【米国癌学会(AACR)】MDアンダーソンから画期的発表12演題
アブストラクト:1186、3746、3763、3776、3824、6367、6384、6396、6424、6427、6436、6438
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が、2025年米国がん学会(AACR)年次総会において、12のミニシンポジウム演題で画期的な研究を発表する。研究結果はさまざまながん種に及び、免疫学の革新、実験的治療法、がん予防、標的療法、腫瘍微小環境、がんモデリングの進歩といったトピックを網羅する。
以下の研究に加え、今後発表されるプレスリリースでは、有望な臨床試験結果に関する注目すべき口頭発表やプレナリーセッションの演題が紹介される予定である。MDアンダーソンAACR年次総会の内容に関する詳細は、MDAnderson.org/AACRをご覧ください。
遠隔転移を有する胃がんに対する標的低分子阻害薬の可能性(アブストラクト:1186)
一部の胃がんは腹膜(腹腔の内壁を覆う膜)に転移し、予後不良と高い死亡率をもたらす。マイクロRNA、特にmiR-10bは、この転移プロセスにおいて重要な役割を果たしている。研究者らは、がんの進行を阻止するmiR-10b阻害剤の治療効果の可能性を検討した。これらのin vivo(生体内)の結果は、miR-10bを標的とすることで、転移を有する胃がん患者の予後を改善する有望な治療戦略となる可能性を示している。Maria-Ancuta Jurj博士は4月27日に研究結果を発表する。
化生がん(乳がん)に関する遺伝学的洞察を提供する研究(アブストラクト:3746)
研究者らは、治療選択肢が限られ予後不良な、まれな浸潤性乳がんのサブタイプである化生がん(乳がん)のゲノミックランドスケープ(ゲノムの配置や分布パターンの特性)を解析した。258人を対象としたこの解析では、患者の予後を改善する標的療法につながるゲノム変化や変異が明らかになった。Blessie Nelson氏(M.B.B.S.)は4月28日に研究結果を発表する。
ゲノム解析によりCAR-NK細胞療法を最適化するための標的を同定(アブストラクト:3763)
研究者らは、ナチュラルキラー(NK)細胞のCRISPR遺伝子スクリーニングを用いて、NK細胞機能の新たな制御因子を同定した。これらを標的とすることで、代謝フィットネス(適合性)、細胞傷害性、in vivo(生体内)抗腫瘍効果を増強し、キメラ抗原受容体(CAR)NK細胞療法を最適化することができる。Alexander Biederstadt医師は4月28日に研究結果を発表する。
血液ベースの予後マーカーが肺がんのリスク層別化を改善する可能性(アブストラクト:3776)
EGFR変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者の一部は、特定の併用療法により良好な転帰を示すため、これらの変異を同定することは治療を最適化する上で重要である。ベースライン時の血液サンプルにおけるEGFR変異の検出は、無増悪生存期間および全生存期間の短縮を含む臨床転帰の予測因子であり、疾患進行リスクの高い患者を特定できる可能性を強調した。Simon Heeke博士は4月28日に研究結果を発表する。
ゲノム不安定性が膵臓がんの悪性度を高める可能性(アブストラクト:3824)
膵がん患者の90%以上がKRAS変異を有するが、その多くはKRAS阻害薬に耐性を獲得する。研究者らは、KRAS阻害薬を投与した実験モデルにおいて、さまざまなKRAS変異の機能的役割を明らかにした。研究者らは、ゲノム不安定性、特に染色体の対立遺伝子の不均衡が、耐性および腫瘍の進行を促進している可能性があることを発見した。Enrico Gurreri博士は4月28日に研究結果を発表する。
前立腺がんに対するバイオマーカーに基づいた治療方法を特定(アブストラクト:6367)
前立腺がん患者の多くは、外科的または内科的去勢にもかかわらず病勢が進行する。研究者らは、特定の遺伝子CDH1の欠損が、前立腺がんの一部のタイプにおいてコレステロール産生とアンドロゲン合成の亢進を引き起こし、去勢抵抗性をもたらすことを明らかにした。この結果は、アンドロゲン阻害薬とコレステロール低下薬の併用が転帰改善につながる可能性を示唆している。Feiyu Chen博士は4月29日に研究結果を発表する。
KRAS変異肺がんの治療抵抗性を、CD24を標的とすることで克服できる可能性(アブストラクト:6384)
CD24は「私を食べないで」というシグナルを発するタンパク質で、早期肺がん細胞で増加していることから、研究者らはKRAS変異肺がんの実験モデルでその発現を評価することにした。その結果、CD24が早期肺がんの進行を促進し、KRAS阻害薬耐性に寄与することを発見した。CD24を標的としたKRAS阻害薬との併用は有望な治療戦略となる可能性がある。Zahraa Rahal医師は4月29日に研究結果を発表する。
新たな治療標的がCAR-NK細胞療法を改善する可能性(アブストラクト:6396)
キメラ抗原受容体(CAR)ナチュラルキラー(NK)細胞療法は有望な実験的細胞療法であるが、CAR-NK細胞の活性を制御するメカニズムは完全には解明されていない。研究者らは、CAR-NK細胞の制御チェックポイントとして転写因子CREMを同定した。CREMを阻害することで、CAR-NK細胞の機能を高め、患者の予後を改善できる可能性がある。Hind Rafei医師は4月29日に研究結果を発表する。
リンチ症候群の血液バイオマーカーを特定(アブストラクト:6424)
リンチ症候群(LS)は、特定の遺伝子の変異によって引き起こされる特定のがんに対する遺伝的素因である。これらの変異はネオアンチゲン(新抗原)を産生し、免疫反応を誘発し、特殊なT細胞の数を増加させる。研究者らは、リンチ症候群患者の血液中にこれらのT細胞の存在と機能を同定し、がんリスクと免疫活性を追跡するための非侵襲的血液検査の可能性を示唆した。これらの知見は、リンチ症候群患者のがんモニタリングと予防のためのバイオマーカーとして、これらのT細胞利用の可能性を強調するものである。Fahriye Duzagac博士は4月29日に研究結果を発表する。
リンチ症候群患者のがん阻止にワクチンが有望(アブストラクト:6427)
リンチ症候群(LS)患者は、マイクロサテライト不安定性(MSI)を示し免疫系によって認識される異常タンパク(ネオアンチゲン)を有する、がんを発症しやすい遺伝的素因を持つ。この第1/2相試験では、リンチ症候群患者の前がん状態およびがんを阻止するアプローチとして、ネオアンチゲンを標的としたワクチンNous-209を評価した。この治療法は安全で、評価可能な37人の患者全員がネオアンチゲンに特異的な免疫反応を示し、Nous-209がリンチ症候群患者におけるがんの阻止に有効である可能性を強調した。Jason Willis医学博士は4月29日に研究結果を発表する。
卵巣がんの代謝に関する知見を提供する研究(アブストラクト:6436)
高悪性度漿液性卵巣がん患者の多くは、化学療法に抵抗性の再発を起こす。研究者らは、がん関連線維芽細胞が自らグルタミンを作り出す、これまで知られていなかったメカニズムを発見した。実験モデルをグルタミン阻害薬またはグルタミン欠乏食で治療すると、腫瘍量が大幅に減少した。これは、卵巣がん腫瘍微小環境の代謝リプログラミングにおけるグルタミンの役割をさらに理解する必要があることを強調するものである。Sammy Ferri-Borgogno博士は4月29日に研究結果を発表する。
トリプルネガティブ乳がんの治療反応を予測する遺伝子パネルを開発(アブストラクト:6438)
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の主な治療法は化学療法であるが、多くの患者は完全奏効に至らない。研究者らは、腫瘍微小環境の特徴を明らかにし、潜在的なバイオマーカーを同定した。この解析により、TNBC腫瘍の生物学的特性に関するさらなる洞察が得られ、化学療法の治療反応を予測する13遺伝子モデルの開発につながった。Yun Yan氏は4月29日に研究結果を発表する。
- 監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
- 記事担当者 青山真佐枝
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- 原文掲載日 2025/04/22
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