2011年から2013年に中間・高リスクの前立腺癌が増加していることを示す初期エビデンス

ASCO(米国臨床腫瘍学会)の見解

「この研究は、予備的ではありますが、前立腺癌に対するPSA(前立腺特異抗原)検診のリスクと利益をめぐって進行中の論争に新たな知見を与えるものです」とASCO専門委員で泌尿生殖器ニュース計画チーム(GU News Planning Team)のメンバーであるCharles Ryan医師は述べ、「これらの知見だけでは医師の診療を変更させるほどのものにはなりません。しかし、この知見からは、検診が自分に適しているがどうかを判断するため、検診について主治医と相談するよう引き続き勧める必要があると考えられます」と続けた。

2005年以降に前立腺癌治療を行った約87,500人の男性のデータ解析によると、よりリスクの高い前立腺癌症例が2011年から2013年の間に著しく増加している。患者データの後ろ向き解析から、中間リスクまたは高リスクの前立腺癌と診断された男性の割合はこの期間中に6%近く増加していることが判った。死亡率の上昇はまだみられていないが、著者らはこの明らかな傾向から、前立腺癌による死亡が1年当たり1,400人増加し得ると推定している(2014年の前立腺癌の推定新症例数および低リスク対高リスク癌患者の相対的生存率に基づく)。しかし、著者らはこの知見についてさらなる研究を行って検証する必要があると強調している。この研究は、間もなくオーランドで開催される2015年泌尿生殖器シンポジウム(2015 Genitourinary Cancers Symposium )において発表される予定である

本研究では、2005年1月~2013年6月に前立腺癌と診断された男性87,562人のデータが解析された。患者データはNational Oncology Data Alliance(NODA:Elekta Medical Systems社の登録商標)から収集された。NODAは150を超える米国病院における癌症例について記録した独自のデータベースである。解析当時、米国国立癌研究所(NCI)の監視疫学遠隔成績(SEER)のデータベースでは入手できない2011~2013年のデータを含んでいたためこのデータベースが選択された。しかし、著者らは、NODAに提出されたデータは、州の腫瘍登録に提出されたデータと同一であり、最終的にはSEERに提出されるという注釈をつけた。

血中のPSA値が10を超えると、ステージ(進行度)およびグレード(悪性度)に関係なく中間リスクまたは高リスクの前立腺癌とされる。2005年から2011年にかけて、PSA値が10を超える前立腺患者の割合は徐々に低下した。しかし、2011年から2013年の間では、血中のPSA値に基づいて中間リスクまたは高リスクの前立腺癌と診断された男性の割合は毎年3%ずつ上昇した。

米国で2014年に予測される新規前立腺癌症例数233,000人に基づき、著者らはこの傾向から、2014年に全米の高リスク前立腺癌の診断数は2011年と比較して14,000人の増加に相当すると推定している。 そして前立腺癌で死亡する男性は毎年少なくとも1400人ずつ増加する可能性があると予測している。この推定には、低リスク患者で約95%、中間リスク患者で75~90%、高リスク患者で60~80%といった前立腺癌患者の10年生存率も考慮に入れられている。

「今回の研究は、米国予防医学専門委員会のPSA検診に関する提言以降、前立腺癌の臨床像に関する変化を比較したはじめてのものです」と研究主著者のTimothy E. Schultheiss医学博士(City of Hope[カリフォルニア州ドゥアーテ]の放射線物理学部門教授、部門長)は述べた。「この時間枠でわれわれの解析により認められた中間リスクおよび高リスク前立腺癌診断数の上昇を考慮すると、前立腺癌リスクの高い男性、特に前立腺癌の家族歴を有する男性はPSA検診について主治医との相談を考慮すべきです」。

研究者らは追跡調査において、新たな登録データが得られたときには、この解析結果を更新することにしている。

翻訳担当者 緒方登志文

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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