ダロルタミドで非転移性、去勢抵抗性前立腺がんの死亡リスクが低下

【ロイター】新しい前立腺がん治療薬ダロルタミドが非転移性去勢抵抗性前立腺がん男性患者の3年時点の死亡リスクを31%低下させることが、第3相ARAMIS試験で得られた新たなデータより明らかになった。

試験費用を負担したフィンランドのOrino社およびドイツのBayer社は以前、商品名Nubeqaとして販売中である本剤の無転移生存期間の中央値が40.4カ月であったのに対し、プラセボでは18.4カ月であったことを発表している。

New England Journal of Medicine誌に掲載された新たな報告書によると、3年全生存率は、ダロルタミド群で83%、プラセボ群で77%(P=0.003)であった。

本剤はアンドロゲン除去療法と組み合わせて投与される。

同試験には1,509人の男性患者が参加し、全員のPSA倍増にかかる期間は10カ月以下であった。この無転移生存期間データを踏まえ、米国食品医薬品局(FDA)は2019年7月に本剤を承認した。

副次的評価項目である疼痛進行までの期間は、ダロルタミド群で40.3カ月、プラセボ群で25.4カ月であった(P<0.001)。

本剤による治療にかかる費用は、goodrx.com(*サイト注:安価に受け取れる方法を示唆するサイト)によると、1 カ月あたり 11,000 ドル以上に及ぶ。

ダロルタミドはアンドロゲン受容体阻害薬である。本剤はAstellas社、Pfizer社、およびJohnson and Johnson社より販売されている他の治療薬との比較は行われていない。

副作用は両群で同程度であったが、ダロルタミド群で多くみられた疲労は、ダロルタミド群で13.2%であったのに対し、プラセボ群で8.3%であった。その他の副作用はすべて患者の10%未満に認められた。

「転倒、けいれん発作、精神障害、高血圧といった、アンドロゲン受容体阻害薬でよくみられる有害事象の発現率は、2群間で同様でした」と、パリ・サクレー大学のKarim Fizazazi博士が率いる研究チームは述べている。「骨折の発生率は、プラセボ群と比較してダロルトアミド群でわずかに高いことが示されましたが、曝露期間調整後は群間差が減少しました」。

2014年の契約によると、Bayer社は国際市場でダロルタミドの販売権を所有している一方、Orion社は本剤を製造し、新たな市場での初回販売時に目標達成報奨金を受け取る。

米国で1年間に新規に前立腺がんと診断された患者16万人のうち、非転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者は約1万5千人である。

出典:https://bit.ly/2F2rWBO、The New England Journal of Medicine誌2020年9月9日付オンライン版

翻訳担当者 瀧井希純

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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