限局性前立腺癌のアンドロゲン枯渇療法は心血管死亡に関連する

キャンサーコンサルタンツ
2007年10月

多施設共同試験の試験結果から、アンドロゲン枯渇療法(ADT)の実施は限局性前立腺癌の治療を受けた患者の心血管疾患による死亡リスクの増大に関連していることが明らかになった。試験の詳細はJournal of the National Cancer Institute誌2007年10月9日付けオンライン早版に掲載された。

前立腺癌の治療法の選択肢としては現在、待機療法、手術、化学療法、放射線療法およびアンドロゲン枯渇療法がある。しかしながら、このステージの癌は数種類の治療法を用いて長期生存率が高く保たれているため、長期生存に果すアンドロゲン枯渇療法独自の役割はまだ十分に解明されていない。加えて、アンドロゲン枯渇療法に伴う副作用についてもその利益と比較して検討されなければならない。このグループの患者の多くが長期生存を成し遂げ、その結果として治療の副作用に長い間対処しなくてはならない可能性があるため、副作用については特に考慮されなければならない。アンドロゲン枯渇療法の主な副作用には性欲減退、体重増加、骨粗しょう症、骨折および貧血がある。前立腺癌の患者が心血管疾患で死亡する頻度は高いが、心血管疾患の罹患率および死亡率に与えるアンドロゲン枯渇療法の影響についてはそれほど明らかでない。しかし、カリフォルニア大学ロサンゼルス校とデューク大学の研究者らが、アンドロゲン枯渇療法は心血管疾患の罹患率を増加させ、リスクの低い前立腺癌患者の生存に影響を及ぼしかねないことを報告している(*関連ニュース省略)。

アメリカの研究者らが最近臨床試験を実施して、アンドロゲン枯渇療法を受けた前立腺癌患者を含んだデータを評価した。この試験には手術を受けた初期の前立腺癌患者3,262人のデータおよび放射線療法または凍結療法を受けた1,630人の患者のデータが含まれた。計1,105人の患者がアンドロゲン枯渇療法も受けていた。追跡期間は約4年間であった。

●アンドロゲン枯渇療法実施期間の中央値は4ヶ月であった。

●アンドロゲン枯渇療法の実施は心血管死亡リスクの2倍以上の増大に関連した。

●手術を受けた65歳以上の患者では、心血管死亡がアンドロゲン枯渇療法を受けた患者の5.5%、アンドロゲン枯渇療法を受けなかった患者の2%に起きた。

●放射線療法を受けた65歳以上の患者の心血管死亡率も、アンドロゲン枯渇療法を受けなかった患者より枯渇療法を受けた患者の方が高いことがわかった。

試験を実施した研究者らは「限局性前立腺癌の根治的切除術を受けた患者にアンドロゲン枯渇療法を実施すると、心血管疾患による死亡リスクが増大するようだ」と結論している。初期前立腺癌では担当医と共に治療のあらゆる選択肢についてそれぞれのリスクと利益を考慮する必要があるだろう。

参考文献:

Tsai H, D’Amico A, Sadetsky N, et al. Androgen deprivation therapy for localized prostate cancer and the risk of cardiovascular mortality. Journal of the National Cancer Institute [early online publication]. October 9, 2007. DOI: 10.1093/jnci/djm168.

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翻訳担当者 中村

監修 平 栄(放射線腫瘍科)

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