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ASH2022:リンパ腫のzilovertamab上乗せ試験、DTX1遺伝子の役割、CAR-T後向き研究ほか

血液腫瘍の治療の進歩に焦点を当てた主要な発表

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、MDアンダーソンの専門家による基礎、トランスレーショナル、臨床のがん研究を紹介している。本特集では、2022年米国血液学会(ASH)年次総会におけるMDアンダーソンの研究者による、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、その他の血液腫瘍の患者の転帰を改善するための革新的標的治療、新しい併用療法そして新規標的に関する発表を紹介する。

以下の研究に加え、近日発表予定のプレスリリースでは、急性白血病患者の治療の進歩に関する画期的な臨床研究(抄録番号 61、213、709)および特定の遺伝子変化を原因とする急性白血病患者に対する新規メニン標的治療(抄録番号 63)が紹介される。MDアンダーソンが発表したASH年次総会の内容に関する完全な情報は、MDAnderson.org/ASHに掲載されている。

イブルチニブへの zilovertamab追加により、CLLおよびMCLの奏効が改善(抄録番号:232

ROR1のモノクローナル抗体であるzilovertamabは、イブルチニブなどの標的治療薬と相乗効果があることが前臨床試験で示されている。Hun Ju Lee医師が発表した第1/2相試験は、患者において臨床的相乗効果を示した初めての試験である。この試験では、33人の再発または難治性(R/R)のマントル細胞リンパ腫(MCL)患者と62人の未治療またはR/Rの慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、 zilovertamabとイブルチニブの併用療法が評価された。R/RのMCLでは、奏効率85%、完全奏効率40%、無増悪生存期間(PFS)中央値35.9カ月であった。また、CLL患者においても、いずれの治療群もPFSの中央値に達しなかったことから、本併用療法は強固な有効性を示した。これらの結果は、本併用療法の安全性と有望な有効性を示唆している。本試験は現在も継続中であり、R/Rの辺縁帯リンパ腫の患者を引き続き登録している。Lee医師は、12月10日に最新の知見を発表する。

BPDCN の大規模前向き研究で報告された長期転帰(抄録番号:540

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm、BPDCN)は、予後不良をもたらす希少かつ浸潤性の血液悪性腫瘍である。CD123を用いた治療法の開発以来、本疾患の治療において大きな進展があった。Naveen Pemmaraju医師は、世界最大規模のBPDCN患者群を対象とした前向き単一施設研究において、その特徴と転帰の解析を主導した。このデータは、初回完全奏効時に移植を受けた若年患者において、全生存期間が改善したことを示している。また、本試験では、脳脊髄液の陽性率が従来よりも高いことが判明し、ほぼ4分の1の患者が血液悪性腫瘍の既往または併発を有していることが明らかになった。この情報は、実施中のBPDCN研究の推進に有用である。Pemmaraju医師は、12月11日にこの研究結果を発表する。

DTX1 は DLBCL で阻害され、胚中心での B 細胞分化を制御する(抄録番号 708

Notchシグナル伝達経路を負に制御するDTX1遺伝子は、胚中心B(GCB)細胞やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)において高発現している。しかし、B細胞の発生やリンパ腫の発生におけるその役割はよく分かっていない。Atish Kizhakeyil博士とMichael Green博士率いる研究チームは、DLBCL腫瘍の59%にDTX1近傍の調節因子の非コード化変異があることを発見し、その後DTX1ノックアウトモデルを作製し、GCB細胞の発生におけるその役割を明らかにした。リンパ腫細胞でDTX1を欠損させるとNotchの発現が増加し、胚中心の極性やGCBの成熟を制御する遺伝子発現プログラムに変化が生じた。また、DLBCLにおけるDTX1変異は、胚中心内の明領域への極性を増加させ、GCBの分化経路を変化させ、抗原刺激後の播種を可能にすることにより、競争優位性を与えることが分かった。Kizhakeyil博士は、この研究成果を12月12日に発表する。

ide-cel CAR-T 細胞療法による予後不良と BCMA 標的治療歴の関連性(抄録番号:766

イデカブタジェン ビクルユーセル(Idecabtagene  vicleucel 、ide-cel)は、特定の再発/難治性の多発性骨髄腫患者に対して承認されたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法だが、以前の試験ではBCMA標的療法(BCMA-TT)を受けたことがある患者は除外されていた。Christopher Ferreri医師が主導する後ろ向き研究の一環として、BCMA-TTを受けた後にide-celの投与を受けた50人の患者の実臨床データが評価された。その結果、BCMA-TTは奏効率の低さと無増悪生存期間(PFS)の短さに関連していた。しかし、これらの患者におけるide-celの奏効率(ORR)は、トリプルクラス難治性骨髄腫に対する他の治療法より高かった。ide-celの前にBCMA-TTを受けた少数の患者コホートでは、ide-celに対するORRは100%で、PFS中央値は未達だった。前治療であるBCMA-TTに対するCAR-T注入のタイミングなど、予後不良に関連する他の要因を分析するためには、さらなる調査が必要である。Ferreri医師は、12月12日に結果を発表する。

ペムブロリズマブとロミデプシンの併用療法はT細胞リンパ腫に高い奏効率を示す(抄録番号:960

末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)は、いまだ新薬の恩恵を受けておらず、予後不良をもたらす希少かつ浸潤性のある多様なタイプのリンパ腫群である。Swaminathan Iyer医師が主導し、Owhofasa Agbedia医師が発表した第1/2相試験では、1回または複数回の治療を受けた後に病勢が進行したPTCL患者38人を対象に、免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)と化学療法剤ロミデプシン(販売名:イストダックス)の併用が評価された。再発 /難治性のPTCLの患者において、奏効率は47.3%であり、この併用療法は有望な無増悪生存期間および全生存期間を示した。この結果は、本併用療法のさらなる進展を支持するものである。Agbedia医師は、12月12日に生存期間の最新知見を発表する。

監訳:佐々木裕哉(血液内科/筑波大学)

翻訳担当者大澤朋子

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