dMMR早期がんへの術前PD-1阻害薬(ドスタルリマブ)により手術不要の可能性

ドスタルリマブ(販売名:Jemperli[ジェンペルリ])によるPD-1遮断は、局所進行のミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形がん患者において完全な腫瘍消失を誘導し、手術の必要性を解消したことが第2相試験の予備的結果により明らかになった。4月25~30日に開催された2025米国がん学会(AACR)年次総会で発表された。

試験結果は同時にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

免疫チェックポイント阻害薬は、いくつかのがん種において化学療法と併用する標準治療の術前療法の一部として、また転移および切除不能なミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形がんの治療薬として単剤または他の免疫チェックポイント阻害薬との併用で承認されている。この試験から得られた最初のエビデンスとして、以前に早期のdMMR直腸がんにおけるドスタルリマブの術前療法の有用性が証明された。

このバイオマーカーは結腸と直腸のがんで最も頻繁に認められるが、dMMR腫瘍は多くの固形がん種で見つかる、と筆頭著者であるAndrea Cercek医師(メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSK)、試験担当医師兼大腸がん部門長)は説明した。

「MSKの同僚であるMichael Foote医師と共同で、私たちは免疫療法がいかに効果的に広範囲の早期dMMR固形がんの腫瘍除去を誘導できるか、そして臨床的完全奏効を得られた患者が外科的切除を回避できるかどうかを見極めようとしました」とCercek医師は語った。

本試験では、ステージ2~3の切除可能なdMMRがん患者103人が対象となり、ドスタルリマブによる6カ月間の治療が行われた。第1群には直腸がん患者49人が含まれ、第2群には胃食道がん、肝胆道がん、泌尿生殖器がん、婦人科がんなど直腸がん以外のがん患者54人が含まれた。臨床的完全奏効が得られた患者は、切除術やその他の治療を受けないことも選択できた。

両コホートとも、主要評価項目であるドスタルリマブ投与後の臨床的完全奏効と、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)に関する探索的評価項目を共有した。ベースラインの腫瘍遺伝子変異量とマイクロサテライト不安定性スコアは両群間で同程度であり、患者の95%は免疫療法開始前に検出可能なctDNAを有していた。

研究者らは以前、直腸がん患者41人に臨床的完全奏効が得られたことを報告したが、今回発表された新たなデータでは、100%の完全奏効が49人の直腸がん患者に拡大された。さらに、研究チームは直腸がん以外の患者における最初のデータも明らかにし、これらの患者の65%(54人中35人)に完全奏効が得られた。両群で完全奏効を得た84人の患者のうち、82人が手術を回避した。

ctDNA(血中循環腫瘍DNA)に関しては、治療中のctDNAレベルが低いほど、治療終了後に腫瘍が完全に消失する可能性が高かった。また、Cercek医師は、腫瘍のダウンステージ(縮小化)が良好であったにもかかわらず、6カ月後に完全奏効に至らなかった患者もいたことを指摘し、さらなる治療が有益であった可能性を示唆した。

研究者らはまた、直腸がん集団における完全奏効期間についても最新情報を提供し、全体として92%の患者が2年後も無病状態を維持していることを明らかにした。この報告時点で、4人の患者の完全奏効が5年持続していた。

「これらの知見は、早期のミスマッチ修復機構欠損(dMMR)腫瘍患者にとって非常に重要です。なぜなら、免疫療法を十分な期間行えば、手術や放射線照射が不要になる可能性が高いからです」とCercek医師は述べた。「外科的切除は、特に胃、膵臓、直腸のような臓器では、複雑でリスクが高いので、このアプローチは臓器温存につながり、生存利益だけでなくより良い生活の質(QOL)を提供できるのです」。

さらに多くの患者を登録することに加えて、Cercek医師らは、前立腺腫瘍や胃食道腫瘍など、治療に対する反応が弱い患者における腫瘍微小環境の潜在的な役割についても研究を進めている。最終的には、このアプローチをdMMRがん以外にも拡大し、より多くの患者に利益をもたらすことができるような知見を見出したいと考えている。

「この研究は、効果的な治療が奏効をもたらし、臓器を温存し、生存率を劇的に改善する術前療法における治療アプローチと臨床試験の基礎を提供するものであると確信しています」と、上級著者であるLuis A. Diaz Jr.医師(FAACR)(スローン・ケタリング記念がんセンター固形腫瘍学部長)は結論づけた。

この研究の限界として、個々の腫瘍型に対する患者数が少ないこと、単一の学術施設の患者を評価していること、直腸がん以外のがんに対する効果持続性データが限られていることなどが挙げられる。

本研究の資金提供元、開示情報については、原文を参照のこと。

  • 監修 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2025/04/27

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