進行がん患者の終末期全身療法は予後を改善しない

進行がん患者の終末期全身療法は予後を改善しない

MDアンダーソンがんセンター

患者の希望に沿った支持的な終末期ケアに注力する医療提供者の重要性を強調する研究結果

進行が著しい固形がんを有する患者は全身療法を受けても全生存期間に有意な改善はみられなかったという研究結果が、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターとイェールがんセンターの研究者らにより、5月16日JAMA Oncology誌に発表された。

この研究結果は、がん専門医が、抗がん剤治療の追加は患者にとって有益でない可能性が高いことを助言し、その代わりにQOLと生存率を改善することが実証されている緩和ケアや支持療法に集中できるようにするためのさらなる証拠を提供する。

「私たちの研究は、医療提供者と患者間の予後に関するオープンで誠実なコミュニケーションの重要性を浮き彫りにしています」と、MDアンダーソンのChief Quality and Value Officerで統括著者であるKerin Adelson医師は述べた。「私たちの知見は、腫瘍医が治療を再考し、支持療法の選択肢に関する透明性のある情報を患者に提供することで患者が十分な情報を得た上で意思決定ができるようにする一助になるかもしれません」。

Adelson氏らは、144の地域腫瘍診療所および学術/研究センターで治療を受けた78,000人以上の成人患者の非識別データを分析した。本研究に組み入れられた患者は、2015年から2019年の間に、乳がん、大腸がん、非小細胞肺がん、膵がん、腎細胞がん、尿路上皮がんの6つの一般的ながんのいずれかの転移または進行がんと診断された。

研究者らは、非常に進行したがんに対する全身療法の実施頻度によって抗腫瘍療法を層別化し、これらの抗腫瘍療法で治療を受けた一般的な6種類の固形がん患者の全生存期間を調査した。その結果、非常に進行したがんに対する全身療法をより多く行った抗腫瘍療法では、より少なかった抗腫瘍療法と比較して、患者の生存率に差は認められなかった。

「多くの研究では、患者が予後や個人的な目標に沿ったケアを受けられるようにするためには、ケアのゴール設定についての会話が重要であることを示しています。追加治療が患者の生存を改善するのではなく、毒性と害をもたらすだけであることがわかっている場合には、なおさら重要です」とAdelson氏は語った。

MDアンダーソンは、その組織戦略の一環として、患者のゴールに沿ったケアを確保することに取り組んでいる。この集学的アプローチは、患者個人の価値観や目標をケアプランに統合するものである。MDアンダーソンでは、ケアのゴールに関する早期の話し合いを奨励し、合理化するための戦略を数多く開発しており、緩和ケアや終末期ケアに関連するリソースを再構築および再編成する方法を特定している。

Adelson氏はエールがんセンター在籍中にこの研究を開始した。本研究はFlatiron Health社の支援を受けた。共著者および開示情報の一覧はこちら

  • 監訳 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2024/05/16

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