転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持

第3相PSMAforeの追跡研究研究概要

表題

タキサン未投与の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性とARPI変更との比較:ランダム化前ARPIによる検討(PSMAfore)

発表

2024年5月3日、米国泌尿器科学会年次総会プレナリー

著者(ダナファーバーがん研究所)

Xiao X. Wei医師

要旨

第3相PSMAfore試験の結果の追跡解析において、ダナファーバーなどの臨床研究者らは、患者が最初にどのアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)を投与されたかにかかわらず、ARPIから別のARPIへの変更よりも177Lu-PSMA-617の方が臨床転帰が一貫して良好であることを見いだした。本試験には、転移性疾患に対して1回のARPI治療後に進行し、タキサン系化学療法を受けたことのないPSMA陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者468人を登録した。本試験に登録された患者は、アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)の変更(例えば、アビラテロンからエンザルタミドへの変更、またはその逆)、または前立腺特異的膜抗原(PSMA)標的放射性リガンド療法である177Lu-PSMA-617のいずれかに割り付けられた。この解析により、177Lu-PSMA-617による治療は、前治療がアビラテロンまたはエンザルタミドのいずれであるかにかかわらず、ARPIの変更と比較して、放射線学的無増悪生存期間を延長し、PSA奏効率を改善し、客観的奏効率を増加させることが明らかになった。アビラテロン治療後に177Lu-PSMA-617治療を受けた患者は、エンザルタミド治療歴のある患者よりも良好であったが、すべての結果は、ARPI薬剤の変更よりも、177Lu-PSMA-617が一貫して有利であった。

意義

VISION臨床試験に基づき、2022年3月にARPI後およびタキサン系化学療法後のmCRPC患者に対して177Lu-PSMA-617が承認されたことは、進行前立腺がんの管理における革新的な転換であった。PSMAfore臨床試験は、ARPI治療後に疾患が進行したが、タキサン系化学療法は受けていない、より広範なmCRPC患者群にも177Lu-PSMA-617が有益かどうかを見きわめることを目的にデザインされた。今回のデータは、全体的な試験結果とともに、177Lu-PSMA-617を上述のmCRPC患者の幅広い集団に対する新たな標準治療法として検討することを支持するものである。

  • 監訳 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024/05/03

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