。

DREAMM-7試験では、過去に1回以上の治療を受けた患者494人が、BVd群(243人)とDVd群(251人)に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値28.2カ月後、無増悪生存期間(がんが進行しなかった期間)中央値はBVd群で36.6カ月、DVd群で13.4カ月であった。重篤な副作用はBVd群では半数が経験したのに対し、DVd群では37%であった。眼の副作用はBVd群の79%、DVd群の29%が経験したが、対処可能であった。

「DREAMM-7 試験の結果は、BVd 療法が再発・難治性多発性骨髄腫患者の転帰を改善し、同時に管理可能な安全性プロファイルを有することを示しています。こうした結果は、BVd3剤併用療法がこれらの患者に対する新たな標準治療の選択肢となる可能性を支持するものです」と筆頭著者であるサラマンカ大学病院(スペイン、サラマンカ)のMaria-Victoria Mateos博士は述べている。

演題と発表は、2024年2月6日午後3時(米国東部標準時)より、こちらでご覧いただけます。

  • 監訳 吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2024/02/05

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