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治療反応に合わせた超低線量放射線により、低悪性度眼窩内B細胞リンパ腫の90%で完全奏効

MDアンダーソンがんセンター第2相試験の結果:米国放射線腫瘍学会(ASTRO)2022発表

奏効に応じて治療を調整する超低線量放射線療法が、低悪性度眼窩内B細胞リンパ腫患者において完全奏効率90%を示した。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによるこの新しい治療法の研究結果は、2022年米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次総会で発表された。

MDアンダーソンがんセンター放射線腫瘍科准教授のChelsea C. Pinnix医学博士が主導した本研究は、低悪性度B細胞リンパ腫患者において奏効に応じて調整する超低線量放射線療法を検証した初の前向き研究である。この研究では、超低線量の放射線照射(4 グレイ[Gy]を2回に分けて照射)を受けた後に完全奏効が認められた患者は、より放射線量が高い標準治療を受けずに済んだ。この研究で報告された副作用は少なく、奏効に合わせた治療法によって、治療効果を抑制することなくQOL(生活の質)を改善できることを示している。

「この治療法でこれほど高い完全奏効率が得られたことは患者にとっても大変喜ばしい」と、Pinnix氏は述べる。「この治療法により、大多数の患者が余分な放射線照射を回避できた。現在の標準放射線量による治療で頻繁にみられる眼窩内の副作用を最小限にとどめることができるのである」。

低悪性度B細胞リンパ腫には、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、濾胞性リンパ腫、分類不能型B細胞リンパ腫が含まれる。従来の治療では、患者は24~30Gyの高線量の放射線を受けており、眼窩領域(眼球と眼関連臓器の周囲)に急性および長期にわたる重大な副作用が生じる可能性があった。この副作用に対する懸念から、眼窩内低悪性度B細胞リンパ腫の診断を受けたばかりの患者に対しては、ただちに放射線治療は行わず経過観察を選択する医師もいる。

この第2相試験で研究者らは、奏効に合わせた放射線療法によって、治療当初から24Gyを照射する標準治療と同等の腫瘍転帰を達成することを目標とした。最初に4Gyの放射線照射を2回に分けておこない、その後3カ月ごとに奏効を評価した。最初の超低線量で完全奏効を示さなかった患者にはその後20Gyを照射し、合計で標準線量24Gyとした。超低線量照射で完全奏効を示した患者は経過観察のみとした。

この試験には、ステージ1~4の低悪性度眼窩内B細胞リンパ腫を有する、評価可能な患者50人が参加した。年齢中央値は63歳で、62%が女性であった。ほとんどの患者(62%)で片方または両方の眼窩内にステージ1の腫瘍があった。64%がMALTリンパ腫、32%が濾胞性リンパ腫、12%が低悪性度B細胞性リンパ腫であった。

事前計画に基づくサブグループ解析の結果、ステージ1の初発MALTリンパ腫で、2年間の局所制御率は91%であった。そのうち95%は、2年後の評価で遠隔転移が認められなかった。

本試験における治療関連の副作用は限定的であり、3人(6%)に重症度1のドライアイがみられたが、重症度3以上の副作用は認められなかった。

「眼窩内リンパ腫に対する超低線量放射線療法は、有効であるだけでなく患者にとって利便性が高く、コストの低い治療になる可能性がある。また、高線量の放射線による眼球への副作用を考慮すると、眼球および眼周囲への超低線量の放射線照射は理にかなっている」と、共同研究者のBita Esmaeli医学博士(MDアンダーソンがんセンター形成外科学教授)は述べている。

さらに、研究者らは奏効に合わせた超低線量放射線治療を受けた別の55人の患者群で後ろ向き研究もおこなった。追跡期間中央値37.3カ月の研究で、98%の患者が完全奏効を示し、そのうち20Gyの追加照射を受けた患者は2人だけであった。

「これらの有望な結果から、MDアンダーソンがんセンターでは現在、奏効に合わせた超低線量放射線療法は、すべての病期の眼窩内MALTリンパ腫患者に対する標準治療になっている。また、この治療法は他の施設でも採用され、有望な初期結果を得ている」とPinnix氏は述べている。

本研究は、米国国立がん研究所の支援を受けている(P30 CA016672)。共同研究者の全リストとその開示情報はアブストラクトに記載している。

監訳: 松本 恒(放射線診断/仙台星陵クリニック)

翻訳担当者田代両平

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