FDAがBRCA変異転移性去勢抵抗性前立腺がんにニラパリブ/アビラテロン+プレドニゾン併用を承認

米国食品医薬品局(FDA)

2023年8月11日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDAが承認した検査で判定された、病的変異または病的変異疑いのあるBRCA遺伝子変異去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の成人患者に対して、ニラパリブとアビラテロンの固定用量合剤(販売名:Akeega、ヤンセン・バイオテック社)とプレドニゾンとの併用療法を承認した。

有効性は、相同組換え修復(HRR)遺伝子変異mCRPC患者423人を登録した、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であるMAGNITUDE(NCT03748641)のコホート1で評価された。患者は、ニラパリブ200 mgとアビラテロン1,000 mg+プレドニゾン10 mgを1日1回投与する群と、プラセボとアビラテロン+プレドニゾンを1日1回投与する群に無作為に割り付けられた(1:1)。患者は睾丸摘出術を受けているか、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログの投与を受けていることが要件とされた。短期間のアビラテロン+プレドニゾンの前治療(最大4カ月)と継続中のADTを除き、mCRPCに対する全身療法歴がある患者は除外された。ドセタキセルまたはアンドロゲン受容体(AR)標的治療の治療歴のある患者は、組入れられた。無作為化は、ドセタキセル治療歴、AR標的療法歴、アビラテロン+プレドニゾン治療歴、BRCAの状態によって層別化された。登録された423人の患者のうち、225人(53%)がBRCA遺伝子変異(BRCAm)を有していた。HRR遺伝子変異のないmCRPC患者(MAGNITUDEのコホート2)では、無益性(有効性が見込めない)の基準を満たし、有効性は認められなかった。

主な有効性評価項目は、盲検下独立中央判定による画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)であり、軟部組織についてはRECIST v1.1に従い、骨病変についてはProstate Cancer Working Group基準に従った。全生存期間(OS)が追加の評価項目であった。

ニラパリブ/アビラテロン+プレドニゾン群のrPFSは、プラセボ/アビラテロン+プレドニゾン群と比較して、BRCAm患者において中央値16.6カ月対10.9カ月で統計学的に有意な改善が認められた(HR 0.53; 95%CI 0.36、0.79;p = 0.0014)。BRCAm患者における探索的OS解析では、中央値で30.4カ月対28.6カ月(HR 0.79、95%CI:0.55、1.12)と治験薬投与群が有利であった。コホート1全体でITT(intention to treat、治療企図)解析の対象としたHRR集団では統計学的に有意なrPFSの改善が認められたが(HR 0.73;95%CI 0.56、 0.96;p = 0.0217)、非BRCA HRR遺伝子変異患者198人(47%)のサブグループにおいて、rPFSのハザード比は0. 99(95%信頼区間:0.67、1.44)、OSハザード比は1.13(95%CI:0.77、1.64)であり、ITT HRR遺伝子変異患者集団における改善は、主にBRCAm患者のサブグループで認められた結果に起因することが示された。

臨床検査値異常を含み、特に多く認められた有害事象(20%以上)は、ヘモグロビン減少、リンパ球減少、白血球減少、筋骨格痛、疲労、血小板減少、アルカリホスファターゼ増加、便秘、高血圧、悪心、好中球減少、クレアチニン増加、カリウム増加、カリウム減少、AST増加であった。MAGNITUDEのコホート1(n = 423)において、ニラパリブ/アビラテロン+プレドニゾンによる治療を受けたmCRPC患者全例において、27%が輸血を必要とし、うち11%は複数回の輸血を必要とした。

Akeegaの推奨用量は、ニラパリブ200 mgとアビラテロン1,000 mgの1日1回経口投与にプレドニゾン10 mgを1日1回併用し、疾患進行または許容できない毒性が発現するまで継続する。ニラパリブ/アビラテロン+プレドニゾンの投与を受ける患者は、同時にGnRHアナログ化合物も投与されるか、両側睾丸摘出術を受けている必要がある。

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  • 監訳  小宮 武文(腫瘍内科/Penn State College of Medicine)
  • 翻訳担当者 後藤 若菜
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  • 原文掲載日 2023/08/11

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