前立腺癌診断における画像ガイド下生検により高リスク腫瘍の検出が可能

前立腺癌診断における画像ガイド下生検により高リスク腫瘍の検出が可能

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2015年1月27日

前立腺生検において疑わしい領域を特定する画像ガイド技術に関する最近行われた最大規模の前向き研究で、研究者らは、画像ガイド技術による高リスク前立腺癌の検出能を、現行基準である非画像ガイド下の前立腺生検の検出能と比較した。MR/US融合生検と呼ばれるこの画像ガイド技術は、磁気共鳴(MR)画像法による標的化と経直腸的超音波(US)断層法を組み合わせたもので、生検において癌の存在が疑われる領域を特定する。一方、超音波のみで実施される現行基準の前立腺生検は、12本の針を使用して前立腺内の別の箇所から検体を採取することを目的とした前立腺全体の生検である。本試験で、米国国立癌研究所(NCI)の研究者らは2007~2014年に1,003人の男性を登録した。登録された男性は、前立腺癌の存在を検出するため、MR/US融合標的生検と現行基準の非画像ガイド下前立腺生検の両者を受けた。本試験の登録基準は前立腺特異抗原(PSA)値の上昇ないし、直腸診の異常であった。そして、現行基準の前立腺生検で陰性所見歴が認められることが多かった。本試験は2015年1月28日にJAMA誌に発表された。研究者らは、画像ガイド下生検と現行基準の非ガイド下生検の、外科的に切除された前立腺内の癌の存在を予測する能力を比較した。

MR/US融合標的生検は、現行基準の生検と比較して高リスク癌を30%多く検出し、低リスク癌検出を17%減少させたことが本試験の結果から示された。また、標的化MR/US融合生検は、前立腺全摘術後の前立腺全体内の中~高リスク癌の同定に関しては、現行基準の生検あるいは両生検をあわ せたよりも精度が高かった。MR/US融合標的生検は、現行基準の生検と比較して、手術が推奨される患者において最善の判断の指針となった。標的生検は、現行基準の生検で見落とされた高リスク前立腺癌男性患者をより多く特定することができる一方、低リスク癌の検出が減少することが本研究で最終的に示された。このようなリスク層別化の改善は、男性患者にとって臨床的利益につながる可能性がある。これらの結果から、標的生検によって前立腺癌の再発やそれによる死亡を減少させることができるかどうかを確かめる、今後の臨床試験に強力な論理的根拠がもたらされることをPeter A. Pinto医師(NCI)主導の研究者チームは確認した。費用増加の最大の理由は各患者に実施されるMRIであるため、今後の臨床試験の解析においては費用も対象となる。一方で、リスク層別化の改善による利益を考慮すると、患者1人当たりの費用予測は現行基準の生検の費用予測と同じくらいであることが他の試験から示されている。標的生検の最終的な臨床上の意義の評価を目的とする臨床試験が将来必要となる。

原文

翻訳担当者 渡邊岳 

監修 榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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