精巣癌の既往歴がある男性は悪性度の高い前立腺癌発症の全リスクは低いものの、前立腺癌を発症しやすい

精巣癌の病歴のない男性における前立腺癌の発症率 (2.8%) に比べて、精巣癌の病歴を有する男性の前立腺癌の発症率 (12.6%) は高いことが、男性約18万人を対象とした症例対照研究により示唆された。また、精巣癌を経験した男性は、中間リスクあるいは高リスクの前立腺癌を発症する可能性も高い。この研究結果は、オーランドで開催される泌尿生殖器癌シンポジウム2015 (2015 Genitourinary Cancers Symposium) において発表される予定である。

「リスクが高い可能性を考えれば、精巣癌の病歴を持つ男性は前立腺癌のリスク評価について医師と話し合うべきです」と本研究の統括著者であり、メリーランド大学医学部の外科助教であり、メリーランド州ボルティモアのメリーランド大学Marlene and Stewart Greenebaumがんセンターの泌尿器ロボット外科の指導者であるMohummad Minhaj Siddiqui医師は述べた。「今回行った研究のみを根拠に何らかの診療上の勧告をすることは時期尚早ですが、今回得られた知見は、精巣癌と前立腺癌の生物学的関連に関する今後の研究の土台となります」

研究者らは、精巣癌の病歴を持つ男性3万2435人と、メラノーマの病歴を持つ男性14万7044人の生存率・疫学・最終結果 (SEER) のデータを解析した。今回、メラノーマを対照群とした理由は、メラノーマと前立腺癌に関連が認められていないためである。メラノーマ患者の前立腺癌発症リスクは、一般男性と同等であると考えられている。平均すると、両群とも前立腺癌発症までの年数は初発の癌から約30年であった。

80歳までの前立腺癌の全発症率は、対照群よりも精巣癌の病歴を持つ男性群のほうが有意に高かった (2.8%対12.6%)。また、中間リスク前立腺癌や高リスク前立腺癌の発症率も、対照群よりも精巣癌群のほうが高かった (1.1%対5.8%)。精巣癌は、全前立腺癌発症リスクが4.7倍、中間リスクや高リスク前立腺癌の発症リスクが5.2倍高いことに関連していた。

Siddiqui医師は、精巣癌の病歴を持つ男性が中間リスク前立腺癌や高リスク前立腺癌を発症する可能性は低く、95%はそういった癌を発症しないということを念頭に置くことが重要であると述べている。

翻訳担当者 重森玲子

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

転移病変への放射線+ホルモン療法は、進行前立腺がんの無増悪生存を改善の画像

転移病変への放射線+ホルモン療法は、進行前立腺がんの無増悪生存を改善

MDアンダーソンがんセンター転移病変を対象とした放射線療法を間欠的なホルモン療法に追加することより、オリゴ転移前立腺がん患者の無増悪生存期間(PFS)が改善することが、テキサス大学MD...
エノブリツズマブは安全で、高リスク前立腺がんに有望な可能性の画像

エノブリツズマブは安全で、高リスク前立腺がんに有望な可能性

Enoblituzumab [エノブリツズマブ] というモノクローナル抗体の新薬は、高悪性度の前立腺がんの男性に対して安全で、全身のがんに対する臨床効果を示す可能性がある。同薬の投与患者の66%が、手術後12カ月間、前立腺特異抗原 (PSA) 値が検出されなかった
ポリメラーゼ阻害薬タラゾパリブが転移性前立腺がんの無増悪生存を改善の画像

ポリメラーゼ阻害薬タラゾパリブが転移性前立腺がんの無増悪生存を改善

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCOの見解「早期前立腺がんの発見と治療には大きな進歩がありましたが、新たに診断された転移性ホルモン抵抗性前立腺がんの治療については、過去10年間...
ASCO泌尿生殖器がんシンポジウムの最新知見の画像

ASCO泌尿生殖器がんシンポジウムの最新知見

米国臨床腫瘍学会(ASCO)
2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿生殖器(GU)がんシンポジウム(2月16日~18日、カリフォルニア州サンフランシスコMoscone West Buildi...