2009/09/08号◆特集記事「臨床試験結果が疑問を投げかける前立腺癌検診の価値」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/09/08号◆特集記事「臨床試験結果が疑問を投げかける前立腺癌検診の価値」

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2009/09/08号◆特集記事「臨床試験結果が疑問を投げかける前立腺癌検診の価値」

同号原文 

NCI Cancer Bulletin2009年09月08日号(Volume 6 / Number 17)

 

 

 

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

 

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特集記事

臨床試験結果が疑問を投げかける前立腺癌検診の価値

前立腺特異抗原(PSA)試験による前立腺癌の検診がこの30年間に広く行われるようになり、障害性がないにも関わらず前立腺癌と診断されて治療を受ける男性患者が大量に発生していることが、今回の研究で明らかになった。前立腺癌の診断数の急激な上昇は、特に若い男性で起きており、50~59才では3倍以上、50才以下では7倍となっている。この研究は8月31日、Journal of the National Cancer Institute 誌(JNCI)の電子版で発表された。

PSA検診は、よく言われる前立腺癌の著しい“過剰診断”につながるが、これは目新しいことではない。今年発表された2つの臨床試験の結果では同じ結論が指摘されている。しかし、今回新たに発表された研究では、本問題の範囲をより現状のままの背景で評価しており、PSA検診が導入されて30年間に、この検診方法がなかったときよりも約130万人も多くの男性が前立腺癌と診断されており、結果的に命が助かった男性は非常に少ないと結論づけている。

本研究の共著者であるダートマス医科大学のDr. H. Gilbert Welch氏によれば、今回得られた知見から、PSA検診に関連した明確な集団効果が示されており、これは臨床試験でみられたような単なる理論的な問題ではない。

この研究を実施するために、Welch氏と共著者のコネチカット大学医学部のDr. Peter C. Albertsen氏は、NCIのSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)プログラムおよび米国国勢調査から、前立腺癌の年齢別の発生率と1986~2005年に診断された患者が受けた初期治療に関するデータを入手した。

基準の年が選ばれた理由は、1986年がNew England Journal of Medicine誌にPSA検診に関する影響力のある研究結果が発表された前年だった からである。翌年、前立腺癌の発生率は10%増加した。”SEERプログラムで、前 立腺がんがこれ程増加したことはそれまでには無く、検診が広く行われはじめ たことが強く示唆されます。”と著者らは説明した。

130万人も増加したと推定される前立腺癌患者の中で、100万以上の男性が、手術、ホルモン治療、放射線治療といった明確な治療をうけた。しかし、 「治療の恩恵について最大限楽観的な仮定をしたとしても、この約100万人の男性の圧倒的多数は、早期診断から恩恵を受けたわけではない」と著者は述べている。

ボストンのベスイスラエル・ディーコネス医療センターのDr. Marc Garnick氏によると、この結果は、“過剰診断”という言葉がこの問題に対する適切な表現ではない可能性を示しているという。「PSA検診にもとづいて患者を診断することは100%妥当であると思われるが、問題は多くの男性が過剰な治療を受けていることにある」とGarnick氏は述べた。カルフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、泌尿器科部長であるDr. Peter Carroll氏もこの点には同意しており、「最初に診断されたときに患者は前立腺癌を肺癌や膵臓癌と同じようにみてしまい、より致命的な癌との区別をしていない」と述べた。さらに、「このような見方を患者と臨床医の頭から消し去り、前立腺癌はすぐに治療を受けなくても扱える疾患であることを理解させる必要がある」と述べている。

ベスイスラエル医療センターとUCSFでは、PSA検診を受け、年齢、生検標本による癌の程度、グリーソンスコア(腫瘍の潜在的侵襲性指標)、他の要因に基づいた本疾患の進行に関してリスクが低いと考えられる男性では、積極的な観察を選択する人が増加している。この積極的な観察では、症状を注意深く観察し、来院して定期的な生検を受けることで疾患をモニターする。

しかし、積極的な観察でさえ、定期的な生検を要することをはじめ、ある人が癌と診断されるという社会的インパクトに至るまで重大な意味合いがあり、PSA検診を初めて行う前に教育と対話が必要であると、Welch氏は述べている。

さらに、「PSA検診を受ける男性は、十分な情報をもって説明を受けた上で、検診の危険性を受け入れ、比較的小さくても検査の恩恵を受けることを希望し、検診の過程で発生し得る副作用を全て受け入れた患者であるべきである」と述べた。

同時に、前立腺癌の致死率が1993年以来、40%低下し、部分的にはPSA検診のおかげである可能性が高いことも述べておく必要がある。NCIが実施し、昨年発表されたモデル試験から、PSA検診がこの致死率の減少の約70%の原因であり、これは検診によって本疾患が発見される病期が早まったためであることが示唆された。そして、前立腺癌の検診に関する臨床試験で最近発表された2つのうちの1つはヨーロッパで実施されたが、PSA検診が前立腺癌の致死率に関してわずかに効果があることが示唆された。しかし同試験では前立腺癌による死亡を1人阻止するには、1,400人以上の男性が検診を受け、50人近くが治療を受ける必要があると推算している。

Welch氏とAlbertsen氏によるJNCIに発表された試験に関連した論説では、米国癌学会の主席医学専門家であるDr. Otis Brawley氏が、「この論文の結果および前立腺癌検診と予防に関する臨床試験から得られた最近の結果から、われわれが学会として行ってきたことと行いつつあることについてよく考える必要がある」と述べ、広く行き渡ったPSA検診に関して厳粛な見方を示している。

—Carmen Phillips

Journal of Clinical Oncology誌より8月31日付でJournal of Clinical Oncology 誌電子版に掲載された研究により、前立腺癌診断後に治療を延期することで前立腺癌の死亡リスクが上昇することはないとする先行研究結果が裏づけられた。本研究は、前立腺がんと診断された3000人以上の男性を対象として1986年~2007年に実施された。初期診断後に治療延期を選択した男性は10%に過ぎなかったが、7年にわたる経過観察後も約半数がまだ根治治療を受けていなかった。また、治療を延期した男性の前立腺癌による死亡率は、即時治療を選択した患者と比較してほぼ同様であった。

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関屋 昇 訳

榎本 裕(泌尿器科)監修

*枠囲記事:川瀬真紀 訳/原 文堅(乳腺腫瘍医/四国がんセンター)監修

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