癌検診では偽陽性が多い

キャンサーコンサルタンツ
2009年5月/6月

前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌(PLCO)検診の臨床試験に参加している研究者らの報告によると、前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌の検診では偽陽性の結果が出るリスクが高く、検診を受ける回数が多くなるほど、そのリスクは累積的に高くなるという。

14回の検診を受けた時点で、偽陽性の結果が出る累積リスクは、男性で60.4%、女性で48.8%である。この研究結果はAnnals of Family Medicine誌2009年5月/6月号に掲載されている。[1]

癌検診は予防医療において重要な要素となっている。癌を早期に発見することが、なにより癌を治療しやすくするからだ。多くの事例で、検診によって癌による死亡率が低下することが示されている。たとえば米国では、パップスメア(子宮頸部の細胞診)で定期検診を行うと、子宮頸癌による死亡率が有意に減少した。大腸癌検診が死亡率を下げるというエビデンスもある。マンモグラフィーによる検診は、患者の3分の1が過剰診断されるというデータも見られるので、今なお議論の余地がある。前立腺癌の検診ではかなり意見が分かれているため、大きな医療機関でもまだ推奨していないところがある。しかし、一部のタイプの癌では、検診が死亡率を下げるかどうかがはっきりしていない。というのは、ゆっくり増殖する癌の場合、癌の症状が出るようになるまでに他の原因で死亡してしまうことがよくあり、過剰診断になってしまっている場合があるからだ。こうしたことから、癌検診の頻度や間隔についても議論されている。

PLCO癌検診の臨床試験はランダム化対照試験であり、前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌の検診が、それぞれの癌による死亡率に与える影響を評価するためにデザインされている。55歳から74歳の患者68,436人が、検診を受ける群と通常のケアを受ける群に無作為に割り付けられた。参加者は3年間の試験期間で最大14回の検診を受けた。女性は、経膣超音波、胸部X線、結腸を検査するためのS状結腸鏡、CA-125という卵巣癌マーカーの測定を行った。男性は、胸部X線、直腸診、S状結腸鏡、前立腺特異抗原(PSA)測定を行った。

4回の検診を受けた時点で、偽陽性の結果が出る累積リスクは男性で36.7%、女性で26.2%であった。14回の検査の後では、偽陽性の結果が出る累積リスクは男性で60.4%、女性で48.8%に跳ね上がった。さらに、検診の偽陽性結果に基づいて、本来必要ではない侵襲的な生検が行なわれる累積リスクは、男性で28.5%、女性で22.1%であった。

コメント:偽陽性率が高いからといって、すなわちすべての検診が「悪い」ということではない。しかし長期間一貫して行なわれる検診のリスクの一例を示している。重要なことは、検診のリスクとベネフィット両方を理解することであり、また予防医療について説明を受けた上での選択、すなわちインフォームド・チョイスが行われることである。

参考文献:
[1] Croswell JM, Kramer BS, Kreimer AR, et al. Cumulative incidence of false-positive results in repeated, multimodal cancer screening. Annals of Family Medicine. 2009; 7: 212-222.


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翻訳担当者 安田 詠美

監修 野長瀬 祥兼(工学/医学生)

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