より特異的な前立腺癌腫瘍マーカーPCA3

キャンサーコンサルタンツ
2010年6月

前立腺癌の診断にとってPCA3と呼ばれる新しい尿検査の方が、従来用いられてきた前立腺特異抗原(PSA)を測る血液検査よりも偽陽性率が少ないことが分かった。この結果は、2010年American Urological Association(AUA=米国泌尿器科学会)の年次総会で報告されている。

1980年代後半より、前立腺癌早期発見のための一次スクリーニング検査にはPSA検査が使用されてきた。広く普及した検査であったが、一方で偽陽性や偽陰性の結果が出ることで今なお問題となっている。PSAは前立腺内の細胞から産生され、前立腺癌患者では血中PSA濃度は上昇する傾向にある。しかしながら全ての前立腺癌患者にPSA値上昇がみられるわけではなく、逆にPSA値が上昇している男性全てが前立腺癌であるとは限らない。PSA値は、前立腺癌以外の原因でも上昇することがあるのである。

PSAの上昇が確認された場合、確定診断のために前立腺生検を行うことが多い。多くの場合前立腺生検の結果は陰性である(癌の存在は確認されない)。このような状況を踏まえ、前立腺癌検査の研究は、不必要な生検の数を減らすことを目的としている。

PCA3検査は、生検が必要かどうかの判断に役立つ可能性がある。PCA3(prostate cancer gene 3)遺伝子は前立腺癌の男性で過剰に発現しているが、前立腺癌のない男性ではそれほど発現していない。PCA3検査は採取した尿からPCA3の発現を測定する検査法である。

今回の研究では、血清PSA値上昇が確認されるか、または直腸診で異常が確認された1994人の男性のPCA3を評価した[1]。全員に生検を実施し、42%に前立腺癌が確認された。

・PCA3平均値は前立腺癌のない男性よりも、前立腺癌のある男性の方が高かった。PCA3値はグリソンスコアと癌体積と相関していた。
・PCA3検査はPSA検査よりも特異度が高かった(つまり、癌のない男性を正しく判定した)が、感度は低かった(癌のある男性を正しく予測できなかった)。全体的な評価において、PCA3検査はPSA検査よりも前立腺癌の可能性と強く相関していた。

AUA年次会合で報告されたもう一つの研究では、研究者らはfcDNA(free circulating DNA)検査が前立腺癌を予測しうるかどうか評価した[2]。fcDNA値が高いと、前立腺癌可能性が高くなるという結果であった。

これらの検査は、生検を実施するかどうかを判断する指標として役立つことが今後期待される。

参考文献:
[1] Crawford ED, Trabulsi EJ, Qian J et al. PCA3: A urine-based genetic assay for detection of prostate cancer in men with elevated PSA. Presented at the 2010 annual meeting of the American Urological Association. May 29-June 3, 2010. San Francisco, CA. Abstract 2105.
[2] Singal R, Gordian E, Ramachandran K et al. Serum free circulating DNA as a biomarker for prostate cancer diagnosis. Presented at the 2010 annual meeting of the American Urological Association. May 29-June 3, 2010. San Francisco, CA. Abstract 1736.


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翻訳担当者 白神ルミ子

監修 榎本 裕 (泌尿器科/東京大学医学部付属病院)

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