FDA、無転移生存期間をもとに非転移性去勢抵抗性前立腺がんにアパルタミドを承認

速報

米国食品医薬品局(FDA)は本日、転移していない(非転移性)がホルモン療法にもかかわらず増殖し続ける(去勢抵抗性)前立腺がんの治療薬として、アパルタミド(商品名:Erleada)を承認した。これはFDAが初めて承認した非転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療である。

「抗腫瘍薬の承認にあたって、FDAは評価項目と呼ばれる薬剤の効果を測定するさまざまな方法を評価しています。今回の承認では、無転移生存期間という評価項目が初めて用いられ、治療開始後、体内の他の部位への腫瘍の転移がみられなかった期間または患者が死亡するまでの期間が測定されました」と、FDAのOncology Center of Excellenceセンター長でFDA医薬品評価研究センター血液学・腫瘍製品室室長代理のRichard Pazdur医師は述べている。また、同医師は「承認の根拠となった試験では、アパルタミドは、この評価項目に大きな影響を及ぼしました。今回の承認は、アメリカ国民が重要な治療を迅速に受けられるようにするために新しい評価項目を使用するという政府機関の姿勢を示しています」とも述べている。

国立衛生研究所の国立がん研究所(NCI)によれば、前立腺がんは米国男性では二番目に多いがんである。NCIは、2017年に約161,360人の男性が前立腺がんと診断されて、そのがんが原因で26,730人が死亡したと考えられると推定している。前立腺がん患者の約10~20%が去勢抵抗性がんであり、そのなかの最大16%の患者に去勢抵抗性診断時に転移を示す所見が認められなかった。

アパルタミドはホルモンの一種であるアンドロゲンの腫瘍への影響を阻止することによって効果を発揮する。テストステロンなどのアンドロゲンは腫瘍の増殖を促進させるおそれがある。

アパルタミドの安全性および有効性は非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者1,207人を対象にしたランダム化臨床試験に基づいている。本試験の対象となった患者にはアパルタミドまたはプラセボが投与された。さらに、患者全員にホルモン療法が実施され、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログ療法または体内のテストステロン量を減少させる手術(去勢手術)が施行された。無転移生存期間中央値は、プラセボ投与群では16.2カ月であったのに対して、アパルタミド投与群では40.5カ月であった。

アパルタミドの副作用には疲労、高血圧、発疹、下痢、悪心、体重減少、関節痛、転倒、顔面紅潮、食欲低下、手足の骨折および腫れ(末梢性浮腫)がよく認められる。

アパルタミドの重篤な副作用には転倒、骨折およびけいれんがみられる。

今回の申請は優先審査に指定された。この審査では、FDAは承認された場合に重篤な病態の治療、診断または予防に関する安全性または有効性を大幅に改善しうると判断する薬剤の申請に対する審査を6カ月以内に終了することを目標としている。

アパルタミドに関わったスポンサーが、FDAが最近発表したClinical Data Summary Pilot Programの最初の参加者となる。これは、出資者に対して医薬品の承認を裏づける臨床的証拠に関する有用な情報を提供し、FDAの意思決定過程の透明性を示す取り組みである。承認直後にアパルタミドの登録に伴い臨床概要報告のなかの特定の情報がDrugs@FDAおよび新しい試行プログラムのランディングページにて公開される。

FDAはヤンセンファーマ株式会社に対してErleadaを承認した。

翻訳担当者 木村素子

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性の画像

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性

ジョンズホプキンス大学抗がん剤オラパリブ(販売名:リムパーザ)は、BRCA2などの遺伝子に変異を有する患者に対し、男性ホルモン療法を併用せずに、生化学的再発をきたした前立腺がんの治療に...
転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持の画像

転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持

第3相PSMAforeの追跡研究研究概要表題タキサン未投与の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性とARPI変更との比較:ラ...
転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望の画像

転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望

低温プローブを用いる治験的治療では、前立腺がん細胞の一部を死滅させ、腫瘍特異的ネオアンチゲン(※がん細胞特有の遺伝子変異などによって新たに生じた抗原)を放出させ免疫反応を促進する。...
進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望の画像

進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの予後は非常に不良です。アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とカボザンチニブ(販売名:カボメ...