ビタミンEサプリメントの摂取により前立腺癌のリスクが高まることがNIH出資の試験によって明らかに

NCIニュースノート

SELECT試験(Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial)から得たデータの最新の評価によれば、400国際単位(IU)のビタミンEを毎日摂取した男性は、プラセボを摂取した男性と比較して前立腺癌が多かった。ビタミンEのサプリメントのみを摂取した男性では7年を超える期間において1000人あたり76人の前立腺癌が見つかったが、プラセボでは65人であり、すなわち1000人あたり11人多かった。これはプラセボを服用した男性と比較して、前立腺癌が17%増加したことを表している。この差は統計学的に有意であり、偶然の結果ではないとみられる。この最新レビューの結果は2011年10月12日号のJournal of the American Medical Associationに掲載されている。

研究機関の国際ネットワークであるSWOGは、米国、プエルトリコ、カナダの400を超える医療施設でSELECTを実施した。SELECTはNCI(米国国立癌研究所)と国立衛生研究所に属する複数の研究所が出資している。

「これらの結果ならびに、ビタミンEを用いた複数の心血管系大規模試験の結果により、サプリメント摂取にベネフィットが示されず、一部では大変なリスクがあることが認められたため、一般男性がSELECT試験で用いたビタミンEを摂取する理由はありません」と、SELECT試験の共同委員長であり、クリーブランド・クリニックの医師であるEric Klein医師は述べた。「SELECTに参加した男性は継続してかかりつけ医か泌尿器科医の診察を受け、これらの結果の今後の判断に関心を向けるべきでしょう」。

SELECTは2001年に始まり、35000人を超える男性を登録した。以前の研究においてセレニウムあるいはビタミンEが前立腺癌発症リスクを抑制することが示唆されたため、本研究が実施されることになった。しかし、2008年秋に独立した効果安全性評価委員会によるレビューにより、参加者は試験で用いたサプリメントの服用をストップするよう指示された。なぜなら、この試験はサプリメントの服用により前立腺癌の25%減少が示されるようデザインされていたが、それはありえないことが明らかになったためである。2010年に本試験の医療機関での調査は完了し、参加者の過半数は、郵送されるアンケートによる健康状態の経過観察に同意した。この最新の知見を得たことから、研究者らは結果を継続して追跡するため、長期追跡試験への参加を検討するようすべての参加者に呼びかけている。

SELECTは以前に実施した、前立腺癌リスクが主要アウトカムではない複数の試験で得られた別の知見を立証するために実施された。フィンランドの男性喫煙者が肺癌予防のためビタミンE50IUを毎日服用した1998試験では、サプリメント服用者において前立腺癌が32%少なかった。皮膚癌既往歴のある男女が再発予防のためにセレニウムを服用した1996試験では、サプリメントを服用した男性のほうが服用しなかった男性よりも前立腺癌が52%少なかった。

こうした結果ならびに他の知見をもとに、SELECT試験で男性の参加を募った。彼らはサプリメントかプラセボを服用する、各グループそれぞれ8000例を超える4つのグループのうちの1つにランダムに割り付けられた。セレニウムとビタミンEを併用するグループ、セレニウムとビタミンEに似た形状のプラセボを服用するグループ、ビタミンEとセレニウムに似た形状のプラセボを服用するグループ、およびどちらもプラセボを服用するグループである。セレニウムのみ、あるいはビタミンEとセレニウムを併用した男性の場合は、プラセボを服用した男性と比較して前立腺癌を発症する可能性が高かったが、この上昇はわずかであり、偶然の可能性がある。

「SELECTにより、ビタミンEならびにセレニウムのサプリメントには前立腺癌の予防に関し有効性がないことがはっきりと示されたことに加え、健康を害する可能性さえ明らかになった」と試験の共著者でありNCI癌予防部門の部長代行であるLori Minasian医師は述べた。「それでもなお、この種の研究はサプリメントによる潜在的な利益や危険を理解するうえで非常に重要である」。

SELECTの研究者らは現在、被験者の試験参加時におけるビタミンE、セレニウムおよびその他の栄養素の血中濃度を測定して、登録時の微量栄養素の値によってサプリメントの効果が左右されるかを調査している。他の研究者らは、SNPsとしてしられるDNA変異である一塩基多型に着目し、単一あるいはそれ以上の遺伝子変異が癌リスクに影響するか、あるいはそれがビタミンEの服用中に男性の前立腺癌発症リスクを上昇させるかを調査している。

本試験で保存された血液や切った足指爪といった被験者の検体は、被験者の膨大な臨床情報と合わせた時、今後の試験にとって重要な資料となる。「SWOGでは、ビタミンEがなぜリスクを減少させずに逆に上昇させたかという、生物学上の問題に答えを出す助けとなるよう、SELECTで保存された検体の使用を求める全国の研究者らから要望を募っている。」とSWOGの会長であり試験の共著者であるLaurence Baker医師は述べた。「これらの試験結果によって、答えられる以上に多くの疑問が生じ、さらなる調査の必要が生じている」。

皮膚癌を除けば、前立腺癌は米国の男性において最も一般的な癌である。現在のアメリカ人男性における前立腺癌の生涯リスクは16%である。米国における2011年の前立腺癌の新規発症は推定で240,890例であり、この疾患による死亡は33,720例と推定される。

SELECTはNCIが資金提供し、国立補完代替医薬センターが追加資金を提供、さらにサブスタディに関してはNIHの国立心肺血液研究所、国立老化研究所、国立眼病研究所が資金提供して実施した。

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参考文献:EA Klein, IM Thompson, CM Tangen, JJ Crowley, MS Lucia, PJ Goodman, L Minasian, LG Ford, HL Parnes, JM Gaziano, DD Karp, MM Lieber, PJ Walther, L Klotz, JK Parsons, JL Chin, A Darke, SM Lippman, GE Goodman, FL Meyskens, and LH Baker. Vitamin E and the Risk of Prostate Cancer: Results of The Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT). JAMA. October 12, 2011. 306(14) 1549-1556.

SELECTに関する最新のQ&Aは [10/11/2011前まで請求に応じて閲覧可能]http://www.cancer.gov/newscenter/qa/2008/selectqaをご参照ください。

スペイン語版のリリースおよびQ&Aはこちらをご参照ください。

前立腺の図、顕微鏡でみたビタミンEの結晶構造、SELECT試験の被験者に提供された錠剤の写真を閲覧するにはこちらをご参照ください。

SWOG(formerly the Southwest Oncology Group)は、500を超える施設と4000人を超える研究者らのネットワークであり、癌の予防、診断、治療に関する実地医療を向上させるため、臨床試験をデザインかつ実施し、癌サバイバーの生活の質向上をはかっている。さらなる情報はこちらを参照のこと。

翻訳担当者 大倉綾子

監修 須藤智久 (臨床薬学修士)

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