ニボ+イピ併用が一部の進行前立腺がん患者に有効

免疫チェックポイント阻害薬2剤併用の研究推進を支持する第2相試験結果

イピリムマブ(CTLA-4阻害薬。販売名:ヤーボイ)とニボルマブ(PD-1阻害薬。販売名:オプジーボ)の併用は、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の一部の患者に持続的な奏効をもたらす可能性があることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が主導する第2相試験結果で示された。mCRPCは通常、免疫療法薬への反応が乏しい、免疫原性の低いがんである。

化学療法治療歴のない患者群において、全奏効率は25%、全生存期間中央値は19カ月であった。化学療法治療歴のある患者群では、全奏効率は10%、全生存期間中央値は15.2カ月であった。完全奏効に達したのは4人(各群に2人)であった。

Cancer Cell誌に発表されたCheckMate 650試験結果は、mCRPCにおける免疫チェックポイント阻害薬2剤併用に関する初の報告である。本試験の初期結果は、2019年米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿生殖器がんシンポジウムですでに発表されている。その知見に基づき、現在、治療関連の毒性を抑制するための代替投与レジメンが拡大治験で評価されている。

「これまでの研究から、前立腺がんは、腫瘍浸潤T細胞がごくわずかで免疫原性が低いため、チェックポイント阻害薬に対する抵抗性が高いことがわかっています」と、試験責任医師であるPadmanee Sharma医師(泌尿生殖器腫瘍内科学・免疫学教授)は述べている。「今回の結果から、前立腺がんの治療では、T細胞浸潤を亢進させてから免疫抑制経路を遮断するという2剤併用アプローチが有効な戦略となる可能性があります。今後、安全性プロファイルを改善するために、投与スケジュールと投与量を最適化する予定です」。

2剤併用療法のデザイン

Nature Medicine誌に発表された先行研究において、Sharma医師らは、前立腺がんには抗腫瘍免疫応答を減衰させる複数のメカニズムがあることを発見した。CTLA-4阻害薬でT細胞が呼び寄せられた場合でも、腫瘍に浸潤したT細胞は、代償的に免疫抑制タンパク質PD-L1やVISTAなどの抑制経路を活性化させた。

このことから、チェックポイント阻害薬を単剤で評価する先行臨床試験でmCRPC患者の治療に有効性が示されていない理由が説明できるであろう、とSharma医師は述べる。同氏はMDアンダーソンのMoon Shots Programの一環である免疫療法プラットフォームの共同ディレクターも務めている。

研究者らは、CTLA-4阻害薬(イピリムマブ)をPD-1阻害薬(ニボルマブ)と併用することで、T細胞を腫瘍内に浸潤させ、その結果生じる免疫抑制反応を排除できるのではないかとの仮説を立てた。

多施設共同の非盲検試験には、mCRPCの男性90人を登録し、3週間ごとに2剤を併用投与した。患者は、化学療法歴のある患者群、化学療法歴のない患者群の2群に分けて登録された。参加者の内訳は白人77.8%、黒人/アフリカ系アメリカ人10%、その他12.2%であった。

奏効率のほかに、この併用療法で得られた結果として、病勢コントロール率が化学療法歴のない患者群と化学療法歴のある患者群でそれぞれ46.9%と13.3%、無増悪生存期間中央値がそれぞれ5.5カ月と3.8カ月であった。

奏効は良好であったが、グレード3および4の治療関連有害事象が生じた割合は、化学療法歴のない患者群で42.2%、化学療法歴のある患者群で53.3%であった。これらの有害事象で最も多かったのは、下痢、肺炎、大腸炎、リパーゼ上昇であった。治療関連有害事象のために治療を中止した患者は、合計31人であった。治療に関連した死亡者は、各群に2人、合計4人であった。

「明らかに治療の効果があった患者さんもいましたが、重篤な有害事象が現れた患者さんもいたため、プロトコルを修正して別の投与スケジュールや投与量を評価し、この併用療法の安全性を向上させることになりました」とSharma医師は言う。

今回のデータに基づいて、本試験は拡大され、400人以上の患者が登録された。さまざまな投与量と投与スケジュールを検証することにより、有効性を向上させ、毒性を最小化することができる戦略の特定を目的とする。

反応に関与するバイオマーカーの探索

研究チームはまた、この疾患患者の臨床転帰に関連する可能性のあるバイオマーカーを特定するための解析も行った。

本試験の参加患者は少数ではあるが、得られた結果から、この併用療法は腫瘍遺伝子変異量(TMB)が比較的高い患者で有効性が高い可能性が示唆される。これは、特定のmCRPC患者はメラノーマ(悪性黒色腫)や肺がんなどの他のがんと比較してTMBが低いにもかかわらずチェックポイント阻害薬に反応する可能性があるとの先行研究と一致する。

「今回の試験は、化学療法治療歴と予備的なバイオマーカー解析に基づいて、イピリムマブ+ニボルマブ併用療法で効果が得られるmCRPC患者を特定するための第一歩となります」と、共著者のSumit Subudhi医学博士(泌尿生殖器腫瘍内科学助教)は述べる。「これまでに得られたデータは有望なものですが、できるだけ少ない毒性で効果的な併用療法の実施に向けて、拡大した対象患者でさらに多くのことを研究しなければならないことは明白です」。

本研究は、Bristol-Meyers Squibb社と小野薬品工業株式会社の支援を受けた。Sharma医師は、パーカーがん免疫療法研究所(Parker Institute for Cancer Immunotherapy:PICI)のメンバーであり、MDアンダーソンにおけるPICI共同ディレクターである。著者一覧とその情報開示は、こちらの論文に記載されている。

翻訳担当者 山田登志子

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

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