腎細胞癌治療でNexavarが果たす役割まとめ

キャンサーコンサルタンツ
2006年12月

Cleveland ClinicのRonald Butowski医師は2006年11月にニューヨークで行われた第24回Chemotherapy Foundation Symposiumで、Nexavar (sorafenib)を難治性の腎淡明細胞癌に対して用いた治療の最新のデータを総括した。

ネクサバール(Nexavar)は経口マルチキナーゼ阻害剤で、進行性腎細胞癌の治療薬として2005年12月に米国食品医薬品局(FDA)に承認された。ネクサバールの承認はTARGET (Treatment Approaches in Renal Cancer Global Evaluation Trial)の試験結果に基づいたもので、第3相ランダム化試験を行い、進行性腎細胞癌の患者の管理に関してネクサバールとプラセボを比較した。試験にはこれまで何らかの全身療法を試みて成功しなかった900人を超える患者が参加した。予後不良の患者は除外され、全員が予後良好あるいは中等度であった。この試験では年齢制限は設けられなかった。ネクサバール群の患者は400 mgを1日2回投与された。この試験の主要エンドポイントは全生存期間である。

中間解析の結果、ネクサバールを投与された患者群で無増悪生存期間が2倍に延長という有意差が認められたことから、この試験は2005年4月に非盲検となった。非盲検になってからはプラセボ群からネクサバール群へのクロスオーバーが許された。これまでにプラセボ群452人中216人が、クロスオーバーしてネクサバールの投与を受けている。Butowski医師はこの試験から得られた最新の知見を表1にまとめて発表した。

表1:腎細胞癌に対するネクサバールvs.プラセボ

ネクサバール

プラセボ

N(患者数)

451

452

完全奏効

1例 (<1%)

0 例

部分奏効

10%

2%

安定

74%

53%

無増悪生存期間の中央値

5.5ヶ月

2.8ヶ月

死亡数

171

196

生存期間の中央値

19.3ヶ月

15.9ヶ月

クロスオーバー時の生存期間の中央値

15.9

14.7

Butowski医師のデータによると、応答、無増悪生存期間、または全生存期間から評価して、ネクサバールは、65歳以上の患者に対してもそれより若い患者と同じく有効であるという。 サイトカインの治療を受けた経験のない患者が合わせて161人いたが、その患者らも患者集団全体と同じ様に反応した。したがって、ネクサバールに対する応答はサイトカインの前治療によって妨げられることはない。

ネクサバール投与群はプラセボ群に比べ、生活の質のパラメータの向上が大きいとするデータも示された。ドイツで治療を受け脳転移について評価を受けた139人の小グループに関する予備的なデータも提示された。それによると、プラセボ群では脳転移が8症例あったのに対し、ネクサバール群では2症例と、ネクサバールが中枢神経系への転移を遅らせる可能性があることを示した。

現在、これまでに治療歴のない患者を対象に含む試験が2件行われている。ひとつの試験では部分奏効率は19%、病勢安定率は56%であった。別の試験では部分奏効率が22%、病勢安定率が68%と、ネクサバールが、腎細胞癌が進行した患者に比べると、新たに診断された患者でより活性を示す可能性を示唆している。

Butowski医師は、腎細胞癌に対し、ネクサバールと併用してAvastin® (bevacizumab)やインターフェロンa、temsirolimusを投与する試験が進行中であると語った。ネクサバールとインターフェロンa2bの併用投与の結果は2006年の米国臨床腫瘍学会で報告された(関連ニュース参照)この試験では奏効率が38% (部分奏効35% および完全奏効3%)で、また、このレジメンの忍容性は良好であった。

コメント

腎細胞癌にとってネクサバールは活性のより強い分子標的療法の一つであると考えられる。今後の試験では、ネクサバールのさまざまな薬剤との併用投与や、癌の早期の段階での治療についての評価が行われるであろう。

参考文献:

Butowski R. Sorafenib: a multifunctional tyrosine kinase inhibitor – Role in metastatic renal cell carcinoma? Presented at Chemotherapy Foundation Symposium XXIV. New York. November 2006.
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なかむら 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修
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原文


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