FDAが転移去勢抵抗性前立腺がんにlutetium Lu 177 vipivotide tetraxetanを承認

2022年3月23日、米国食品医薬品局(FDA)は、アンドロゲン受容体(AR)経路遮断薬とタキサン系抗がん剤による治療歴を有する、前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性の転移去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の成人患者の治療を効能・効果としてlutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan(ルテチウム[Lu 177]ビピボチドテトラキセタン)(販売名:Pluvicto, Novartis社傘下のAdvanced Accelerator Applications USA, Inc.社)を承認した。

また同日、FDAは、PET(陽電子放出断層撮影)用の放射性診断薬gallium Ga 68 gozetotide(販売名:Locametz)を前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性病変の検出を目的として使用することを承認した。この承認には、lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetanによるPSMA標的治療が適応となる転移前立腺がん患者の選別が含まれている。

gallium Ga 68 gozetotideは、放射性リガンド治療薬の使用の対象となる患者選択のために承認された初の放射性診断薬である。治療歴のある転移去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者のうちlutetium Lu 177 vipivotide tetraxetanによる治療の対象となる患者は、gallium Ga 68 gozetotideまたは承認済の他の前立腺特異的膜抗原(PSMA)-11画像診断薬を使用し、腫瘍のPSMAの発現に基づいて選別される必要がある。PSMA陽性mCRPCは、gallium Ga 68 gozetotideの取り込みが正常肝より強い腫瘍病変を1つ以上有するもの、と定義された。短軸方向に一定の大きさの基準を超える病変があり、その病変の同剤の取り込みが正常肝と同等かそれ以下の患者は登録から除外された(全処方情報、セクション14を参照)。

有効性の評価は、ランダム化(2:1)、多施設共同、非盲検試験であるVISION試験(NCT03511664)によって行われた。同試験では、前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性で進行および転移のみられる去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者を対象に、lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetanと標準的治療(BSoC)の併用(n=551)、または標準的治療(BSoC)単独(n=280)を評価した。全ての試験参加者は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アナログ投与または両側精巣摘出術を受けていた。また、1種類以上のアンドロゲン受容体経路遮断薬と1~2レジメンのタキサン系抗がん剤による治療歴を有することが条件とされた。試験参加者は、標準的治療に加えlutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan 7.4 GBq(200 mCi)を6週間ごとに最大6サイクル受ける群と、標準的治療のみを受ける群に分けられた。

同試験では、主要評価項目である全生存期間(OS)および画像に基づく無増悪生存期間(rPFS)において、統計学的に有意な改善が認められた。lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan+標準的治療と標準的治療の比較では、全生存期間のハザード比(HR)は0.62(95%信頼区間[CI]:0.52, 0.74; p<0.001)であった。全生存期間の中央値は、lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan+標準的治療群で15.3カ月(95%CI:14.2、16.9)、標準的治療群では11.3カ月(95%CI:9.8、13.5)であった。対照群では早期脱落による打ち切りが多かったため、画像に基づく無増悪生存期間に対する効果の程度に関する解釈は限定的なものであった。

lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan投与群で発生率が高かった有害反応(20%以上)は、疲労、口渇、悪心、貧血、食欲減退、便秘であった。ベースラインから悪化した最も頻度の高い臨床検査値異常で、lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetanを投与された患者の30%以上にみられた症状は、リンパ球減少、ヘモグロビン減少、白血球減少、血小板減少、カルシウム減少、ナトリウム減少であった。lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetanによる治療は、放射線被ばく、骨髄抑制、腎毒性によるリスクをもたらす可能性がある。VISION試験での安全性追跡期間は、放射線に関連する晩期有害事象を把握するのに十分ではなかった。

lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetanの推奨用量は、7.4 GBq(200 mCi)であり、6週間ごとに最大6サイクルまで、または疾患進行や許容できない毒性が現れるまで静脈内投与する。

Pluvictoの全処方情報はこちらを参照。

Locametz全処方情報はこちらを参照。

翻訳担当者 高橋多恵

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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