抗体薬物複合体Rina-Sがプラチナ抵抗性卵巣がんで持続性のある奏効を示す
開発中の抗体薬物複合体(ADC)は、葉酸受容体α(FRα)の低発現や非発現の患者を含む、プラチナ製剤抵抗性卵巣がん患者において、臨床的に意義のある持続的な奏効を示したことが、第1/2相RAINFOL-01臨床試験の結果により示された。
モントリオールで開催された2026年国際婦人科がん学会(IGCS)総会で発表されたこの結果は、プラチナ製剤抵抗性の卵巣がん、原発性腹膜がん、卵管がんの患者を対象に、FRαを標的とする治験中の抗体薬物複合体であるrinatabart sesutecan(Rina-S)を評価したものである。このデータは、ダナファーバーがん研究所の婦人科腫瘍学プログラムに所属する腫瘍内科医であり、本研究の主任研究者であるElizabeth K. Lee医師により発表された。
Rina-Sによる治療を受けた109人の患者のうち、45.9%で確定した客観的奏効が認められ、そのうち5例は完全奏効であった。奏効期間の中央値は12.1カ月で、奏効を示した患者の51%は1年後も奏効を維持していた。無増悪生存期間中央値は9.5カ月であった。
「プラチナ製剤抵抗性の卵巣がんは治療が困難な疾患であり、複数の治療ライン(段階的な治療計画)を経て病勢が進行したとき、患者の治療選択肢は限られてしまうことが多い」とLee氏は述べた。「このような多剤治療歴のある患者集団において、臨床的に意義があり、かつ持続的な奏効が認められたことは明るい兆しです。FRα発現のレベルが異なる患者群全体で抗腫瘍活性が確認されたことも、卵巣がん患者に対する新たな治療法の研究を続ける上で特に重要です」。
RAINFOL-01試験は、プラチナ製剤抵抗性の高悪性度漿液性卵巣がん、原発性腹膜がん、卵管がんで、過去に1~3ラインの治療歴がある患者を対象とした。直前の治療がミルベツキシマブ(販売名:エラヒア)であった患者については、最大4ラインまでの治療歴が認められていた。本試験の患者の半数以上が、過去に3~4ラインの治療を受けていた。全参加者は以前にベバシズマブ(販売名:アバスチン)およびタキサン系抗がん剤の投与を受けており、約半数がPARP阻害剤を、3分の1が以前にミルベツキシマブ ソラブタンシンを投与されていた。
抗腫瘍活性はFRαの低発現や非発現の患者を含め、FRαの発現状態にかかわらず認められた。また、ミルベツキシマブによる前治療の有無にかかわらず奏効が認められ、ミルベツキシマブの治療を受けた患者における奏効期間中央値は13.1カ月であった。
Rina-Sは、FRα標的抗体を介して、トポイソメラーゼ1阻害剤をがん細胞に直接送達するように設計されている。この治験薬は、FRαを標的とするモノクローナル抗体と、切断可能なリンカー、およびトポイソメラーゼⅠ阻害剤というペイロード(搭載薬剤)であるエキサテカンを組み合わせたものである。
主な副作用には、疲労感や悪心、嘔吐、便秘、食欲不振、腹痛などの胃腸症状が含まれた。血液学的副作用には、貧血、好中球減少症、血小板減少症が含まれた。患者のわずか1.8%において、治療関連の有害事象により治療が中止された。本試験では、眼毒性、末梢神経障害、間質性肺疾患、口内炎に関する安全性上の懸念を示す兆候は認められなかった。
「これらの知見は、抗体薬物複合体が、特に標準治療に耐性を示すようになった患者において、卵巣がん治療の新たな戦略となり得るという、蓄積されつつある証拠を裏付けるものです」とLee氏は述べた。「卵巣がん治療におけるRina-Sの最終的な有用性を評価するには、さらなる研究が必要です」。
RAINFOL-01試験は、特定の固形がん患者を対象に、異なる用量のRina-Sの安全性と有効性を評価する、非盲検多施設共同の第1/2相臨床試験である。本試験には、FRαの発現レベルが幅広い患者が組み入れられており、複数の治療コホートで構成されている。Rina-Sは、卵巣がんおよびその他のがんを対象とした複数の追加の臨床試験で現在研究が進められている。Lee氏が国内の共同主任研究者を務めるランダム化第3相試験「RAINFOL-02」では、現在、患者の登録が進められている。
- 記事担当 山口みどり
- 監修 石井一夫 (計算機統計学/公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科)
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- 原文掲載日 2026/10/8
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