【AACR26】原発不明がんの起源特定にDNAメチル化機械学習モデルが役立つ可能性

【AACR26】原発不明がんの起源特定にDNAメチル化機械学習モデルが役立つ可能性

本アプローチはいずれは、様々ながんと診断された患者の個別化治療の決定指針となる可能性がある

CpG領域のDNAメチル化を解析する機械学習モデルが、原発不明がん(CUP)患者における様々ながんの原発部位を正確に予測したことが、4月17日から22日に開催された2026年米国がん学会(AACR)年次総会で発表された研究により示された。

原発不明がん(CUP)とは、原発部位が特定できない遠隔転移を有するがんのことである。近畿大学医学部ゲノム生物学教室講師、Marco A. De Velasco博士によると、原発不明がんは、がんの原発部位が不明なまま治療方針を決定しなければならないことや、特定のがん種を標的とした治療ではなく広範囲に作用する一般的な化学療法を受けることが多いため、特定のがん種をターゲットとした療法に比べ治療効果が不良である場合が多い。

「原発不明がん患者のうち、わずか15~20%が部位特異的療法(原発臓器に応じた治療)で治療できる特徴を示し、その治療はより良い結果を伴います」とDe Velasco氏は説明する。「しかし、80~85%の大多数の患者は、一般的な化学療法を受けており、効果が低い場合が多く、部位特異的療法を受けた患者は最長24カ月生存できるのに対し、標準治療を受けた患者は6~9カ月しか生存できません」。

これまで研究者たちは、分子プロファイリングを用いてがんの原発部位を特定することにより、治療方針の決定を改善できるかどうかを検討してきた。それらの方法は、がん種ごとに異なり、がんの転移後も持続する可能性のある、遺伝子活性やDNA化学修飾といった腫瘍生物学的パターンを解析するものである。De Velasco氏によると、これまでのいくつかの方法は有望な結果を示していたものの、臨床試験において明確な生存利益(全生存期間の延長)は示されていないという。

本研究において、De Velasco氏と共同研究責任者の坂井和子博士、主任研究員の西尾和人医学博士を含む研究者らは、シトシンとグアニンというDNA塩基で起こる化学修飾の一種であるCpG領域のDNAメチル化に焦点を当てた新しいアプローチを開発した。De Velasco氏は、CpGメチル化は体内の様々な組織にとって分子的な「指紋」のような役割を果たすと指摘した。研究者らは、腫瘍サンプル中のこれらのメチル化パターンを解析することで、21の異なるがん種を識別可能な計算モデルを構築した。

「大規模で複雑なデータセットに頼るのではなく、より小規模で実用的な、それでいて高い予測力を持つマーカー群を特定することを目指しました」とDe Velasco氏は述べた。「長期的な目標は、医師が原発部位の可能性のある組織を特定し、より効果的な治療方針を決定するのに役立つツールを作成することです」。

そのモデルは、The Cancer Genome Atlas(がんゲノムアトラス)プログラムおよびその他の公開データセットから取得された、21の異なるがん種を患う約7,500人の患者のメチル化データを用いて開発された。データはトレーニングコホートとテストコホートに分割された。

研究者らは機械学習を適用し、トレーニングコホートの腫瘍DNAにおけるCpG領域のメチル化部位を特定し、異なる腫瘍タイプに関連するメチル化プロファイルを構築した。

研究結果によると、このモデルはテストコホートにおいて約95%の症例でがんの種類を正しく識別し、研究者の所属施設の独立した検証コホート(17がん種、31症例)に適用した場合でも、約87%の精度という高い性能を維持した。

「今回の研究で最も重要な発見の一つは、ゲノム全体にわたり数十万箇所あるCpG領域の中から選ばれた約1,000領域というごく少数のDNAマーカーのサブセット(小集団)を用いて、様々な種類のがんの原発部位を正確に予測できたことです」とDe Velasco氏は述べた。「これは、複雑な分子データを簡略化しながらも、高い予測精度を維持できることを示しているため、重要な意味を持ちます」。

同氏はさらに、このモデルは原発不明がんの患者のために、医師が試行錯誤的な治療方法から脱却し、がんの原発巣の可能性の高い部位に合わせた治療法を選択するのに役立つ可能性があると付け加えた。

「私たちの研究結果は、DNAに基づくアプローチが、たとえ原発腫瘍が目に見えなくても、がんの原発巣の可能性が高い部位を特定するのに役立つ可能性を示唆しています。より少数の、より焦点を絞ったマーカーを用いることで、このアプローチは将来的にこうした検査をより実用的で利用しやすいものにするでしょう」とDe Velasco氏は述べている。

「全体として、私たちはこの研究を、分子情報を用いてがんをより深く理解するための幅広い取り組みの一環として捉えており、将来的には、より情報に基づいた個別化医療を支援することを目標としています。しかし、この研究はまだ探究の段階にあります。今後は、真の原発不明がん患者を対象とした前向き分析において、このアプローチがどの程度有効であるかを評価する必要があります」とDe Velasco氏は付け加えた。

この研究の主要な限界の一つは、モデルが真の原発不明がんではなく、原発部位が既知のがんを用いて開発された点である。つまり、このモデルが臨床現場でどの程度有効かを理解するには、真の原発不明がん患者で検証する必要がある。もう一つの限界は、特に進行期においては、すべての腫瘍が遺伝子検査に容易にアクセスできるとは限らないことである。本研究における重要な次のステップは、組織サンプルからのDNAに頼るのではなく、血液ベースの生検を用いて循環腫瘍DNAを解析することで、このモデルの改良と評価を行うことであるとDe Velasco氏は述べた。

本研究への資金提供は、日本学術振興会によって行われた。De Velasco氏は利益相反がないことを表明している。

  • 記事担当 山口みどり
  • 監修 石井一夫 (計算機統計学/公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科)
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  • 原文掲載日  2026/04/20

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