米国でPSA検診の減少後、転移性前立腺がんの診断が増加

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解
「PSA検診の減少は、転移性前立腺がんの男性の増加という代償を伴うかもしれないことをこの研究は示唆しています。患者さんは、最も良いアプローチを決めるためにPSA検診の危険性と利益について主治医と相談するべきです」と、理学系修士(MS)、米国内科学会マスター(MACP)、米国臨床腫瘍学会フェロー(FASCO)、米国臨床腫瘍学会の泌尿生殖器がん専門医であるRobert Dreicer医師は述べた。

前立腺特異抗原(PSA)検査を用いた前立腺がん検診の減少が最近の転移性疾患診断の増加と符合しているとする研究が、2月11日から13日にオンライン開催される2021米国臨床腫瘍学会泌尿生殖器がんシンポジウムで発表される。

【研究の概要】

注目点PSA検診と転移性前立腺がん診断件数の関係
研究対象米国在住の40歳以上男性
結果PSA検診率の減少は転移性前立腺がんの診断件数の増加と相関した
結果の意義男性がPSA検診の利益と不利益について主治医と相談することを推奨する重要性が増した

【主な結果】

米国においては、PSAを用いた前立腺がん検診を受ける40歳以上男性の平均割合が、2008年の61.8%から2016年の50.5%へと低下した。同時に、転移性前立腺がんと診断された男性の(年齢調整後の)平均人数は10万人当たり6.4から9人へと増加した。

PSA検診を受けたことがあると報告した40歳以上の男性の割合(40.1%-70.3%)と、診断時の転移性前立腺がんの年齢調整発生率(10万人あたり3.3~14.3人)は、州により大きく異なっていた。しかし、PSA検診の経時的な減少は転移性前立腺がん診断の増加と関連することが統計モデルで示され、PSA検診の減少が大きい州では転移性前立腺がん診断の増加も大きい傾向にあった。

「州ごとのデータのばらつきは、まさに私たちの研究の強みの一つです。PSA検診率減少の程度と転移性疾患診断増加の程度は相関していたので、人口レベルで関連がある可能性が示唆されます」と、論文の筆頭著者でありカリフォルニア大学ロサンゼルス校泌尿器腫瘍学のヘルスサービスフェローであるVidit Sharma医師は述べた。

予防と証拠に基づいた医療における全国的な専門家有志からなる独立したグループである米国予防医学専門員会(USPSTF)が2008年と2012年に発表したガイドラインでは、PSA検診は年齢にかかわらず推奨されていなかった。しかし、2018年の改訂版(*下部参照)では、55歳から69歳の男性については、「PSA検診の潜在的な利益と害について主治医と相談したうえで検診を受けるかどうかを個別に判断する」ことが推奨されている。同専門委員会は、70歳以上の男性についてはPSA検診を受けないことを推奨した。

【試験について】

研究者らは、2002年から2006年の間の米国各州における診断時の転移性前立腺がん年齢調整済み発生率(男性10万人当たり)を北米中央がん登録協会から得た。また、各州のPSA検診推定数も行動リスク因子調査システムから得た。このシステムは、40歳以上の男性を対象としてこれらの情報を2002年から2年ごとに収集している。筆者らは、転移性前立腺がん発生率とPSA検診を受けた男性の数との相関を州ごとに調べた。

【次のステップ】

研究者らはPSA検診の減少と死亡率の相関を調べるとともに、他の因子の影響も調べることを計画している。

資金提供

Sharma医師はバージニア州ヘルスケア研究開発協会の支援を受けた。

*サイト内関連記事:前立腺がん検診の推奨グレード(USPSTF)[2018年5月最新版]

翻訳担当者 伊藤彰

監修 榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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原文掲載日 

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