FDAが2つの稀な白血病の治療にIclusig (ponatinib)を承認/FDAニュース

FOR IMMEDIATE RELEASE:2012年12月14日
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FDA2つの稀な白血病の治療にIclusig ponatinib)を承認

予定より3カ月前倒しの承認

2012年12月14日、米国食品医薬品局(FDA)はIclusig(ponatinib[ポナチニブ])をについて、2つの稀な血液と骨髄の疾患である慢性骨髄性白血病(CML)及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)成人患者に対する適応を承認した。

Iclusigは、本製剤の迅速承認予定日(prescription user fee goal date)で、FDAによる薬剤承認申請の審査終了となる2013年3月27日よりも3カ月以上も前倒しで承認を受けた。IclusigはFDAの優先審査プログラムで薬剤承認申請による審査を受けた。このプログラムは、6カ月間の迅速審査であり、安全で有効な治療法と考えられ、有効な他の治療法が存在しない、又は市販製剤と比較して有意な改善をもたらす薬剤に適用される。

Iclusigは、ある特定のタンパク質による癌細胞増殖の促進を阻害する薬剤である。本剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)と呼ばれる薬剤クラスに抵抗性又は不耐容を示す慢性期、移行期、及び急性転化期CML患者、並びにPh+ALL患者に1日1回投与する。Iclusigは、T315Iとして知られる変異体により既承認のTKI剤に抵抗性を生じたCML細胞を標的とする。

「Iclusigの承認は重要なものです。それは他の薬剤で寛解を示さないCML患者、特に治療の選択肢が殆どないT315I変異体保持患者にとって治療の選択肢の一つとなるためです」と語ったのはRichard Pazdur医師、FDA Center for FDA医薬品評価研究センター血液腫瘍製品室所長である。「Iclusigは、2012年にCMLの治療で承認された3番目の薬で、またALLの治療では2番めに承認された薬です。これは、希少疾患患者に対して安全性及び有効性がみられる薬剤を承認するとしたFDAの取り組みを実施したものです」。

FDAは、2012年9月にBosulif(bosutinib[ボスチニブ])、2012年10月にSynribo(オマセタキシンメプコハク酸塩)のそれぞれを、CML各病期に対する適応を承認している。また2012年8月にはMarqibo(ビンクリスチン硫酸塩のリポソーム注射剤)については、フィラデルフィア染色体陰性ALLに対する適応を承認している。

IclusigはFDAの迅速承認プログラムで承認されており、このプログラムは患者が有望な新薬を早く利用する機会を提供し、その間に製薬会社が追加試験を実施して本剤の臨床的有用性や安全な使用について確認するものである。本剤は、希少疾患および病勢の治療を目的としているため、希少疾患医薬品の指定を受けた。

Iclusigの安全性及び有効性については、CML及びPh+ALLの様々な病期を対象とした臨床試験1試験で評価された。試験参加者全員にIclusigを投与した。

本剤の有効性は、CML患者の殆どで観察されるフィラデルフィア染色体の遺伝子変異を発現する細胞の割合の減少率、つまり細胞遺伝学的大寛解 (MCyR)により示された。患者全体の54%及びT315I変異体保持患者の70%でMCyRを達成した。MCyR維持期間の中央値については、本解析時点ではまだ到達していない。

移行期及び急性転化期のCML並びにPh+ALLでは、Iclusigの有効性を白血球細胞数の正常化、又は白血病細胞が認められない状態(血液学的大 寛解:MaHR)を達成した患者数で確認した。その結果は次のとおりであった。

  • 52%のCML移行期患者がMaHRを達成し、その期間の中央値が9.5カ月
  • 31%のCML急性転化期患者がMaHRを達成し、その期間の中央値が4.7カ月
  • 41%のPh+ALL患者がMaHRを達成し、その期間の中央値が3.2カ月

Iclusigは、本剤が血栓及び肝毒性を起こす可能性について患者及び医療従事者に対し、添付文書上の「黒枠警告」で注意喚起を記載された上で、承認されている。臨床試験で報告されている主な副作用に、高血圧、皮疹、腹部痛、倦怠感、頭痛、皮膚の乾燥、便秘、発熱、関節痛、及び悪心などがある。

Iclusigは、米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置くARIAD Pharmaceuticals社が販売している。またBosulifは米国ニューヨーク市に本社のあるPfizer社、そしてSynriboは米国ペンシルバニア州Frazerに本社のあるTeva Pharmaceuticals社がそれぞれ販売している。Marqiboは、米国カリフォルニア州南サンフランシスコに本社のあるTalon Therapeutics Inc社が販売している。

詳しい情報については以下を参照のこと:

FDA: Office of Hematology and Oncology Products (血液腫瘍製品室)〔原文〕

FDA: Approved Drugs: Questions and Answers (承認薬:質問と回答)〔原文〕

FDA: Drug Innovation(薬剤における革新)〔原文〕

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菅原宣志 訳
林 正樹 (血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院) 監修 
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原文

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