温熱化学療法はBCG療法が無効であった表在性膀胱癌患者の転帰を改善する可能性がある

キャンサーコンサルタンツ
2009年10月

イスラエルの研究者らは、カルメット・ゲラン棹菌(BCG)による治療後の表在性膀胱癌再発患者において、マイトマイシンCによる温熱化学療法の結果、1年無病生存(DFS)率が85%であったと報告した。本試験の詳細はJournal of Urology の2009年10月号に掲載されている[1]。

ステージ1の膀胱癌患者に対する標準的初期治療は、肉眼で確認できる癌を全て電気(電気メス)による経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR)またはレーザーによる熱破壊である。多くの患者は、BCGによるアジュバント療法、あるいはマイトマイシンCなどによる化学療法を受ける。BCG療法は、アジュバント療法の最も一般的な形であるが、表在性膀胱癌患者のほぼ半数は、最終的に浸潤性膀胱癌へと進展する。最近の試験では、BCGあるいはマイトマイシンCの週1回6週間投与での3年再発率は25%であることが示された。しかし、マイトマイシンCの月1回3年間投与では、3年再発率が10%に減少した。

BCG療法が無効で、筋層浸潤のない表在性膀胱癌を有する患者は、通常マイトマイシンCの膀胱内注入療法か他の化学療法を受ける。本試験では、筋層浸潤のない再発性乳頭状膀胱癌の患者111人が対象となった。全ての患者は過去にBCG療法を受けている。患者はマイトマイシンCの膀胱内注入療法を週1回6週間受け、その後4週間から6週間間隔で計6回の維持療法を受けた。Synergo®(Synergo社製)を用い、膀胱壁を摂氏42度に加熱し洗浄を行った[2]。1年推定DFS率は85%で、2年DFS率は56%であった。維持療法を受けた患者は2年後のDFS率が61%であったが、受けなかった患者では39%であった。筋層浸潤への進展率は3%で、文献から推定されうる進展率より低かった。

コメント:
著者らは、温熱化学療法によるアプローチは筋層浸潤への進展率が低く、従来のマイトマイシンCの膀胱内注入療法より優れている可能性があると示唆している。

参考文献:
[1] Nativ O, Witjes JA, Hendricksen K, et al. Combined thermo-chemotherapy for recurrent bladder cancer after Bacillus Calmette-Guerin. Journal of Urology. 2009;182:1313-1317.
[2] Synergo® SB-TS 101.1 Device. Food and Drug Administration Web site. Available at: http://www.fda.gov/ohrms/dockets/AC/08/briefing/2008-4367b1-09-MEL%20Proposed%20Patient%20Labeling.pdf. Accessed September 14, 2009.


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翻訳担当者 山本 容子

監修 平 栄(放射線腫瘍科)

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