精管切除と前立腺がんリスクは関連なしとの大規模研究結果

プレスリリース

ASCOの見解
ASCO前立腺がん専門委員Sumanta Pal医師

「医療制度が変わり続け、予防や健康全般、満足のいく生活状態が重視されるようになるにしたがって、がんリスクの減少に対する人々の関心が一層高まってきました。精管切除を受けた男性または精管切除を検討している男性は、前立腺がんで死亡するリスクが精管切除のせいで高まることはないと確信できるようになりました」。

新たな研究において、精管切除を受けた男性では前立腺がんのリスクは増加せず、また精管切除を受けなかった男性に比べて前立腺がんによる死亡リスクも増加しなかった。

研究者らによると、この研究は、現時点で精管切除と致死的前立腺がんに関する最大規模の前向き研究である。

研究者らは、本研究のデータが精管切除を受けた男性または本手術を検討している男性をある程度安心させるものであると結論づけている。

結果は、本日Journal of Clinical Oncology誌の電子版に公開された。

研究者らは、Cancer Prevention Study II(CPS-II)に登録された40歳以上の男性363,000人以上を対象に、精管切除と前立腺がん死との関連を分析した。CPS-IIには精管切除が施行されたと判定された人が42,000人以上含まれていた。

研究では、30年間で約7,400人の男性が前立腺がんにより死亡した。

さらに、CPS-IIの男性約66,000人のサブグループでは、新たに診断された前立腺がんについても追跡が行われ、このうち9,100人以上の男性が研究期間中に前立腺がんと診断された。

分析では、年齢、人種、教育レベル、BMI、および喫煙状態を含む因子により調整が行われた。

精管切除と前立腺がん全体のリスクまたは致死的前立腺がんのリスクとの間に関連はみられなかった。

研究では、研究期間の最後の5年間に非侵襲性前立腺がんリスクがわずかに増加したと報告されているが、著者らは偶然の結果であろうと述べている。

精管切除と前立腺がんの関連を検討した先行研究では、精管切除が前立腺がん全体のリスクの約10%の上昇および致死的前立腺がんリスクの約20%の上昇と関連することが明らかになった。

Jacobs医師らは、先行研究に含まれる前立腺がん死はわずか800人余りであるのに対し、今回の研究には7,000人以上が含まれており、結果が異なるのは偶然の結果であろうと述べている。

「先行研究では関連が示されましたが、われわれの研究結果では、精管切除と前立腺がんまたは前立腺がん死の全体のリスクとの間に関連はみられず、精管切除を検討している男性はある程度安心できるはずです」と述べたのは、この新たな研究の筆頭著者であり、アメリカがん協会のがん疫学研究者でもあるEric J. Jacobs博士である。

「致死的前立腺がんの発生が懸念される男性は、健康体重を維持し、喫煙中であるならば禁煙するように心がけるべきです。肥満と喫煙はいずれも、他の多くの疾患リスクと同様に致死的前立腺がんリスクの増加との関連が一貫して示されています」。

前立腺がんは、非黒色腫皮膚がんを除き男性で最も多くみられるがんである。

アメリカがん協会によると、男性の7人に1人が生涯のうちに前立腺がんと診断されることになる。

また、前立腺がんは男性におけるがん関連死としては2番目に多く、今年は26,000人以上の男性が前立腺がんにより死亡すると予想されている。

翻訳担当者 工藤章子

監修 辻村信一(獣医学/農学博士、メディカルライター)

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