薬剤抵抗性卵巣がん患者の3/1にミルベツキシマブが奏効

プラチナ製剤に抵抗性を示す再発卵巣がん患者を対象とした、ダナファーバーがん研究所が主導する国際共同臨床試験で、ミルベツキシマブ ソラブタンシン(販売名:Elahere、ImmunoGen, Inc社)と呼ばれる新しい抗体薬物複合体が標準治療よりも大幅に優れた反応を示した。

ミルベツキシマブ ソラブタンシンは、2022年11月に米国食品医薬品局(FDA)から迅速承認を受けている。

FDAの承認は、本日Journal of Clinical Oncology誌に掲載されたSORAYA試験の結果に基づいており、試験結果は2022年3月の米国婦人科腫瘍学会年次総会および2022年6月の米国臨床腫瘍学会年次総会で既に報告されている。

本試験の筆頭著者であり共同責任者であるダナファーバーがん研究所の婦人科腫瘍学部門長Ursula A. Matulonis医師は、「SORAYA試験の結果は、葉酸受容体α陽性のプラチナ抵抗性再発卵巣がん患者に対するミルベツキシマブのFDA迅速承認につながりました」と、述べている。

「このたび本剤がFDAに承認されたことにより、本剤は2014年以来はじめてプラチナ抵抗性卵巣がんに対して承認された治療となりました。本日われわれがJournal of Clinical Oncology誌に報告した知見は、この患者層に対するミルベツキシマブ ソラブタンシンの有用性を強調するものです」。

本試験には、葉酸受容体αを高発現しているプラチナ抵抗性の高悪性度漿液性卵巣がん患者106人が登録された。

参加者は、自らの卵巣がんに対して最大でも3種までの治療を受けていた。

本試験の結果、追跡調査期間の中央値13.4カ月の後、参加者の32.4%が客観的な抗がん剤への奏効を示し、そのうち5人が完全奏効、すなわち、がんの画像的存在がすべて消失したことが示された。

奏効期間の中央値は6.9カ月だった。

重要なこととして、以前にベバシズマブ(販売名:アバスチン)を投与されたことがある患者では、過去に受けた治療の数やPARP阻害剤の投与歴に関係なく薬剤の効果が認められた。

試験参加者において、ミルベツキシマブの忍容性は良好であった。

治療に関連する副作用は、主に目のかすみ、角膜症(非炎症性の目の状態)、吐き気等であった。

この新規薬剤は、がん細胞を直接標的とする抗体と薬剤を結合させた抗体薬物複合体(ADC)で、近年増加傾向にある。

ミルベツキシマブは、高悪性度漿液性卵巣がんの葉酸受容体α分子を標的とする抗体と、微小管形成を阻害するDM4と呼ばれる薬剤分子を結合させたものである。

(微小管は、細胞の形と構造を与える細胞骨格の主要な構成要素である)

葉酸受容体タンパク質は、一部の腫瘍細胞で正常細胞よりもはるかに多く存在するため、抗がん剤にとって魅力的な標的となっている。

本試験は、イミュノジェン社の出資で行われた。


  • 監訳 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)
  • 翻訳担当者 武藤 希
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  • 原文掲載日 2023/01/30

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