難治性白血病(AML)にロジックゲートを用いたCAR-NK細胞療法SENTI-202で完全寛解
それまでの治療が奏効しなかったり、治療後に再発したりした急性骨髄性白血病(AML)患者が数人、first-in-class[画期的医薬品]のキメラ抗原受容体ナチュラルキラー(CAR-NK)細胞製剤であるSENTI-202による治療を受けて、完全寛解を得たことが、4月25~30日に開催された2025米国がん学会(AACR)年次総会で発表された第1相SENTI-202-101臨床試験の中間結果で明らになった。
CAR-T細胞療法は、多発性骨髄腫や一部のB細胞白血病およびリンパ腫などのB細胞悪性腫瘍の治療において成功を示している。しかし、この研究を発表したStephen Strickland, Jr.医師(MSCI)(サラ・キャノン研究所の白血病研究部長)によれば、AMLをはじめとする血液腫瘍には、細胞療法や抗体療法といった従来の薬剤では治療が難しいという特徴がある。
第一に、急性骨髄性白血病(AML)は不均一な疾患であるため、一貫した標的を見つける努力を複雑にしている。「異種のAML細胞で一様に発現する単一の標的はなく、AMLで標的となり得る標的の多くは健常細胞にも発現しています」とStrickland医師は語っている。
さらに、現在米国食品医薬品局(FDA)が承認しているCAR-T細胞療法はすべて、患者から採取した細胞を、がん細胞を標的にするように実験室で操作し、再び患者に注入するものである。このプロセスは、AMLのように急速に進行するがん患者には時間がかかる。特に他の薬剤による治療中または治療後にがんがすでに進行している場合はなおさらであるとStrickland医師は言う。さらに、AML患者はT細胞が機能不全に陥ることが多く、それが製造上の課題につながる可能性があると付け加えた。
このような課題を克服するために、研究者たちは、免疫細胞のもうひとつのタイプであるナチュラルキラー(NK)細胞のユニークな性質を利用して、新たな細胞療法を考案した。T細胞と同様に、NK細胞もがん細胞を標的とするようにCARを組み込むことができる。しかし、現在承認されているCAR-T細胞とは異なり、CAR-NK細胞は健康なドナー細胞から作り、将来の使用のために保存しておくことが可能であり、「すぐに使える」治療薬として患者に迅速に届けることができる。CAR-NK細胞はCAR-T細胞よりも免疫関連の副作用が少ないかもしれない、とStrickland医師は説明する。
CAR-NK細胞製剤であるSENTI-202は、CAR-NK細胞の設計にロジックゲートの概念を採用し、特異性の向上と毒性の低減を図った。この細胞はAML細胞上のCD33とFLT3という2つの異なる標的を認識するため、どちらかのタンパク質を発現している細胞を標的とすることで、異種集団における到達範囲を拡大できる可能性がある。CAR-NK細胞はまた、CD33やFLT3を発現している可能性のある健康な細胞が、正常な造血幹細胞に見られるタンパク質であるEMCNを発現している場合、その細胞を殺さないようにする抑制性受容体も持っている。
「抗体薬物複合体や二重特異性抗体とは異なり、このようなロジックゲート動作は細胞治療でのみ可能であり、腫瘍の不均一性を克服し健康な細胞を温存することで、AMLを治療するユニークな方法となる可能性があります」とStrickland医師は語った。
Strickland医師らは、初めてヒトに投与する第1相臨床試験SENTI-202-101において、SENTI-202の安全性、投与量、予備的有効性を検証している。データ締め切り時点で、再発または治療抵抗性の急性骨髄性白血病(AML)患者9人が少なくとも1サイクルのSENTI-202投与を受けている。患者はリンパ球除去化学療法を受けた後、10億個または15億個のCAR-NK細胞を28日サイクルで3~5回注入した。用量制限毒性は認められず、最大耐容量にも達しなかった。第2相試験における予備的な推奨用量は、1サイクルあたり15億個の細胞を3回投与することとされた。
解析時点では、9人中7人が最良総合効果を得て評価可能であり、残りの2人は1サイクル目でAML病勢が低下した後も治療を継続した。7人の患者のうち4人は完全寛解を達成し、いずれも測定可能な残存病変は認められなかった(3人は血液学的に完全に、1人は部分的に回復)。また、5人目の患者は形態学的に白血病のない状態(血小板と好中球数の回復を伴わない、芽球5%未満への減少)を経験した。全患者の完全奏効は継続中で、追跡期間は最長8カ月を超えた。3人の患者はSENTI-202投与後に骨髄移植を受けた。
グレード3以上の発熱性好中球減少症と血小板数減少がそれぞれ4人の患者で報告され、グレード3の貧血と腹痛がそれぞれ2人の患者で報告されたが、これらの副作用は1人を除くすべての患者で、SENTI-202とは無関係、またはリンパ球除去化学療法に起因するものと判断された。グレード5の有害事象は認められなかった。
「追跡調査データのある患者さんで観察された、深く持続的な奏効は印象的です」とStrickland医師は述べた。「医療ニーズが著しく満たされていない急性骨髄性白血病(AML)患者にとって、これが新たな治療法になることを期待しています」。
この結果は予備的なものではあるが、Strickland医師は有望だと考えており、この研究が固形がんを含む他のがん種におけるロジックゲート細胞療法の使用の可能性をさらに広げることを期待している。「がん細胞にのみ発現し、健康な細胞には発現しない『クリーン』ながん標的はほとんどありません」と彼は述べた。「ロジックゲート技術は、一つ、あるいは複数のがん標的を認識してより深いがん細胞死滅を誘導すると同時に、健康な細胞を認識し影響を受けないようにすることで、この問題を解決する可能性があります」。
この試験の限界としては、症例数が少ないこと、追跡期間が短いこと、既存の治療法との直接的な比較がないことなどが挙げられる。本試験では、SENTI-202の安全性と有効性をさらに評価するため、予備的な第2相における推奨用量で患者の追加登録を継続する。
本研究は、Senti Biosciences社(SENTI-202の開発元)とカリフォルニア再生医療機構から資金提供を受けた。Strickland氏は利益相反はないと報告している。
- 監修 パーキソン理咲 (血液内科)
- 記事担当者 青山真佐枝
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- 原文掲載日 2025/04/27
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