卵巣がんの根本原因は― 答えの一部が新研究で解明か

卵巣がんの根本原因は― 答えの一部が新研究で解明か

研究者らが、卵巣がんで最も多いタイプの重要な生物学的因子とみられるものを発見した。この発見は、卵巣がんを早期発見したり、そもそも発症を予防したりするためのアプローチ開発を方向付ける可能性があると研究者たちは考えている。

複数の研究により、高悪性度漿液性卵巣がんは、卵管内の漿液性卵管上皮内がん(STIC)病変と呼ばれる前がん状態の腫瘍から発生することがわかっている。これらの病変は最終的に卵巣内に転移し、本格的な腫瘍へと変化する可能性がある。

今回の研究で、ピッツバーグ大学医学部のLan Coffman医学博士らは、高リスクの間葉系幹細胞(MSC)と呼ばれる幹細胞の一種の助けを借りて、STIC病変が発生し、卵巣で腫瘍に変化する可能性があることを示した。

これらの高リスクMSCは、がんの増殖を促進すると考えられる特定の特性を有しており、がんのない女性の卵管組織サンプルにおいて、STIC病変の直下の組織(間質)に多量に存在していた。また、正常組織にも時折みられた。

研究者らが高リスクMSCを健康な卵管細胞とともにマウスに移植したところ、一部のマウスで卵巣がんが発生し、場合によっては転移性がんも発生したと、研究者らは3月14日付けCancer Discovery誌に報告した。

Coffman博士によれば、高リスクMSCが健康な卵管細胞を高悪性度漿液性卵巣がんに変化させる主要な誘因であるかどうかはまだ明らかではないが、研究グループの研究結果はこれらの細胞が深く関与しているという考えを裏付けているとのことである。

「私たちが見ているのは、[高リスクMSC]ががん発生を支援する『土壌』であるということです」と彼女は語った。

不正MSCと卵巣がん

卵巣がんと診断される女性の約70%は、高悪性度漿液性卵巣がんである。ほとんどの女性では、診断時には既にがんが他の部位に転移している。進行した高悪性度漿液性卵巣がんの女性のうち、診断後5年以上生存するのはわずか3分の1程度である。

これらの統計を受けて、治療がより有効となる可能性のある早期段階で高悪性度漿液性卵巣がんを特定する方法を見つけるための研究取り組みに拍車がかかった。

BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子に変異を有する女性にとって、懸念は特に深刻である。これらの変異がない女性と比較すると、卵巣がんのリスクは30~40倍も高く、唯一の予防策は卵巣の外科的切除である。

Coffman博士の研究チームは、進行卵巣がん女性を対象とした以前の研究において、WT1と呼ばれるタンパク質を多量に産生するなど、特定の特性を有するMSC群が卵巣がんの腫瘍内およびその周囲にほぼ常に存在することを発見した。これらの細胞は腫瘍の転移を助け、化学療法などの治療による激しい攻撃への抵抗を助けるように思われることから、研究者らはこれらを「がん関連MSC」と名付けた。

フィールド効果と腫瘍形成

現在の研究で研究者らは、卵巣がんではないが他の健康上の理由で卵管を切除した女性の卵管から採取した組織サンプルを解析した。その中には、予防手術を受けたBRCA1またはBRCA2変異陽性の女性も含まれている。

漿液性卵管上皮内がん(STIC)病変が存在するサンプルでは、​​がん関連間葉系幹細胞(MSC)と驚くほど特徴が類似したMSCが間質内で数多く認められた。また、これらと同じ「高リスクMSC」を健常組織のサンプル中でも、数は少ないものの時折発見した。

一部のSTIC病変では、高リスクMSCが爆発半径、つまり「フィールド効果」をもつようであった。つまり、高リスクMSCはSTIC病変のすぐ外側の健常組織にしばしば存在するということである。このフィールド効果は、高リスクMSCがSTIC病変の卵巣内への拡散の種となる可能性を示しているとCoffman博士は述べた。

NCI腫瘍転移部門の責任者であるJoanna Watson博士は、このフィールド効果の発見を「非常に興味深い」と述べた。Watson博士によると、他のがん種におけるフィールド効果の証拠はいくつかの研究で見つかっているものの、卵巣がんにおいてこれが記録されたのは今回が初めてだという。

追加の研究室実験では、高リスクMSCが健康な卵管細胞のDNAに損傷を与え、卵巣がん細胞の増殖と相互接着を助け、腫瘍形成の重要なステップとなることが示された。

最終的に、ヒト組織サンプル由来の高リスクMSCを含むオルガノイドと呼ばれる微小構造をマウスに注入したところ、腫瘍は形成されなかった。しかし、オルガノイドに健康な卵管細胞も含まれていた場合、数カ月後に一部のマウスで卵巣がんが発生し、肺や肝臓への転移性腫瘍もみられた。

研究者らがマウスに形成された腫瘍を解析したところ、「それらはすべて、高悪性度漿液性卵巣がんのゲノム特性を有していた」とCoffman博士は述べた。

Watson博士は、これらのマウスにおける卵巣がんの発生には、「間質細胞と上皮細胞間のコミュニケーションが明らかに重要である」と述べた。しかし、どの細胞が「会話を始めるのか、何がきっかけとなるのかは不明である」。

高リスクMSCの発見は早期発見や予防に役立つ?

Watson博士は、高リスクMSCがヒトにおいてどのように挙動するかをより正確に把握するために、マウスモデルを用いたさらなる研究が重要だと付け加えた。しかしながら、これらの特定の幹細胞が「卵管におけるがんの発生を促進し、支援する」という知見は「非常に説得力がある」と彼女は述べた。

Coffman博士​​らは、高リスクMSCまたはSTIC病変によって引き起こされる間質の変化の分子マーカーを特定する試みなど、追加研究を計画しており、これは現在よりも早期に卵巣がんを検出するために使用される検査の基礎となる可能性がある。

こうした検査には「採血が最も簡単だろう」とCoffman医師は述べた。あるいは、パップスメアやタンポンのようなものを用いて膣や子宮頸部から採取できる「近位体液」でもよいかもしれない。

Coffman博士は、こうした早期発見検査は、遺伝性のBRCA1またはBRCA2変異がある人など、がんリスクが特に高い女性が対象となると思われると述べた。

  • 監修 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2025/04/24

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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