【ASCO2024年次総会】進行卵巣がんにリンパ節郭清が不要である可能性

ASCOの見解(引用)

「このランダム化第3相臨床試験は、進行卵巣がんの手術を受ける患者が、原発巣からの転移がないと思われるリンパ節の追加切除を安全に回避できる可能性を示しています。試験結果は、2つの患者群の差を決定的に示すものではありませんが、外科医ががん患者の転帰を損なうことなく手術による合併症を減少させようと取り組んだ結果として重要です。進行卵巣がんの転帰を改善するには、より優れた全身療法が依然として必要です」- エモリー大学医学部(ジョージア州アトランタ)Michael C. Lowe医師、MA

研究要旨

目的進行上皮性卵巣がん
対象者患者379人
主な結果​​進行上皮性卵巣がんでは、生存成績に影響することなく、がん手術中のリンパ節切除を安全に回避できる可能性がある。
意義⚫︎進行上皮性卵巣がんに対する標準的な治療では、手術で腫瘍を可能な限り切除し、その後化学療法を行う。以前は、患者は一次手術の際にリンパ節郭清(外科医による骨盤および腹部大動脈周辺のリンパ節切除)も受けていた。しかし、2019年に発表されたLION臨床試験の結果により、リンパ節郭清を省略しても患者の生存に悪影響はないことが示されたため、リンパ節郭清を行わない手術が標準治療となった。
⚫︎顕微鏡的残存病変を治療するために術後に全身療法または放射線療法を行う際に、臨床的に正常に見えるリンパ節を予防的に切除することは、多くのがん種で転帰に影響を与えないことが示されている一方で、リンパ節郭清にはかなりの合併症を伴う。 
⚫︎上皮性がんは卵巣がんに最もよくみられるタイプであり、新規症例の85%から90%を占める。卵巣がんと診断される人の75%以上は進行した段階で診断される。

一部の進行上皮性卵巣がんでは、生存成績に影響することなく、原発がんを可能な限り取り除くことを目的とした手術中のリンパ節切除を安全に回避できる可能性があり、これは術後合併症のリスクを低減する。本研究は、2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会(5月31日〜6月4日、イリノイ州シカゴ)で発表される。

研究について

「2019年発表のLION試験により、一次手術後に術後化学療法で進行卵巣がんを治療した患者において、すでに同様の結果が得られていました。今日では、進行卵巣がんの場合、術前化学療法後に行う手術(インターバル手術)がより頻度の高い戦略となっています。LION試験の発表ののち残された疑問は、術前化学療法後のリンパ節切除を考慮した最善の戦略は何か、ということでした。CARACOは、一部の患者についてこの疑問に答えるのに役立ちます」と、試験筆頭著者であるナント大学Institut de Cancerologie de l'Ouest(フランス、ナント)のJean-Marc Classe医学博士は述べた。

第3相CARACO試験には、進行上皮性卵巣がんで、原発がんを摘出する手術前または手術中にリンパ節にがんの徴候が認められなかった379人が登録された。2008年12月から2020年3月の間に、CARACO試験の参加者はリンパ節郭清を受ける群(181人)と受けない群(187人)に無作為に割り付けられた。ほとんどの参加者(75%)は手術前に化学療法を受けた。手術後、両群のほとんどの参加者にがんは残存しておらず、リンパ節郭清群の88%、非郭清群の86%にがんの残存は認められなかった。 

リンパ節郭清群では、中央値で28個のリンパ節が手術中に切除された。この群の約半数がリンパ節にがんを認め、中央値で3つのリンパ節が罹患していた。

主な知見

⚫︎中央値9年の追跡調査後、研究者らはリンパ節郭清の省略は生存転帰に影響しないことを明らかにした。 
⚫︎リンパ節郭清を受けなかった参加者の無増悪生存期間は14.8ヵ月であったのに対し、リンパ節郭清を受けた参加者では18.5ヵ月であった。 
⚫︎全生存期間の中央値も両群間で同様であり、リンパ節郭清を受けなかった参加者の半数が48.9ヵ月で生存していたのに対し、リンパ節郭清を受けた参加者は58ヵ月であった。 
⚫︎これらの結果はいずれも統計学的に有意ではなかった。 

リンパ節郭清を受けた参加者は、受けなかった参加者に比べて術後により重篤な合併症を経験した。この合併症には、出血や体液貯留など最初の手術で生じた合併症に対処するための追加手術の必要性(リンパ節郭清群8.3%vs非郭清群3.2%)、輸血の必要性(それぞれ34%vs25%)などが含まれる。しかし、術後60日以内に死亡した参加者の割合は、両群間で同程度であった(それぞれ1.1%vs0.5%)。

次のステップ

研究者らは、手術前にリンパ節にがんの徴候がある進行上皮性卵巣がん患者に対してリンパ節郭清が有用かどうかを評価する予定である。

CARACO試験は、フランス国立がん研究所からの国庫補助金により実施された。

  • 監訳 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/06/02

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

卵巣がんに関連する記事

デリケートゾーン用タルクの使用は卵巣がんリスク上昇と関連の画像

デリケートゾーン用タルクの使用は卵巣がんリスク上昇と関連

ASCOの見解「本研究は、インティメイトケア製品、特にデリケートゾーン用タルクに関連する潜在的リスクを強調している。このような製品が、特に頻繁に使用する人や20代や30代で使用...
【ASCO2024年次総会】ホルモン補充療法、エストロゲン単剤でがんリスク増加、エストロゲン+プロゲスチン併用でリスク低下の画像

【ASCO2024年次総会】ホルモン補充療法、エストロゲン単剤でがんリスク増加、エストロゲン+プロゲスチン併用でリスク低下

ASCOの見解(引用)「Women's Health Initiative研究の長期追跡調査から、閉経後の女性が結合型エストロゲン(CEE)を単独で服用した場合、プラセボを服用...
一部の進行卵巣がんにミルベツキシマブ ソラブタンシン承認、治療選択肢が拡大の画像

一部の進行卵巣がんにミルベツキシマブ ソラブタンシン承認、治療選択肢が拡大

進行卵巣がんの場合、当初はプラチナ製剤ベースの化学療法薬でうまく治療できるが、がんが再発することが多い。プラチナ製剤抵抗性の卵巣がんは治療が困難であることが証明されているが、最近、米国...
HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023の画像

HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023

MDアンダーソンがんセンター(MDA)トラスツズマブ デルクステカンが治療困難ながんに新たな治療選択肢を提供する可能性

HER2を標的とした抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステ...