進行前立腺がんの治療効果を予測する血液検査

2種類の検査法により、ホルモン療法が奏効しない患者の予測に成功

進行前立腺がん患者のうち、抗アンドロゲン療法が奏効しない可能性が高い患者を事前に特定できる血液検査が2種類あり、これによって治療選択肢をより明確に医師と患者に提示できることがデュークがん研究所の研究で明らかになった。

「リキッドバイオプシー」とも呼ばれるこの血液検査は、前立腺腫瘍細胞内を循環するアンドロゲン受容体スプライスバリアント-7(AR-V7)を検出する。このバリアント(変異)が存在すると、再発性転移性前立腺がん治療に使用されるアンドロゲン受容体新薬への反応が思わしくない。

多施設協同、前向き研究PROPHECYにおいて、Andrew Armstrong医師(デュークがん研究所内のデューク前立腺・泌尿器がんセンター臨床研究担当副所長)が率いる研究チームは、2種類の血液検査を比較して、アビラテロンまたはエンザルタミドによるホルモン療法の治療効果をどの程度予測できるかを調べた。Armstrong氏は6月4日、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で研究結果を発表した。

「本研究結果は、特に高リスク患者や、エンザルタミドまたはアビラテロンをすでに試みている患者の治療方針決定において臨床的に有用です」とArmstrong氏は述べた。「再発性転移性前立腺がんの治療法は複数ありますが、すべての患者で奏効するわけではなく、交差抵抗性が当分野の重要課題となっています。治療が奏効する可能性が高い患者、治療効果がほとんど期待できない患者を事前に特定しておくことは、より効果的な代替治療法を迅速に患者へ提供するとともに、新規治療法を開発するために重要です」。

Armstrong氏らは、5カ所の医療機関で男性118人を登録し、2種類の予後判定検査の外部検証を目的として1対1の直接比較を実施した。一方の検査は、Epic Sciences社およびGenomic Health社が販売し、CTC AR-V7核タンパク質検査と呼ばれる。もう一方はジョンズホプキンス大学の開発によるもので、CTC AR-V7 RNA検査という。いずれもAR-V7を異なる方法で測定するものであり、米国食品医薬品局(FDA)にはまだ承認されていない。

本研究の主要結果は、これら2種類のAR-V7 CTC検査の検証結果であるが、Armstrong氏らはこのリキッドバイオプシーを利用して多数のゲノム変化も調べており、治療選択の向上と薬剤耐性獲得の解明に役立つ可能性がある。

これらの検査を臨床で利用すれば、進行したホルモン耐性疾患を患う男性に対する治療方針の決定に役立ち、そうした患者の次の治療段階としては、アンドロゲン受容体を標的とするアビラテロンまたはエンザルタミド、あるいは化学療法などの選択肢が一般的である。検査は簡単な採血で行い、わずか数日で結果が出る。

1対1の直接比較において、2つの検査法はともに、ホルモン療法の効果が不良となる患者をAR-V7マーカーで正確に識別した。ジョンズホプキンス開発検査はより感度が高いようで、無反応患者を多く特定した。これに対してEpic検査は判定の特異性がより高く、偽陽性判定はなかった。

研究者らは現在、同様の検査を追加して評価しているが、その目的は、患者が新規治療や治療前アプローチで利益を得られるように、AR-V7陰性患者とAR-V7陽性患者とをより正確に識別することである。

「このような予測検査が利用できるようになれば、多数の男性が、効果が期待できない治療を受けて時間とお金を無駄にしたり、ひどい精神的苦痛を味わったりせずに済むでしょう」とArmstrong氏は述べた。「これらの男性患者に対して、私たちは化学療法を開始するか、または免疫療法、分子標的療法、ホルモン療法、併用アプローチに関する他の臨床試験に患者登録することができます。本研究は侵襲性の高い前立腺がん患者の治療における大きな進歩を表しています」。

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翻訳担当者 山田登志子

監修 辻村信一(獣医師・農学博士、メディカルライター)

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