前立腺がんの転移部位が生存期間に影響

デューク大学医療センター

(*この記事には生存期間のデータが含まれます)

前立腺がん転移部位別生存期間(中央値)_3

リンパ節転移のみの患者は全生存期間が最も長く、肝転移患者は最も短い。肺転移または骨転移患者ではその中間になる。

「前立腺がんの転移部位が生存期間に影響を及ぼすことを、医師や患者に示したこれまでの研究は小規模なもので、各臓器における転移の発生率もわずかだったので、よい指針を示すのは困難でした」と、デューク大学生物統計学教授で、Journal of Clinical Oncology誌電子版3月7日号で発表された本研究の筆頭著者であるSusan Halabi博士は述べた。

「われわれは、研究で解析した多数のデータを用いて、これらの異なる部位すべてを比較し、患者に予後を告げる際に役立つ可能性のある情報を示すことができました」と、Halabi博士は述べた。「この情報は、ホルモン療法または化学療法を用いた治療法の指針として使用できる可能性もあります」。

Halabi博士と米国および世界各地の主要ながん研究センターの共同研究者らは、転移性前立腺がん男性8,736人の転帰を解析するため、9件の大規模第3相臨床試験からデータを抽出した。患者は全員、化学療法剤ドセタキセルを用いた標準治療を受けていた。

転移部位は、肺転移、肝転移(肺転移なし)、リンパ節転移のみ、他臓器への転移がない骨転移(リンパ節転移の有無によらない)の4グループに分類された。

ほぼ73%に近い大多数の患者で骨転移が認められ、全生存期間中央値は21カ月強であった。リンパ節転移のみの男性は、6.4%と最も少数のグループであったが、生存期間中央値は最も長く、約32カ月であった。

肝転移が認められた男性は患者の8.6%を占め、生存期間中央値は最も短く、ほぼ14カ月であった。肺転移が認められた男性は研究対象集団の9.1%を占め、生存期間中央値は19カ月であった。

「これらの結果は、進行性前立腺がん男性に対する臨床的意思決定の指針となるはずです」と、Halabi博士は述べた。「臨床試験で試される研究的治療に対し、予後サブグループを考慮すべきということも、これらの結果により示唆されています」。Halabi博士は、前立腺がんが別の臓器へ転移する仕組みや理由を解明するために、さらに多くの研究が必要であると述べた。

Halabi博士の他の共著者は以下のとおりである。William Kevin Kelly, Hua Ma, Haojin Zhou, Nicole C. Solomon, Karim Fizazi, Catherine M. Tangen, Mark Rosenthal, Daniel P. Petrylak, Maha Hussain, Nicholas J. Vogelzang, Ian M. Thompson, Kim N. Chi, Johann de Bono, Andrew J. Armstrong, Mario A. Eisenberger, Abderrahim Fandi,Shaoyi Li, John C. Araujo, Christopher J. Logothetis, David I. Quinn, Michael J. Morris, Celestia S. Higano, Ian F. Tannock, and Eric J. Small.

本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)(CA 155296)、国防総省(W81XWH-15-1-0467)の支援を受けた。加えて、Alliance for Clinical Trials in Oncology、AstraZeneca社、Bristol-Myers Squibb社、Celgene社、Oncogenex社、Regeneron社、Sanofi社、SWOGからデータの提供を受けた。

翻訳担当者 生田亜以子

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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