局所前立腺癌に対する凍結外科療法と放射線療法後の生活の質は同等であった

キャンサーコンサルタンツ
2009年8月

カナダの研究者らは、凍結外科療法後の短期および長期の性機能不全を除き、局所前立腺癌に対する凍結外科療法または外部放射線療法(EBRT)後の生活の質の測定値が同等であったことを報告した。本試験の詳細は2009年8月18日付のCancer誌の早期電子版にて掲載されている。

凍結外科療法がはじめて前立腺癌治療に用いられたのは、1970年代初期であったが、潜在的効果が初めて明らかになったのは1993年に超音波ガイド下経皮的凍結外科療法の結果が発表されたときであった。器具や手技の変遷により、凍結外科療法の成績は腫瘍制御率の向上や合併症発生率の低下の面で改善された。超音波ガイドで冷凍プローブを経皮・経会陰的に挿入することにより、リアルタイムでの凍結モニタリングが可能になった。危険部位の温度をモニタリングし、生理食塩水を注入して直腸と前立腺の距離を空け、液体窒素ではなくアルゴンガスを使用した器具を使用することで、腫瘍制御率が改善し、合併症発生率が低下した。この手技により、小線源治療および三次元原体照射を行った場合と同様の結果が得られると報告された。

凍結外科療法の有効性には、合併症の発生率を上昇させずに患者の再治療が可能であること、放射線療法後の救済療法として良好な結果と合併症率が得られることなどがある。また、「神経温存」凍結外科療法が用いられることも可能であるかもしれない。

現行のランダム化試験の結果は、2007年米国泌尿器科学会総会で初めて発表された。凍結外科療法は、局所前立腺癌の治療法の第一選択として用いられる放射線療法と少なくとも同等である判断された。EBRT群の2年無病生存率は74.6%、凍結外科手術群では81%であった。PSA(前立腺特異抗原)再上昇はEBRT療法を受けた患者の26%に、凍結外科療法を受けた患者の20%に見られた。現行の報告は、本ランダム化試験の生活の質の評価である。

本試験では、1997年から2003年の期間に、局所前立腺癌患者244人を凍結外科療法群またはEBRT群にランダムに割り付けた。凍結外科療法群では、急性尿障害とのより高い関連性が示されたが、この症状は時間とともに消失した。ERBT群と比較した場合、凍結外科群では3カ月目に自己申告による性機能不全との関連性がみられた。この症状は3年目の検査時にも持続していた。3年目の時点で、凍結外科療法群の性機能の平均スコアは15ポイント低下しており、凍結外科療法群では、性機能は「中等度または重大である」と述べた男性患者が13%も多かった。研究者らは次のように結論づけた。「本ランダム化試験では、凍結外科療法を受けた患者により報告された性機能不全を除き、どちらの治療法も長期間の有効性は明らかではなかった。性機能持続の大きな可能性を求める男性患者は凍結外科療法よりもEBRTを選択するよう提言されるかもしれない。」

コメント:
性機能不全例を除いて、凍結外科療法は局所前立腺癌治療に対して放射線療法と同様の効果があると考えられる。白血病や結腸癌のように、長期におよぶ放射線療法による潜在的リスクがあることから、本試験は今後も長期的に観察されることは間違いない。

参考文献:
[1] Robinson JW, Donnely BJ, Siever JE, et al. A randomized trial of external beam radiotherapy versus cryoablation in patients with localized prostate cancer. Cancer [early online publication]. August 18, 2009.
[2] Donnelly BJ, Saliken JC, Brasher P, et al. Randomized controlled trial comparing external beam radiation and cryoablation in localized prostate cancer. Proceedings of the American Urological Association of 2007; Abstract #1141. http://www.abstracts2view.com/aua/authorindex.php.


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翻訳担当者 滝澤 美樹

監修 中村 光宏(医学放射線)

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