B細胞性悪性腫瘍のCD19標的CAR-NK細胞療法で1年後の予後は良好

MDアンダーソンがんセンター

第1/2相臨床試験で認められた大きな臨床効果に関連する提供臍帯血ユニットの主な特徴を特定

再発または難治性のB細胞性悪性腫瘍患者37人を対象に、CD19を標的とする臍帯血由来キメラ抗原受容体(CAR)ナチュラルキラー(NK)細胞療法を行った第1/2相試験で有望な結果が得られたことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らにより報告された。

投与100日後の奏効(OR)率は48.6%であり、1年の無増悪生存(PFS)率は32%および全生存(OS)率は68%との結果が1月17日、Nature Medicine誌に発表された。この試験では、重度のサイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、移植片対宿主病などの症例がなく、優れた安全性プロファイルが報告された。

この試験のもう1つの重要な発見は、CAR-NK細胞の作製における同種臍帯血ドナーの選択基準の重要性であった。採取後24時間以内に凍結保存された臍帯血ユニットと、有核赤血球含有量の少ない臍帯血ユニットを用いた場合の転帰は著しく良好であった。これらの臍帯血ユニットから作製されたCAR-NK細胞では、1年の無増悪生存率が69%および全生存率が94%であったのに対し、有核赤血球含有率が高い、または採取から凍結保存までの時間が長い臍帯血ユニットから作製された場合は、1年の無増悪生存率が5%および全生存率が48%であった。

「これらの悪性腫瘍の治療でCAR-NK細胞の長期的有効性を評価し続けており、これらの患者で観察された奏効は非常に心強いものです」と統括著者のKaty Rezvani医学博士(幹細胞移植・細胞療法の教授)は述べた。「同種細胞療法を成功させるためには、CAR-NKの作製に最適な同種ドナーの特徴を明らかにすることも重要です。われわれは、臨床効果をもたらす可能性が最も高い臍帯血ユニットに関連する2つの重要な因子を特定できました。そして、この現象の根底にある生物学的機序を明らかにしました。

本試験では、様々な種類のB細胞性悪性腫瘍での奏効率も有望であった。投与30日後の奏効率は、低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)で100%、転化を伴わない慢性リンパ性白血病(CLL)で67%、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で41%であった。

研究者らはCAR-NK細胞治療による持続的奏効も観察した。投与1年後、低悪性度非ホジキンリンパ腫患者の83%、慢性リンパ性白血病患者の50%、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者の29%で完全奏効が認められた。投与30日後に奏効を示した患者は、投与1年後に無増悪生存を示す可能性が有意に高かった。

これらの結果は、New England Journal of Medicine誌に掲載された本試験の以前のデータを土台としている。以前のデータでは、CAR-NK細胞の単回注入により、今回より少ないB細胞性悪性腫瘍患者のコホートの73%で寛解が得られたことが示されている。

「われわれの研究は、同種細胞療法後の奏効のドナー特異的予測因子を特定することの重要性を強調しています。というのも、特に1つのドナー(臍帯血)が数百人の患者の治療に使用される可能性があるためです。CAR-NK細胞は、事前に作製し、すぐに使用できる既製品として保管しておける可能性があります」とRezvani医学博士は述べた。「これにより、患者はこれらの細胞療法を利用しやすくなり、治療にかかる時間や費用を削減できる可能性があります」。

本試験で特定された選択基準は、MDアンダーソンで現在進行中および将来実施される、遺伝子改変した臍帯血NK細胞を用いた臨床試験のドナーの選択に適用され、他の抗原や固形がんを含む悪性腫瘍を標的とするプラットフォームに拡大される。

本研究は、MDアンダーソンのムーンショット計画®、Sally Cooper Murray Endowed Chair in Cancer Research、米国国立衛生研究所(NIH)(1 R01CA211044-01、5 P01CA148600-03、P50CA100632、CA016672)、Cancer Prevention and Research Institute of Texas(CPRIT)(RP180466)およびStand Up To Cancerの支援を受けた。共同研究者の全リストおよび開示情報は、論文全文とともにこちらに記載されている。

  • 監訳 吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)
  • 翻訳担当者 坂下美保子
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  • 原文掲載日 2024/01/17

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