長期ホルモン療法は中間リスクの前立腺癌には利益がない

キャンサーコンサルタンツ

米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次総会で発表された試験結果によれば、中間リスクの前立腺癌については、放射線療法の後に長期ホルモン療法を行っても、疾患特異的生存率あるいは全生存率は改善しない。

アンドロゲン除去療法とも呼ばれるホルモン療法は、テストステロンの刺激によってホルモン依存性前立腺癌が増殖するのを抑えることを目的としている。医師は歴史的に、疾患の長期的コントロールには、より長期のホルモン療法がよいと理論づけしてきたが、これを裏づけるデータがほとんどなかった。

研究者は、RTOG 9202試験において、主として高リスクの前立腺癌患者を対象とし、初期のアンドロゲン除去後2年間の長期補助アンドロゲン除去(LTAD)を行った場合と、初期アンドロゲン除去(STAD)のみを放射線療法と併用した場合との、有効性の比較評価を行った。ただし、試験には、中間リスクの癌患者も含まれていた。研究者は、中間リスクの癌患者の2次解析で、LTADの生存に対する有効性について確認しようと試みた。

解析したのは133人の男性で、そのうちLTAD群は59人で、STAD群は74人であった。追跡期間中央値は11年を越えていた。解析結果、両群の全生存率に有意差は見られなかった。10年間生存率推定値は、STAD群で61%、LTAD群で65%であった。両群で、疾患特異的生存率は96%であった。10年間のPSA再発率は、STAD群で53%、LTAD群では55%であった。

研究者らは、中間リスクの前立腺癌のホルモン療法に関する限り、この療法がより長期であるほど良いとは言えないと結論づけた。むしろ、解析結果は、この集団では4カ月のホルモン療法で十分だということを示している。4カ月のホルモン療法の影響はほとんどの場合に回復しうるものであるが、2年間のホルモン療法を行うと長期的な合併症を起こす可能性があるため、この治療方法は中間リスクの前立腺癌患者の生活の質の改善が可能であることを示している。

参考文献:
Mirhadi AJ, Hunt D, Hanks GE, et al. Effect of long-term hormonal therapy (vs short-term hormonal therapy): A secondary analysis of intermediate-risk prostate cancer patients treated on RTOG 9202. International Journal of Radiation Oncology Biology Physics. 2013; 87(2): Page S26, Abstract 61.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 大木勝弥

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性の画像

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性

ジョンズホプキンス大学抗がん剤オラパリブ(販売名:リムパーザ)は、BRCA2などの遺伝子に変異を有する患者に対し、男性ホルモン療法を併用せずに、生化学的再発をきたした前立腺がんの治療に...
転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持の画像

転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持

第3相PSMAforeの追跡研究研究概要表題タキサン未投与の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性とARPI変更との比較:ラ...
転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望の画像

転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望

低温プローブを用いる治験的治療では、前立腺がん細胞の一部を死滅させ、腫瘍特異的ネオアンチゲン(※がん細胞特有の遺伝子変異などによって新たに生じた抗原)を放出させ免疫反応を促進する。...
進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望の画像

進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの予後は非常に不良です。アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とカボザンチニブ(販売名:カボメ...