がん関連神経傷害は慢性炎症と免疫療法抵抗性をもたらす
- がん細胞が神経鞘を破壊し、神経損傷と慢性炎症を引き起こすことが判明した。
- これらの神経傷害が免疫力の疲弊と免疫療法抵抗性を引き起こす。
- がんが誘発する神経傷害経路を標的とすることで、抵抗性を逆転させ、治療反応を改善することができる。
- 研究結果は、がん神経科学(がんと神経系の相互作用)の研究の重要性を浮き彫りにしている。
がん細胞は神経鞘を破壊することがあり、それに伴う神経損傷によって慢性的な炎症を引き起こし、免疫力が疲弊し、最終的には免疫療法薬に対する抵抗性につながることがテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究でわかった。
Nature誌に発表された本研究は、がんと神経系の相互作用を調べること(がん神経学)の重要性を強調するものである。この研究結果は、関与するシグナル伝達経路を標的とすることで、この炎症を食い止め、治療効果を改善できることを示唆している。
「これらの知見は、腫瘍微小環境内の免疫系と神経が相互作用する新たなメカニズムを明らかにするものであり、がん患者の免疫療法薬に対する抵抗性へのアプローチ方法を変える可能性のある効果的な標的が示されるでしょう」と、共著者の一人であるMoran Amit医学博士(頭頸部外科教授)は言う。「これは、腫瘍-神経-免疫ダイナミクスに関する私たちの理解が大きく前進したことを意味し、臨床診療に直接影響を及ぼし得る有意義な方法で、がんと神経科学の相互作用を研究することの重要性を浮き彫りにしています」。
腫瘍は、近接している神経や神経系線維の周囲の空間に浸潤(神経周囲浸潤)することがあり、さまざまながん種において予後不良や治療強化につながる。しかし、この浸潤が免疫系でどのような影響を及ぼし、どのように相互作用するかについてはほとんどわかっていない。
Amit医学博士、Neil Gross医師(頭頸部外科学教授)、Jing Wang博士(バイオインフォマティクス・計算生物学教授)が共同責任者を務める本研究では、扁平上皮がん、メラノーマ(悪性黒色腫)、胃がんの患者によくみられる免疫療法抵抗性の発現に関連して、神経周囲浸潤とがんに伴う神経損傷の役割が検討された。
ジェームズ・P・アリソン研究所の一部である免疫療法プラットフォームとの共同研究により、研究チームは先進的な遺伝子解析、バイオインフォマティクス、空間解析技術を用いて臨床試験サンプルを分析した。その結果、がん細胞が神経線維を覆う保護膜であるミエリン鞘を破壊し、傷ついた神経が炎症反応によって自己治癒と再生を促進することが明らかになった。
残念なことに、この炎症反応は慢性的なフィードバックループに陥ってしまい、腫瘍は成長を続け、神経を繰り返し損傷し、その結果、免疫系が動員されて疲弊し、免疫抑制的な腫瘍微小環境がつくられ、治療抵抗性が生じる。今回の研究では、がんが誘発する神経損傷経路をさまざまなポイントで標的とすることで、この抵抗性を食い止め、治療効果を改善できることが示された。
研究著者らが指摘する重要ポイントは、この神経細胞の健康状態低下が、一般的ながん誘発効果ではなく、神経周囲浸潤やがん誘発性神経傷害と直接関連していることであり、がん進行に寄与する可能性のあるがん・神経相互作用を研究することの重要性を強調している。
MDアンダーソンのがん神経科学プログラムの一環として、研究者たちは神経生物学、脳と脊椎の腫瘍、神経毒性、神経行動学的健康などの科学的テーマを検証し、神経系とがんがどのように相互作用し、それががんの経過を通じて患者にどのような影響を及ぼすかの理解を目指す。
この多施設共同研究は、MDアンダーソン、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、ミシガン大学、モフィットがんセンター、クイーンズ大学の国際共同研究である。本研究は、MDアンダーソンのジェームズ・P・アリソン研究所とがん神経科学プログラムから一部支援を受けた。共同研究著者の全リストおよび開示情報は論文に掲載されている。
- 監修 山﨑知子(頭頸部・甲状腺・歯科/埼玉医科大学国際医療センター 頭頸部 腫瘍科)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2025/08/20
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