メラノーマでがんワクチンNeoVaxが強力な免疫応答をもたらす
ダナファーバーの研究者らは、個別化がんワクチンNeoVaxの新たな製剤と投与方法を設計し、メラノーマ(悪性黒色腫)患者において強力なワクチン特異的免疫応答を観察した。
ダナファーバーがん研究所が開始したメラノーマ患者を対象とした第1相臨床試験の結果、NeoVax個別化がんワクチンであるNeoVaxMIの最新の製剤と投与方法は、安全で実施可能であり、プラットフォームの以前の試験と比較してワクチン特異的な免疫応答を改善することが示された。
この研究結果はCell誌に発表された。
「現在の個別化がんワクチンにおける免疫原性は、その有効性にとって不可欠な要素ですが、大幅に改善できると私たちは考えています」と、本研究の統括著者であるPatrick Ott医学博士(ダナファーバーがん研究所Melanoma Disease Center臨床部長)は述べている。「この研究は、製剤と投与方法の変更がワクチンの効果を向上させることを示す証拠を提供しています」。
Ott氏は、未治療の進行または高リスクのメラノーマ患者を対象とし、すべての患者にNeoVaxMIを接種し、その免疫応答を詳細に分析することを目的とした臨床試験を開始した。この試験では、ワクチンの安全性および実施可能性以外の正式な臨床転帰評価は計画されていなかった。
NeoVaxMIは、ダナファーバーでOtt氏とCatherine Wu医師(本研究の統括著者、幹細胞移植・細胞療法部門長)が開発したNeoVaxプラットフォームをベースとした、個別化されたネオアンチゲン(新たながん抗原)標的ワクチンである。NeoVaxには、個々の患者のがん細胞にのみ存在し、正常細胞には存在しないタンパク質断片である個別化ネオアンチゲンに加え、免疫刺激剤であるpoly-ICLCが含まれている。NeoVaxMIには、さらに免疫強化化合物であるMontadineが追加されている。
NeoVaxMIの投与方法も試験において変更され、2つの免疫療法薬が追加された。患者は、ワクチン接種シリーズの前後および接種中にニボルマブ(販売名:オプジーボ)の全身投与を受けた。ニボルマブの全身投与は免疫抑制を軽減し、切除後または進行期メラノーマ患者に対する標準治療である。また、ワクチン接種シリーズ中に接種部位にイピリムマブ局所投与も受けた。イピリムマブ(販売名:ヤーボイ)の皮下投与の追加は、ワクチンによって導入された抗原に反応するT細胞と呼ばれる免疫細胞の活性化を促進すると予測された。
9人の患者がワクチン接種を完了した。NeoVaxMIによって誘導されるT細胞応答の程度を評価するため、研究チームはワクチン接種後の患者の血液サンプルからT細胞を分離し、培養皿内でワクチン特異的なネオアンチゲンを認識し応答する能力を評価した。9人の患者全員でネオアンチゲンに対するT細胞応答が観察され、9人のうち6人でCD-8+ T細胞と呼ばれる特殊なT細胞による細胞傷害反応が確認された。
「これらの体外でのCD-8+ T細胞応答の観察結果はワクチンで期待されるものであり、現在の臨床試験において、がんワクチンにより誘導される免疫応答の重要な側面が確認されたことに興奮しています」とOtt氏は述べている。
研究者らは、ワクチンとイピリムマブ注射部位から採取した皮膚生検組織を最先端の単一細胞シーケンシング法を用いて解析した。これらのサンプルでは、ワクチン接種後にマクロファージと呼ばれる免疫細胞の増加が観察され、NeoVaxMIがワクチンに対する局所での免疫活性化の引き金となる環境を整えたことが示唆された。
「免疫細胞が免疫活性化カスケードを開始するきっかけとなる適切な環境が、注射部位において極めて重要です」とOtt氏は言う。
研究チームはまた、ワクチン接種後と標準治療のニボルマブ投与後で、T細胞に発現する受容体の種類が異なることを示した。ワクチン接種後に活性化されたワクチン特異的T細胞の種類の数は、ニボルマブ投与後に生成された数を上回り、ワクチン誘導による強力な免疫応答が示唆された。
研究チームは、4人の患者から採取した腫瘍サンプルに基づき、個々のT細胞を明確に解析する新たな技術を用いて、ワクチンによって誘導されたT細胞が腫瘍に浸潤することを確認した。
「これらの結果は、この新しい製剤と投与戦略がワクチン接種の効果を向上させることを示しており、非常に興味深いものです」とOtt氏は述べている。「臨床試験の環境下で免疫応答を測定するために使用した方法は、この分野において厳密で独自性のあるものです。このような研究は、個別化がんワクチンをさらに改善していく上で重要です」。
NeoVaxMIの忍容性は良好で、新たな安全性上の懸念は生じなかった。この研究の限界は症例数が少なく、3つの新規薬剤を同時に導入した点であり、観察された改善をワクチンへの特定の変更に帰属させることは困難である。
資金提供情報は、原文を参照のこと。
- 監修 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター )
- 記事担当者 青山真佐枝
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- 原文掲載日 2025/07/10
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