治療選択によって異なる前立腺癌患者のQOL(生活の質)

キャンサーコンサルタンツ
2010年1月

オーストラリアの研究者らは、様々な前立腺癌治療法が患者のQOLに持続的に影響すると報告した。この地域コホート研究の詳細は2010年1月23日発行のBritish Journal of Medicine誌に掲載された。[1]

前立腺癌が患者のQOLに与える影響の問題は、特定の治療法に関しては様々な試験で検討されてきたが、前立腺癌がQOLに与える全般的な影響に関する疫学報告はほとんどなされてこなかった。

本試験には、70歳未満の限局性前立腺癌患者1642例と70歳未満で前立腺癌のない対照495例を組み入れている。患者の大部分は前立腺全摘除術(60%)を受け、残りの患者は慎重な経過観察(待機療法)、アンドロゲン除去療法(ADT)、ADTと外照射(EBRT)併用療法、EBRT単独療法、高線量あるいは低線量での近接照射療法を受けた。

  • 身体的健康状態は、ADT単独療法あるいはADTとEBRT併用療法を受けた患者が最も不良であった。
  • 精神的健康状態は、群間差がなく、対照群とも差はなかった。
  • 泌尿器系の問題は、ベースライン時で対照群よりも前立腺癌患者のほうが多く、ほとんどの治療群で悪化した。
  • 前立腺全摘除術を受けた患者は、失禁の問題が高率であった(術後3年時で12%)。
  • 性機能不全の問題は対照群よりもすべての治療群で多く、特にADTを受けた患者に多かった。
  • 腸管機能不全はEBRTを受けた患者において最も多かった。

コメント:「前立腺癌患者とその治療を行う臨床医は治療がQOLに与える影響に配慮し、患者の年齢および無治療とした場合の前立腺癌の進行のリスクを比較考慮して、治療法に関するインフォームド・デシジョン(十分情報を得た上での選択)を行うべきである」と著者らは提言する。

参考文献:[1] Smith DP, King MT, Egger S, et al. Quality of life three years after diagnosis of localised prostate cancer: population based cohort study. British Medical Journal. 2010;339:b4817.


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翻訳担当者 舛田 理恵

監修 野長瀬祥兼(工学/医学生)

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